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新たな冒険も、日常の宝物も


我が家から湖までは、すぐ近くにある。せっかくの休日、湖岸の公園でピクニックをしようと決め、娘とお弁当作りに取りかかった。彼女は「どっちが可愛くお弁当を詰められるか勝負だよ」と張り切り、小さなお花畑をイメージした一品を作り始めた。小さな手でふりかけをかけ、ソーセージや卵焼き、ミニトマトなどを丁寧に詰めていく姿に心が温まる。

去年は離婚し、自由な時間が増えた喜びとともに、娘と二人であちこち出かけた。新しい場所を訪れるたびに広がる開放感や、どこへでも行けるという可能性に心が躍った。あの頃は、新しい場所での発見や冒険が、私にとってかけがえのない時間だった。遠くへ行けば行くほど、心が軽くなるような気がしていた。

しかし、今年は少し違う。遠くばかりを追い求めるのではなく、近所を散策し、身近な場所での時間も大切にしようと決めていた。娘の成長をゆっくり見守りながら、日常の中にこそある豊かさを感じたかったのだ。

その日は近所の湖岸の公園で過ごした。広い空の下、風にそよぐ木々の音を聞きながらお弁当を広げると、心が穏やかに満たされていく。娘は楽しそうに歌い、踊り、元気に走り回る。そんな姿を眺めながら、静かな幸福感が広がっていくのを感じた。

帰り道、夕暮れの光に包まれながら、娘は「楽しかったね」と満足げに笑った。
その笑顔を見て、私はこの1日も、何にも代えがたい宝物であると実感した。

旅行先にいるときよりも、娘の表情をよく見ることができた日になったように思う。遠くへ行く旅も素晴らしいが、近くで過ごす時間にも豊かさがある。どちらが良いということではなく、どんな時間も大切に過ごすことで、その瞬間が特別なものになるのかもしれない。バランスを取りながら、豊かな時を紡いでいきたいものだ。


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