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自浄作用
こんな人生経験の乏しい私にも、「ちょっと話聞いてよ」と相談をしにくる人がいる。的確なアドバイスを求めているというよりも、溜まりに溜まった不満を吐き出したい。その吐け口としての適性が、どうやら私にはあるようだ。
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相談の中身として、最も多い話題は、所属先に対する不満。ここをこういう風に変えてほしい、と提案するが、まったく聴く耳を持ってもらえない。厄介者扱いされている気がして、毎日の出勤が憂鬱である……。
こういう相談に対し、私が今まで口にしてきた言葉を振り返ると、あれは言うべきではなかったな、と反省させられる点が多くある。
「あなたが苦情を訴える理由は、自分が身を置く状況が緊迫した、困難なものであるからかもしれない。苦情の対象となるのは、苦情を訴える人がまだそのなかに身を置いている場所なのだ。そんな状況にとどまり続けたくないがために、あなたは苦情を訴えるかもしれない。苦情とは、身を置く状況から離れる労力となる。」
(サラ・アーメッド著、竹内要江・飯田麻結訳『苦情はいつも聴かれない』筑摩書房、P171)
特に反省したい点は、たまたま手に取った上記の本の一節に集約されていた。
私は、ある人から所属先に対する不満、引用文中の表現を借りれば「苦情」を聴かされた際、「そんなに不満があるなら、もう辞めた方がはやいんじゃない?」と言ってしまっていた。
今なら絶対にこういう言い方はしない。
少し考えれば分かることだが、相談者が所属先の問題点を指摘しているのは、今後も籍を置く組織の環境が少しでも良いものになってほしいと考えているからである。抜け出したいと思っているのは、芳しくない現状からであって、組織そのものからではないのだ。
世の中の様々な組織をザッと見回すだけでも分かるように、内部当事者の不満の声が受け入れられて、組織の自浄作用が働くということは滅多にない。今日もどこかに、受け入れられない不満を抱えて、苦しんでいる人がいる。
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