シェア型本屋&カフェ BOOKY──本と音楽を愉しむアナログな空間(神奈川県藤沢市)|本の棲むところ(10)
JR藤沢駅の北口から歩くこと約20分。一軒家をリフォームした「シェア型本屋&カフェ BOOKY」は、かつて宿場町だった風情ある街並みを抜けた先の住宅街にある。
棚主の個性が光るシェア本棚
シェア本棚はエントランスを入ってすぐの壁際にあり、月額2,800円(入会時5,000円)で誰でも棚主になることができる。現在は25の棚主が入居している。食べ物や音楽、絵本など、テーマを絞って本を並べている棚主も多い。
それでは、個性豊かな棚の中からそのいくつかをご紹介したい。
ほかにも、子どもの居場所を提供するNPOの棚や、この地域に引っ越してきた中国人に日本語を教えるボランティアグループが運営する棚もある。
こうしたローカルに根差して社会貢献を行うグループが入居しているのも、駅から離れた住宅街に構えるBOOKYならではの特徴かもしれない。
店内には、棚主のkirinso booksさんが自主的に発行する「BOOKY百景」というフリーペーパーが置かれている。BOOKYの個性豊かな棚主やイベントなども紹介されているので、訪れた際はぜひ手に取ってみてほしい。
バラエティに富んだ店主の蔵書
カフェスペースの本棚には、店主の森田美樹さんが集めた大量の蔵書がジャンル別に並べられており、カフェ利用者は自由に読むことができる。その多くは値付けがされており、古書として購入も可能。
アナログの音に浸れる贅沢な空間
さらに、BOOKYを語るうえで欠かせないのがこちらのオーディオブース。1960年代から90年代までのロックと、1940年代から90年代までのジャズのレコードをヘッドフォンで聴くことができる。
レコードの多くは店主の森田さんが収集したものだが、音楽好きの常連客によって持ち込まれたものもあるという。BOOKYを訪れた際は、ジャズやロックの本に囲まれながら、アナログレコードの豊かな音色に浸る時間をぜひ体験してもらいたい。
カフェスペースには、『柄沢レコードコレクターズ』という冊子が置かれている。これはBOOKYに集まる音楽好きたちがお薦めのCDを紹介した本。寄稿しているのは、元音楽ライブのプロモーターやミュージックバーの店主、市民オーケストラのメンバーや音楽評論家など多彩な顔ぶれが揃う。
10冊限定で作られたこの冊子を発行したのは、BOOKYの音楽イベントを手伝うこともあるという常連客の柳沼定利さん。先の「BOOKY百景」もそうだが、BOOKYの棚主や常連客は、自分にできることを見つけて積極的に“参加”することで、自らも楽しみながらこの場をさらに面白く盛り上げている。
カフェを味わう
BOOKYはカフェのメニューも充実している。食事はカレーやサンドウィッチが用意されており、横浜「バーキングカフェ」の直火焙煎によるオリジナルコーヒーが楽しめる。チョコレートでコーティングされた芳醇な味わいの自家製ラムレーズンボールもおすすめ。
BOOKYでは8月10日(土)に、ギタリストのFalcon氏とハーモニカ奏者の倉井夏樹氏によるデュオ「風響」と、台湾の世界観を伝えるボーカリストEri Liao氏によるコンサートが開かれる。ぜひこの機会にBOOKYを訪れてみてほしい。
文・写真=飯尾佳央
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