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築地本願寺で花まつり。献華式では未生流笹岡家元がインド、スリランカに因んだ花を奉納

築地本願寺(東京都中央区築地)の花まつりの献華式で、連載「花の道しるべ」を執筆していただいている未生流笹岡の笹岡りゅう家元が、いけばなを奉納しました。式典では築地本願寺と縁のあるインド、スリランカでも親しまれている花、蓮をイメージして紫木蓮しもくれん睡蓮すいれんをいけたそうです。

築地本願寺を目指してJR新橋駅からバスに乗り、築地三丁目で降りて歩いていくと、カラフルな旗がはためく、異国情緒あふれる建物が見えてきました。日本の伝統的ないわゆるお寺を想像していたので、意外な姿に驚かされます。

花まつり当日の築地本願寺本堂前

現在の築地本願寺(浄土真宗本願寺派)はかつて京都の西本願寺の別院として江戸時代(1617年)に建立されましたが、1657年の明暦の大火により現在の地に移転、関東大震災に伴う火災により本堂が焼失し、建築家の伊東ちゅう氏によって仏教のルーツであるインドの建築様式で設計されました。現在、首都圏における関東最大の念仏道場であり、本堂などは国の重要文化財として指定されています。

お釈迦様の誕生日を祝って4月9日に開催された「花まつり(灌仏かんぶつ)」では、この数年は出店やブースの数が制限されていましたが、今年はインド大使館、スリランカ大使館による舞踊のステージやブースが初出店。昨年は50名のみの参加だった稚児行列も今年は150名が参加し、まちを練り歩きました。

お釈迦様を宿した母が、夢に見たという白い象。稚児たちと一緒にまちを歩いた
正装してまちを歩く稚児たち

「これまで新型コロナの影響でお寺にいらしていただくことも難しい状況でしたので、今年の花まつりでは新たな取り組みを行いたいと、インド大使館、スリランカ大使館の方々にもご協力いただきました」とは広報の岡本さん。もともとインドやスリランカは仏教と密接な関係があることもあり、4年前にはインド大統領が築地本願寺に菩提樹を寄贈、スリランカ大使の奥様が築地本願寺の管轄するお寺に関係する方であるなど、これまでのお付き合いの延長線上で、今回の実施に至ることができたといいます。

お釈迦様が生まれた際に、甘露の雨が注いだという言い伝えから、花まつりでははなどうの誕生仏(お釈迦様)に甘茶あまちゃをそそいでお祝いする
色鮮やかな生花が敷き詰められたちょう
紅茶などが販売されていたスリランカ大使館のブース。

当日、本堂では、築地本願寺僧侶たちによる雅楽が演奏される厳かな雰囲気の中で献華式が行われ、未生流笹岡の笹岡隆甫家元によっていけばなが奉納されました。「インド、スリランカで親しまれている花、はすをいけたかったのですが、蓮は夏の花ですので、“木の蓮”、と書く木蓮もくれん、“睡る蓮”と書く睡蓮すいれんをいけさせていただきました。」と笹岡家元。本堂内では未生流笹岡東京支部展と題して、「花まつり」にふさわしい、色とりどりのいけばなが飾られていました。この東京支部展の開催は5年ぶり。笹岡家元は「コロナ禍で、企画しては倒れ……を繰り返し、ようやく今日開催することができました。伊藤忠太が設計したこの場に花があれば素敵だろうと思っていましたので、ご縁があってこのような機会をいただき、大変嬉しく思っています」と話します。

紫木蓮の家元作品
睡蓮の家元作品
本堂内の未生流笹岡東京支部展。インドの瓶や水差しを花器として使っている作品も
いけばなの奉納を終えて話す笹岡家元

本堂には音響・撮影機材が揃っており、献華式の様子はYouTubeで同時動画配信されていました。チャンネル登録者数はなんと1.96万人! 築地本願寺では元々デジタルに力を入れていたそうですが、コロナ禍となってZoomでの法要の依頼などにも対応してきたそうです。

境内では、うららかなお天気のもと、年配の方々が昔話に花を咲かせ、子どもたちが花輪投げなどを楽しんでいました。

献華式を終えた後の笹岡家元
境内にあった象の像
ゲームで花輪をなげる

かつて、建築研究でアジアをまわった伊東忠太と、シルクロードを旅した大谷光瑞こうずい(当時の浄土真宗本願寺派門主)が出会い、これまでにないお寺ができたように、様々なご縁を大事にして新たな挑戦をする覚悟を持てば、きっと何かを実現できる、そんな気にさせられるおまつりでした。

文=西田信子
写真=ほんのひととき編集部

▼築地本願寺のYouTube(献華式の様子をご覧になれます)

築地本願寺
本堂参拝時間6:00〜16:00
https://tsukijihongwanji.jp/
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@tsukijikoushiki
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tsukijihongwanji_official

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