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著…金澤翔子 文…金澤泰子『心は天につながっている』

 一字ずつの書がとても雄弁。

 心の脈動が伝わってくる感じがします。

 この本を読んでいると、「わたしはこの世界の美しさを少しは知っている気でいたけど、本当はまだ何も知らないのかもしれない…」と思えてきます。

 知的障がいを持つ書家とその母の本です。

 著者たちは、

 ●空に浮かぶ雲が、心の赴くまま自在に姿を変える龍に見える

 ●星が、自分に手を振り返してくれる亡き父親に見える

 ●遠く離れた人と、月を介して交信できる

 といった豊かな感性を持っています。

 心の底から羨ましい!

 わたしにとって雲は雲であり星は星に過ぎず、いつも通信手段としてスマホを握りしめていますし、それを当たり前だと思い込んできましたが…。

 著者たちの場合はそうではないのですね。

 わたしも空を見上げた時に、「今日は龍の機嫌が良さそうだなあ」と眺めたり、星に手を振ってみたり、月に想いを託すといった心を身につけたいです。

 そもそもわたしは最近下を向いてばかりだった…ということにも、わたしはこの本に気づかせてもらいました。

 わたしはなんて勿体無い人生の過ごし方をしてきたのでしょうか。

 命ある限り、沢山の美しいものを見聞きしたり触れていきたいです。

 また、

 「この世で最も美しいと伝えられる王羲之の『蘭亭序』は約千七百年も前の、三月三日に書かれました。その書はあまりに優れていたので、多くの書家が臨書(模写)をしました。しかし、唐の太宗の『蘭亭序』への執着はすさまじく、誰にも渡したくなくて、お墓まで持っていってしまい、遂に幻の書になってしまいました。現存するものは、すべて臨書されたものです。これを上回る美しい書は未だ世に出ていません」

(『心は天につながっている』 P29から引用)

 という記述にも心惹かれます。

 美への憧れは、大昔も今も変わらないのですね。

 きっと『蘭亭序』の真筆も素晴らしいのでしょうが、わたしは『蘭亭序』に近づこうと切磋琢磨する人の心もまた美しいと思います。

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