著…みとまかつとし『港のネコ』
港で生きる猫たちの2年半を撮ったモノクロ写真集。
※注意
以下の文は、結末までは明かすネタバレを含みます。
未読の方はご注意ください。
この本の中心となるのは、一匹の白ネコ。
白ネコは子猫を育てていました。
子猫と寄り添って歩いたり、一緒に魚を食べたり、頭を舐めてやったりします。
子猫がオスだったので、白ネコはやがて子猫を突き放すようになります。
オスの子猫が港から出ていく頃には、白ネコはまた別の子猫を妊娠しました。
港には人が捨てていったゴミが落ちています。
港には「ゴミをすてるな」と書かれているのに。
著者は「ゴミをすてるな」を背景にして白ネコを撮っています。
そして、白ネコの子猫たちが大きくなっていくところを撮り続けます。
白ネコがお乳をやったり、子猫と鼻をくっつけ合ったり、捨てられているゴミを見つけるところを。
しばらくするとオスの子猫と白ネコが距離をとって歩くようになります。
メスの子猫は白ネコと同じ歩調で歩いています。
時々、餌をくれる人間もいました。
ネコ缶を持ってやってくる若者。
小魚をくれる釣り人。
きっとこうした栄養を糧にしたのでしょう、白ネコはまた子猫を産みました。
が、子猫は一匹を残していなくなってしまいました。
白ネコはその残った一匹を育てましたが、白ネコも子猫もだんだん元気をなくしていきました。
白ネコは耳がひどく化膿し始めました。
港には相変わらず、ビールの缶やビニールなどのゴミが落ちています。
白ネコの耳はかさぶたのようになり、耳の先端は取れてしまいました。
目も、開けるのが辛い状態になってしまいました。
白ネコはいなくなりました。
白ネコの産んだメスの子猫は、大きくなって自分の子猫を産みました。
その猫は、…きっと子猫に餌をやろうとして無理をしたのでしょう。
海岸に打ち上げられていました。
子猫たちは鳴いていました。
…という本です。
全てを読み終えてから、再びこの本を開くと、著者のこの一文に涙がじわじわと出てきます。
〈こういう方におすすめ〉
命のはかなさ、そして、母が子に向ける愛情について想いを馳せたい方。
〈読書所要時間の目安〉
30分くらい。