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お金が人の縁を切る?贈与経済を考える平川克美『21世紀の楕円幻想論』(ミシマ社)はやっぱり名著だった

古今東西の名著を紹介する、選書サービスほんのれん。
vol.15は「お金って◯◯だ 貨幣は何の代わりなの?」をテーマに、
5冊のお金本をご紹介しています。
今回取り上げるのは『21世紀の楕円幻想論』(平川克美著、ミシマ社)です。

私たちは「無縁社会」を作ってきた。隣に住んでいる人の顔を知らない。でも、そっちほうがよっぽどいい。人間関係にわずらわされない自由な暮らし。

でも……とふと思う。ずっと消費者でいつづけるの、つらいかも。都市生活なら、お金があればなんだって買える。でも、お金がなかったら、私は何もできない。都会の真ん中で立ち尽くす。ただの「消費者」は、顔のないアノニマスな存在だ。社会は便利になったけど、それと引き換えに「私」は交換可能な人間になってしまった――。

資本主義がすみずみまで行き渡ったこの世界で、私たちはどんなふうに「お金」と付き合っていったらいいのでしょう。お金を使うと、無縁社会が出来上がる。かといって、いまさらお金を使わない前時代的な社会に戻るのも無理。無縁社会はさみしいし、有縁社会はわずらわしい。

『21世紀の楕円幻想論』で、平川克美さんが提唱する「楕円」な社会とは。交換経済と贈与経済のバランスを探ります。

▼エピソード
・ミシマ社だもの。前書きからして、もう最高
・全財産を失った著者のもとに「◯◯論」を書けと迫る三島邦弘さん
・「消費者はアノニマスな存在だ」
・学生時代、大阪の商店街でパンをもらって暮らした体験
・レジ前の小学生に、おばさんが敬語っておかしくない?
・人間関係には、負債はあったほうがいい?
・サラリーマンを辞めて貯金が減っていくときの恐怖
・イギリスで1年間お金を使わず、木の実を摘んで暮らした男の話
・「お金」が登場して、「贈与」から「交換」に変わった
・貨幣が生まれて、人間のモラルが変わった!
・「いちご大福12個もらったら、配るしかないやん」
・腐るものは流通する。エイジング・マネーの驚異の効果
・「子ども服」も循環する
・貨幣とは、非同期交換を可能にするツール
・「楕円幻想」が意味するもの
・江戸の長屋は楕円社会?
・お金を借りて「私のことが好きなんだ」と思うタンザニア商人

▼今回登場した本
21世紀の楕円幻想論─その日暮らしの哲学
  平川克美(著)ミシマ社 2018
チョンキンマンションのボスは知っているアングラ経済の人類学』
  小川さやか (著)春秋社 2019
エンデの遺言―根源からお金を問うこと』
  河邑厚徳 (著), グループ現代 (著)講談社 2011
 +松岡正剛千夜千冊1378夜『エンデの遺言』
ぼくはお金を使わずに生きることにした
マーク・ボイル(著) 吉田奈緒子(訳) 紀伊國屋書店
その日暮らし」の人類学もう一つの資本主義経済
小川さやか (著)光文社 2016

▼「お金とは〇〇だ。」を考える「ほんのれん」旬感本はこちらの5冊!


▼「お金」シリーズはこちら。

ほかの旬感本は、こちらで紹介しています。

●選書のプロセスで出会った15冊の「お金本」について紹介しています↓


『ふしぎなお金』
  赤瀬川原平(著)筑摩書房 2022 を紹介しています↓

●『〈ヴィジュアル版〉 貨幣の歴史
  デイヴィッド・オレル(著)角敦子(訳)原書房 2021 を紹介しています↓

●『浮世絵と芸能で読む 江戸の経済
  櫻庭由紀子(著)笠間書院 2023 を紹介しています↓


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