著…スーザン・コリンズ 訳…河井直子『ハンガー・ゲーム 1 (上)』
「刈入れ」。
そう聞くと、実った作物を収穫出来るようで、楽しい気分になりますよね。
けれど、この小説の世界における「刈入れ」は別…。
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※注意
以下の文は、結末に関するネタバレを含みます。
「収穫」されるのは人間の子ども。
毎年、第1〜第12地区から12〜18歳の少年1人と少女1人ずつが無作為或いは志願によって、殺し合いの「ハンガー・ゲーム」に選抜されるのです。
誰かが身代わりにならない限り、棄権は不可能。
原則として、同じ地区の2人が生き残ることも不可能。
子どもたちは数週間に渡り、他の子どもたちとだけでなく、飢え・渇き・暑さ・寒さとも戦います。
最後の1人になるまで…。
では、何のためにそんな残酷なゲームをやるのでしょうか?
それは、名目上は「かつて首都キャピトルに反乱を起こした12の地区への罰」ということになっています。
12の地区の人々に、子どもたちの命を奪われても文句を言うことも許されない無力さを思い知らせることによって、反抗の芽が出る前に摘んでしまおうというのです。
なんて非道な…。
また、ハンガー・ゲームは、これもまた胸糞悪いのですが…、大衆の娯楽も兼ねています。
子どもたちが殺し合い、或いは餓死などで長く苦しみ抜いて死んでいく様子は、リアルタイムでテレビ放映されます。
それを観て、人々は賭けを楽しむのです。
人間を馬に見立てた競馬のように…。
…そんなに賭けがしたいなら、大人たちが自分たちで殺し合えば良いのに、罪の無い子たちにやらせるのが卑劣!
しかも、ハンガー・ゲームは富裕層のためのものという要素が強いので、当然、裕福な地区よりも、貧乏な地区の子どもたちの方が不利。
貧乏な地区では、年齢も性別も関係なく皆がお腹を空かせており、子どもたちは栄養状態が悪いため体格に恵まれず、その日生き延びるのにも精一杯という有様なので、ハンガー・ゲームで勝ち残る確率は限りなく低いです。
逆に、裕福な地区では、子どもたちは幼い頃から勝つためにずっと人を殺す訓練を受けていて武器の扱いにも長けており、体格にも恵まれ、名誉を得るため自ら志願して「刈入れ」されることもあります。
さて、こうした様々な不平等の蔓延るこの小説の主人公は、貧しい第12地区の16歳の少女カットニス。
大好きな妹プリムが「刈入れ」に選ばれてしまったため、カットニスは妹の身代わりに「ハンガー・ゲーム」に志願しました。
第12地区の少年の枠で選ばれたのは、かつてカットニスが餓死寸前でゴミ箱を漁っていた頃にパンを分け与えてくれた少年ピータ。
カットニスはこのピータとも殺し合わなくてはなりません。
この小説の『上』では、この世界の理不尽さやハンガー・ゲームの恐ろしさなどの丁寧な説明のために多くのページが割かれているため、ハンガー・ゲーム自体が開始されるのは『上』が終わりかけた時。
…ゲーム開始早々、沢山の少年少女たちが亡くなりました。
カットニスは冷静にその場その時の状況を判断・行動して生き残っていくけれど、この先が心配です。
ただでさえ酷いハンガー・ゲームですが、殺戮の頻度が少なくなってくると、なんとゲーム運営がゲームそのものに直接介入して火の玉攻撃などをするのも衝撃的です!
運営がゲームのプレイヤーを攻撃するゲームなんて聞いたことも無い…!
〈こういう方におすすめ〉
デスゲーム系の小説が好きな方。
〈読書所要時間の目安〉
2時間くらい。