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『今川氏親と伊勢宗瑞』を読んだ話。

『今川氏親と伊勢宗瑞』を読んだ話をします。

あらためて言いますと、今川氏親はあの桶狭間で負けた今川義元のお父さんで、伊勢宗瑞はいわゆる北条早雲ですね。
私は不勉強ながら、ゆうきまさみさんの『新九郎、奔る!』を読むまで、北条早雲は北条早雲だと思ってたし、この本を読むまで竜王(龍王)の子が義元だとは思ってもみませんでした。てか、近っ! 桶狭間ってそんな年代間隔でしたっけ?

この2人が甥叔父の関係だったゆえに、戦国大名の先駆け的存在となっていった……ということですが。
今川氏親の父・義忠が、若くして戦死しなければ、伊勢宗瑞が氏親の後見役として駿河に出張ってくることもなかったし、甥の竜王のために力づくで領地を取り戻す必要もなかったので、義忠は無念だったかもしれません。

この本は人物伝なので、氏親と宗瑞が連携して駿河、遠江、伊豆、相模と勢力拡大していく、彼らの人生がまとめられています。
大河ドラマを見る感覚で読めるというやつです。

個人的には、ゆうきまさみさんの漫画『新九郎、奔る!』の参考書として読んでいたんですが、「あ、これ、新九郎ゼミでやったところだ!」がままあり、各々がゆうきまさみさんの画風で脳内再生され、非常に楽しかったです。(オタクの楽しみ方~)
まあ、地味に自らネタバレ踏みに行ってる感は否めず、これは漫画が完結した後に読むべきだったかなあ……と思わないでもなかったんですが、鉄は熱いうちに打て。今、興味があるなら、今読むべし。
読んでいると、『新九郎』が今の研究を参考にされてることも見えてきて、楽しさの相乗効果やん、なのでした。

『今川氏親と伊勢宗瑞』を読んでいると、歴史上の人物だって普通の人間だと、その意識を忘れないで読むことの重要性を、すごく感じました。
戦国大名だって、生まれながらに何かを持って出てきた選ばれし人ではなく、本人がその時その時の最善を選択・行動しつつ、たまたま運にも恵まれてのし上がれた。そういう部分もあるな、と。

例えば今川氏親。
通常15歳くらいで元服するのに、二十歳過ぎても元服してなかったりとか。
初陣も遅くて、元服した二十三歳ごろとか。
40代半ばにして鬱になり、眼も患ったとか。

内気で頼りなげな少年だったんですかね。
そんな若者が、それでも部下に支えながら大名として領地を拡大していき、また駿府を文化の街にした。
しかし長年の無理がたたって、更年期に体調を崩し、失意の晩年を過ごした。そんな等身大の人生が見えて来ます。

例えば伊勢宗瑞。
甥の氏親を支えることに人生をかけ、でもその甥を御飾り人形にして権力を握ることはしなかった。
今川家の領地を確保、拡大したあと、自らの領地は別に獲得していき、今川家との共存をはかった。

ちょっとくそ真面目というか、格好つけというか。
でも、今川家当主の叔父(しかも母方)という血縁以外、何も持っていなかった宗瑞ですから、その心臓部とも言える氏親を蔑ろにしたら、駿河や伊豆の人たちは誰も宗瑞を信用しない……という危惧はあったでしょうね。
それが読めたから、宗瑞は氏親の後見人に徹し、結果的に小田原北条氏の基礎を作れたんでしようね。

人物伝って、歴史というより文学な感じが、やっぱりします。
大河ドラマみたいだし。
だから逆に、歴史上の人物をひとりの人として考えていくことで、歴史のその時を身近に感じることもできますね。

反面、取り上げられてる人物を全肯定し始めると、何をやってもやらなくても「仕方がなかった」なるので、それは危険。

宗瑞は、室町幕府の権力が衰えつつあることに気づいていたのに、自らが足利尊氏になろうとはしなかったし(太平記の蒐集をしてたはずなのに)、現状のシステムの中でほどほどに生きていける環境を作ることに重点を置いた、とも読めます。
だから、小田原北条氏は100年もったし、100年しかもたなかった。
あくまで「伊豆・小田原」の権力者だった。

日本は離島国家なので、権力者も国家意識が希薄というか、外国勢力を日常的に意識する必要がなかったから、自分たちの土俵の上で、自分たちのルールが永遠に不変であるという前提で、室町時代は権力闘争してますね。蒙古襲来なんてすっかり忘れてる。
だからまあ、外国勢力の力を見せつけられると、ゼロ百思考の行動をとってきたのが日本の歴史。

氏親も宗瑞も、日本の本州が世界のすべてだったので、その世界の中で対応する人間になっていったのはどうしようもないんですけど。
しかし当時の中国・明は、日本の存在を意識していたようなので、歯がゆい。
まあ、地方の一軍事領主にあれこれ望むのは、無茶というものですね。

『今川氏親と伊勢宗瑞』と合わせて『新九郎、奔る!』を読むと、2倍楽しめます。
なんだかんだ言いつつ、伊勢宗瑞は現実的で理性的な人間なのかも……と、評価点が高いです、今現在。
休日のお供に、伊勢宗瑞関連本はいかがでしょうか。(我ながら、無茶苦茶なこと書いてる自覚はあります)

ここまでお付き合いいただきありがとうございました。


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ほんのよこみち
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