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編著…DK社 翻訳…中森拓也『グレート・ダイヤリーズ 世界の偉大な日記図鑑』

 紀元前2562年頃のエジプトの役人の日記を皮切りに、有名・無名を問わない古今東西の人々の日記を紹介している大型本。

 「日記」「手紙」「ノート」「手帳」「研究記録」、これらのうちどの呼び方がピッタリなのか分からないものも混在していますが、このレビューでは「日記」という呼称で統一したいと思います。

 日記そのもののカラー写真は勿論、それにまつわる社会的背景や関連する絵画も紹介されている贅沢な一冊です。

 目の保養になる上、歴史の勉強にもなります。

 作家の日記も数多く掲載されているので、これから作家を志す人にとって、先輩作家たちの思考プロセスを紐解いていくとご自身の創作のヒントにもなるのではないでしょうか?

 文章だけではなく、直筆の雰囲気からも、書き手の人となりが伝わってきます。

 わたしは特にレオナルド・ダ・ヴィンチの日記に驚嘆しました!

 文字も絵も非常に精緻。

 ありとあらゆる分野に関するアイディアが細かく書き込まれています。

 「幾何学、数学、地質学、飛行術、音楽、軍事工学などなど多様な領域の主題に関してメモや図表を残している。彼はまた水、天文学、解剖学の研究にも大きな成果を残している。彼の仕事のあるものは、都市計画や要塞設計、石弓や噴水の設計などだが、彼の富裕なパトロンにとって大いに有用であっただろう。ヘリコプターや羽ばたき飛行機、パラシュートなどの仕組みも彼が発案した。時代をあまりに先取りしすぎていて、400年後まで実現困難だった発想もある」
(P28から引用)

 というのですから驚き…。

 もはや「天才」というありきたりな言葉では収まらない人物ですよね。

 溢れ出る才能に甘んじることなく努力し続け、多方面に関心を持ち研究し続ける人の凄さを見せつけられます。

 この本で紹介されている日記のほとんどが学術的な意味のあるものばかり。

 「この日記の本来の持ち主は、自分の書いたものが遥か先の未来まで残ると予想していただろうか?」と想像しながら読むと楽しいものもありますが…。

 災害や戦争といった悲惨な出来事の証言記録としても読むことが出来るものも多いです。

 不安。

 嘆き。

 憤り。

 怒り。

 恐怖。

 そういう気持ちを日記に書き留めずにはいられなかった人の心中を思うと、読んでいて苦しくなります。

 中でも、アンネ・フランクの日記は何度読んでも辛いです。

 可愛らしい日記帳。

 そのページの初めの方には、子どもらしい素直な言葉たちが生き生きと綴られていたのに、次第にその内容が変化。

 アンネの日記を読むと、もっと長く生きて幸せになりたかっただろうに…と胸が痛くなります。

 今この世界のあちこちで生きている子どもたちの中にも、ストレスに晒されながらひたむきに生きている子どもたちが沢山います。

 それは、そんな世の中にした大人たちの責任。

 子どもは悪くない。

 今の大人たちは子どもたちのために何が出来るのか? とアンネの日記から問いを投げかけられているような気がします。

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