見出し画像

続けてさえいれば大丈夫

茶道の先生と話す機会があり、私は悩みを打ち明けた。「茶道を初めて1年ほど経ちますが、なかなか動作が覚えられなくて、間違ってばかりいる。成長が遅くて困っているんです」と。本当に、毎回同じような動作をしているはずなのに覚えられない。次は何をするんだっけ?このお稽古に必要な道具はどれだっけ?同時に入会した人はよく覚えているのに、と、どうしても落ち込んでしまうのだ。

すると、先生は「それでも続けることが大切。続けてさえいれば大丈夫ですよ」と言ってくださった。

「確かに、稽古の間が長く空いてしまうと、前回のことを忘れてしまうこともある。そうなると、上達は遅くなってしまうのは避けられない。それでも、前回のことが何らかの形で頭に残っている状態で、また稽古を続けていれば、長い目で見れば確実に上達しますよ」とおっしゃった。今まで大勢の生徒さんを受け持ち、実感されているそうだ。この言葉にほっとした。

考えてみれば、少しずつでも進歩していけば、1年経つと大きな成長に繋がるという話を聞いたことがある。0.2%ずつの改善でも、1年経つと大きな違いになる。あせらず、長く続けることを目標にするのもひとつの手かもしれない。

その後、別の日に先生と雑談しているとき、私の年齢が30歳だと話すと、「そんなに若いの、あと何10年も稽古ができるから、いいわね」と言われた。その言葉に少し驚いた。何10年も続けることなんて、今は想像もできない。それでも、もし何10年も続けていれば、なかなか覚えられなくても、それなりに形になっていくのだろう。そう思うと、少し安心した。

茶道は終わりなく、ずっと稽古し続けることが求められるものだ。
『稽古とは一より習い十を知り、十よりかへる元のその位置』という利休居士の動歌にあるように、最初の基礎が最も大切であり、最終的にはその出発点に戻ることを心得なければならない。その道のりには終着点がなく、常に学び続けることが求められる。

今はただ、こつこつ一歩づつ進んでいくつもりだ。茶道の道は果てしなく、続けること自体が目的とも言える。そんな姿勢で、長い道のりを楽しんでいきたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?