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在野研究一歩前(36)「読書論の系譜(第十八回):堀江秀雄『活少年』(明治書院、1900)①」

 みなさん、こんにちは、本ノ猪です。
 いつもお疲れ様です。
 
 今回「読書論の系譜」で取り上げるのは、堀江秀雄『活少年』(明治書院、1900)内にある「読書論」です。

 まず、著者の堀江秀雄について、簡単な説明を加えたいと思います。

堀江秀雄は、1873年7月4日滋賀県生まれの神道学者。國學院大學卒業後、同大学主事、教務課長を経て高等師範部長、教授を務めた。1959年5月13日に没す。主な著作に『幕末哀史』(雄山閣、1927)や『復古神道』 (東方書院,、1934)などがある。

 次に『活少年』の執筆目的について見ていきます。

「老弱を扶けて、之を安慰の地に導かむは、少壮の者の責任なりといへども、今やその力に堪へ得るもの、殆ど尠きを見るなり。」(P3)

「我が輩が本著の目的は、時運の變を説きて、處世の活法を少壯俊邁の士に警告するにあり。忙中筆を起して、咄嗟の間に稿を終ふ。文章蕪雜にして、言辭の過激に失せるが如き恐なきにあらず。恰も東風の寒烈を齎らして、人の肌を襲ふにも似たるか。知らず、誰か、之を繙きて、莞爾として梅花と笑を同じうする者ぞ。書成る。乃ち一言を記して、これが序と爲す。」(P4)

⇒「自序」から文章を二つ引用。ここから、著者が「少年(少壮の者)」に対して抱く期待を垣間見ることができます。
「少年は、社会において「老いた者」や「弱者」を支える存在である」。
今回とりあげる本著は、その一助となることを前提として執筆されました。

 以上、本書の執筆目的を確認しました。次に、執筆者が、少年の活躍する社会自体をどう捉えていたのかについて見ます。(今回は世界情勢観を確認。)

「アングロサクソン人種は、文明を以て誇ッて居るけれども、その接觸して居る劣等人種を滅ぼす事は、他の強暴猛悪なる國民の行為と異なる事なき結果を見るではないか。少年諸君は、將來に於いて、かやうな世界の大勢と戦はねばならぬのである。」(P194)

⇒戦前にありがちな人種による性質分析の典型例。ただ、ある国の文明発展のかげに、弾圧を受けたり虐げられている国(民)がいることは事実であり、日本が後者にならないためにできることはなにか、という問題意識をもつことは当然です。執筆者は、少年層に、上記のような弱肉強食社会で生き残れる力を求めていると言えます。

 以上で、「在野研究一歩前(36)「読書論の系譜(第十八回):堀江秀雄『活少年』(明治書院、1900)①」」を終わります。
 次回は、堀江秀雄の考える「世界の中の東亜及び日本」を確認した後、本題の読書論について見ていきたいと思います。
 ご覧いただきありがとうございました。

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