編著…西谷大『見るだけで楽しめる! ニセモノ図鑑 贋造と模倣からみた文化史』
こんにちは。
『開運!なんでも鑑定団』のファンの方や、『あつまれどうぶつの森』でつねきちからニセモノの美術品を買ってしまって悔しい思いをしたことのある方におすすめの本をご紹介します。
表紙は何やらとても怪しいですが、中身は別に怖くないのでご安心ください。
ニセモノにまつわる様々なエピソードを通して芸術史を学べる、というユニークな作りの本です。
どこまでが模倣?
どこからがニセモノ?
本物って何?
パロディとの違いは?
本物であっても、復元・修復されたことで、元々の作者以外の人の手が加わったものは本物のまま?
非常にレベルが高くて、本物よりも出来の良いニセモノはニセモノと言える?
などなど、ああでもないこうでもないと読者を唸らせてくれます。
日本画、書画、古文書、茶碗といった様々な作品の写真も数多く載っているので、写真を見ているだけでも楽しいです。
また、堅苦しいウンチク本ではなく、読者を「何これ…」と面白がらせて惹きつける工夫が感じられる文章なので、飽きずに読めます。
わたしが特に興味を惹かれるのは「人魚のミイラ」。
人魚のミイラの写真に「オレ様はドコに所属するんだい?」というセリフが付けられているのが笑えます!
うーん?
本物の人魚はきっと実在していないだろうからこれはニセモノ…?
いや、「人魚のミイラとして創造された作品」だと考えれば本物…?
いや、わたしは正直言って、人魚は『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』に出てきた美女みたいな見た目であって欲しいです。
もしこのミイラが本物だとしたら「すみません、本物よりもニセモノの方が目の保養になると思うので、生命の泉に出てきたような人魚と会わせてもらえませんか?」と二次元の神がもしもいれば頼みたくなってしまうかもしれません。
そして二次元の神に「いやあれニセモノだから。君は本物よりもニセモノに価値を見出すのかい?」と断られるのかもしれません…。
ニセモノって、考えれば考えるほど興味深いですね。
この本を読むと、博物館や美術館へ行きたくなります。
また、この本を読んでいてわたしが気付いたのは「ニセモノ=悪」ではないということ。
勿論、ニセモノを「本物ですよ」と騙して売りつけるのは許されない行為なので、それは悪ですが…。
もし、「本物の作品が好きだけど高額過ぎて買えない。でも好きだから手元に置いて、いつでも眺めたい」という思いを持ち、複製品と分かった上で複製品として売られているものを買った人の持ち物はニセモノと言えるのか? と問われたら、
…うーん。
何だか頭がこんがらがってきましたよ。
少なくとも、「本物の作品が好きだけど高額過ぎて買えない。でも好きだから手元に置いて、いつでも眺めたい」という方の芸術を愛する気持ちは本物だと思います。
本来なら、美術館や博物館で本物を堪能するのが一番良いとは思いますが、そもそも日本には無くて海外まで行かないと見られない作品もあります
また、たとえば山種美術館のように、常設展をやっておらず、特別展にお目当ての作品が出展されるまで何年も待たざるを得ない場合もあります。
そういう方には複製品の存在がありがたいですよね。