お金が人の縁を切る?贈与経済を考える平川克美『21世紀の楕円幻想論』(ミシマ社)はやっぱり名著だった
私たちは「無縁社会」を作ってきた。隣に住んでいる人の顔を知らない。でも、そっちほうがよっぽどいい。人間関係にわずらわされない自由な暮らし。
でも……とふと思う。ずっと消費者でいつづけるの、つらいかも。都市生活なら、お金があればなんだって買える。でも、お金がなかったら、私は何もできない。都会の真ん中で立ち尽くす。ただの「消費者」は、顔のないアノニマスな存在だ。社会は便利になったけど、それと引き換えに「私」は交換可能な人間になってしまった――。
資本主義がすみずみまで行き渡ったこの世界で、私たちはどんなふうに「お金」と付き合っていったらいいのでしょう。お金を使うと、無縁社会が出来上がる。かといって、いまさらお金を使わない前時代的な社会に戻るのも無理。無縁社会はさみしいし、有縁社会はわずらわしい。
『21世紀の楕円幻想論』で、平川克美さんが提唱する「楕円」な社会とは。交換経済と贈与経済のバランスを探ります。
▼今回登場した本
『21世紀の楕円幻想論─その日暮らしの哲学 』
平川克美(著)ミシマ社 2018
『チョンキンマンションのボスは知っているアングラ経済の人類学』
小川さやか (著)春秋社 2019
『エンデの遺言―根源からお金を問うこと』
河邑厚徳 (著), グループ現代 (著)講談社 2011
+松岡正剛千夜千冊1378夜『エンデの遺言』
『ぼくはお金を使わずに生きることにした』
マーク・ボイル(著) 吉田奈緒子(訳) 紀伊國屋書店
『その日暮らし」の人類学もう一つの資本主義経済』
小川さやか (著)光文社 2016
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