文…シェフ・アールツ 絵…マリット・テルンクヴィスト 訳…長山さき『おねえちゃんにあった夜』
主人公が生まれるずっと前に亡くなったお姉ちゃんが、ある日突然会いに来た…という不思議な児童書。
※注意
以下の文は、結末まで明かすネタバレを含みます。
未読の方はご注意ください。
夜。
主人公とお姉ちゃんは自転車に乗って出かけます。
二人が乗っている自転車は、まるで映画『E.T.』の名シーンのように夜空へ浮かび上がります。
二人は、お姉ちゃんの棺がある墓地や、かつてお姉ちゃんがいた病院に行きます。
悲しい思い出のある場所なのに、悲壮感はありません。
その悲壮感の無さが、お姉ちゃんがもうこの世の人ではないという現実をかえって突きつけているような感じがします。
二人はこの奇跡のひとときを、ごく普通の姉弟として過ごします。
一緒に小さな舟に乗って。
一緒にお菓子を食べて。
一緒に家へ帰って。
一緒にベッドで眠って…。
…朝になると、もうお姉ちゃんはいませんでした。
というストーリーです。
主人公が生まれるずっと前に亡くなったとはいえ、姉は姉。
大切な家族のひとり。
もういないけど、いる。
そんな絆を感じさせる作品です。
…でも。
どうしてお姉ちゃんはお父さんとお母さんには会ってくれなかったのでしょう?
きっとお父さんやお母さんも、会いたくて会いたくてたまらなかったでしょうに…。
大人には見えないのでしょうか…?
…きっとこれから主人公はお父さんやお母さんと一緒にお姉ちゃんの思い出話が出来るようになるのでしょうね。
それは嬉しいことでもあり、悲しいことでもあります。
「自分の姉は死んでしまった」という痛みを味わうことになりますから。
思い出があるからこそ辛いことってありますよね…。
けれど、「姉と繋がっている」という感覚は、決して忘れることのない宝物として心に刻まれるのでしょう。
いつまでもいつまでも…。
〈こういう方におすすめ〉
神秘的な雰囲気の児童書を読みたい方。
会ったことのないきょうだいがいる方。
〈読書所要時間の目安〉
20分くらい。