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来年の目標
もうそんな時期かぁ……と驚かされたのは、目の前の食事相手が「来年の目標」について語り始めたからだ。
食事相手とは、noteで度々登場してもらっている、70代の学友。年に一、二度、久しぶりにお食事にでも、と誘いがくる。今回は、パスタのお店へ。十数種類のパンが楽しめるとのことで、麺よりもパンを目的に、足を運んだ。
食事会には恒例行事がある。ここ数ヶ月読書をしてきて、「これは!」と思えた本を、互いに紹介していく。
毎回驚かされるのは、本当に同じ世界線で生きているのかと疑いたくなるぐらい、学友の口から知らないタイトルが飛び出してくること。それなりに書店へ通っているという自負があるだけに、いかに多くの本の前を素通りしてしまっているかを突きつけられて、情けない気持ちになる。
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今回、学友が紹介してくれた本の中で、最も興味を唆られたのは、とある作家の詩集であった。次に引くのは、その詩集の中の一節である。
「言葉を大切にしなければならない理由を尋ねられたら、日本語を守るためよりも、言葉があなたの感情を規定しているからと、小さな当たり前のことを最初に答えたい。そのように”誰が”という切実なものへ身を寄せることを、どんなときも手離さない詩人が私にとっての詩人です。」
(『杉本真維子詩集』思潮社、P125)
言葉があなたの感情を規定している……至言である。言葉の扱いが雑になると、それを口にする人自体も荒んでくる。これは、今日あらゆるシーンで目撃できる光景である。
ここで、冒頭の「来年の目標」云々の話に戻る。
学友は上記の引用文にいたく感動して、来年用の手帳に書き込んだ。自分の感情を大切にするために、まずは言葉を大切にするところから始める。これを、「来年の目標」とすることに決めたのだ。
「達成できているかどうかは、次回の食事会で会ったときに、ジャッジしてもらおうかしら」
彼女の言葉には、「だから、あなたも言葉を大切にね」という含みが感じられた。
言葉を大切にする……私の場合、それはそもそもどういうことなのか、まずはそこから考えなければならない。
長い思考の旅が始まりそうである。
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