死ぬ前にダンベルを握った
生きてる中でどうしようもなくキツい瞬間があります。
そんな時、人には何か拠り所が必要です。
私の拠り所の一つはダンベルでした。
社会人2年目に筋トレに目覚め、それ以来トレーニングを継続しています。
ベンチプレス80kg、10km走50分切りくらいの社会人にしてはそこそこ動ける身体能力です。
そんな健康体の私ですが、ブラック企業へ転職してしまい過重労働とパワハラに耐えられず適応障害まで追い込まれました。
本気で死を考えた時、近くにあったダンベルを手に取りました。
贅肉出現
社会人2年目に差し掛かり、仕事も一通り覚えた頃。
先輩社員や同期によく飲みに付き合ってもらい、社会人生活を楽しく順調に送っていました。
ある日、身体の異変に気が付きます。
入社した時に買ったスーツのジャケットが締まらない。
下腹が人生最大に出ていました。
ただ痩せるだけじゃ面白くない
「なんか太った?」
「スーツパツパツじゃん」
「見かけによらず腹出てるね」
「〇〇腹やべえな」
「太ったら愛せるか分からない」
周囲の人から様々な言葉を投げ掛けられます。
人生でこれまで太った経験はありません。
初めて浴びせられる言葉は良くも悪くも刺激的でした。
とにかく痩せようというモチベーションの源泉はこの時です。
しかし、ただ痩せるだけでは面白くない。
徹底的に鍛えようと筋トレを始めました。
まずは自重トレーニングで一気に贅肉を削ぎ落とします。
次に、自宅トレーニング用のダンベルベンチと24kgのアジャスタブルダンベルを購入。
これが私とダンベルの出会いでした。
このダンベルと共に数年過ごし、除脂肪体重を7kg増量させます。
時々公営ジムでも自宅以上の負荷を掛け、ベンチプレス80kg程の身体能力になりました。
この時が、筋トレを純粋に楽しんでいた最後の時期でした。その後ブラック企業に転職します。
ブラック企業のある日
入社して間もなく、同僚が鬱病で会社に来なくなりました。
代わりに仕事が増え、味わったことの無い忙しさに突入します。
筋トレ時間は、就寝直前の30分程度しかありません。
転職前は毎日1時間のトレーニングを日課にしていたところ、残業の多さで削られました。
それに夜遅くにやるトレーニングは睡眠の質も落とすので、タイミングも最悪です。
しかし、この時間しかやれるチャンスはありませんでした。
その結果何が起こったか。
筋トレ不足で筋肉が落ちる
↓
ストレスで食生活も乱れて体重増加
↓
体力低下、身体が疲れやすくなる
↓
毎日激務で疲れが取れないまま翌日を迎えるループへ
ダンベルが重くなっていく
何年も掛けて鍛えた身体には、再び贅肉が付き始めました。
以前は余裕だったはずのダンベルも重く感じます。
仕事がキツく、筋トレへの意欲は絞り出すようなものでした。
その状況で少しだけでもとトレーニング継続したのは、ここで止めたら精神的に終わるという予感があったからです。
その予感は暫く後に当たることになります。
休日の異変
異変は急に現れました。
私の休日朝は、軽く筋トレしてジョギングする事から始まります。
いつも通りプロテインとプレワークアウトを飲み、消化が始まるまで30分程度待ちます。
前日も遅くまで仕事で疲れていたので、ベッドに横になって待つ事にしました。
30分経過。
そろそろ始めるかと身体を起こそうとすると、身体がトンデモなく重い。
空腹が限界の時に力が入らないような感覚に似ているかもしれません。
腹が減っている訳ではないのに、力が全然入りません。
この日は結局ベッドから起き上がれたのは昼過ぎでした。
朝の分を取り戻さねばと夜に筋トレをしました。
死んだ方がマシ
異変が起き始めてすぐ、新たな不調が出てきます。
夜、全然眠れなくなりました。
疲れて眠りについて、3時に目が覚めます。
そこから二度寝に入ろうとするも、翌朝の仕事が気になり出したりして脳が覚醒します。
仕事の事を考えないようにと思いつつ、瞼を閉じているだけの時間が続き、徐々に窓から朝日が差し込んできます。
絶望の朝日です。
疲労が抜けず睡眠不足の状態で仕事へ向かった結果。
仕事中に頭痛と吐き気が酷くなりました。
人間は睡眠が足りないと体調が一気に崩れるようです。
仕事がキツいだけでなく、体調も最悪な中過ごす事になります。
あまりの辛さに死んだ方がマシではないかと本気で考えました。
思考がヤバい方向へ行き始めた一方、体調の悪さは無視して敢えて筋トレは続けました。
昔筋トレ情報を掻き集めた時期に、何処かで見聞きした言葉です。
毎日が辛い中、何もせず寝ても辛い明日が待っている。と自分の置かれた状況に当てはめました。
ここで死んだら家族はどうなるというブレーキもあり、あと一歩死には踏み切れず、生き地獄の中何かするしかありませんでした。
死んだ方がマシだと考えつつも、習慣的にダンベルを手に取り続けました。
想像していなかった未来
ブラック企業にも仕事の波があります。
仕事量が少し減ったタイミングを見逃さず、筋トレを出来る範囲で増やしていきました。
筋トレによる疲労で強制的に眠りにつく事で、睡眠障害は多少マシになり、それに伴って体調不良も緩和していきます。
一方でブラック企業では体調の悪さをアピールしておき、仕事が増えないようガード。
その隙に転職活動も一気に進めてブラック企業脱出に至ります。
こうして今の生活を手に入れたのも、ダンベルを手に取っていたからです。
あの時筋トレを放棄していたら、転職活動を進めるパワーも生まれなかったでしょう。
ダンベルを握る行為は、私にとってベンチマークになりました。
手に取れなくなるほど追い詰められた時は、危険信号です。
今現在、筋トレにモチベーションはなく、楽しいとも感じませんが毎日続けています。
続けなければあの生き地獄の感覚に戻るんじゃないかという恐れから、辞められないと言った方が正確かもしれません。
この筋トレに向き合う姿勢は人には中々話せるものではなく、普段は筋トレ好きとして話を通しています。
純粋に筋トレを楽しんでいた頃からは想像していなかった未来です。
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