【初心者】平仮名くずし字の勉強方法
以下の内容はyoutubeに投稿した動画の読み原稿です。
スライドと対応した内容ですので、あくまで動画の補助であること、ご容赦ください。
はじめに(動画00:00~)
本動画は、くずし字を読めるようになりたい人に向けて制作するものです。
興味はあるけれど、どうすればいいかわからない。難しそう。若しくは、勉強中だがよくわからない。という人に向けて、自力で読めるようになることを目指します。
「自力で読めるようになる」とは、「分からない」を自分で解決できる能力を持つことであると考えています。読めない文字をいかにして読むか、その方法さへ修得すれば、一人で読んで行くことができます。
ただし、こでは仮名に限って勉強方法を説明します。
仮名は比較的簡単ですので、全くの初心者もこの動画から是非始めてみてください。
説明は次の手順で進めます。
①崩し字の前提を理解する
②読み進める手順
③解決方法
④様々な資料
先ず、くずし字を読むにあたって知っておくべき事項を説明します。
それから実例と共に、はじめてくずし字を読む場合の進め方を紹介します。
③では読めない字に出合った場合の解決方法を紹介します。これで大方の文字は読めるようになるはずです。
最後に、どこでくずし字のテキストを手に入れるのか、どんな辞典やツールがあるのかを紹介します。
①崩し字の前提を理解する(動画01:18~)
そもそも現在我々が使用している平仮名は
明治33年(1900)の「小学校令施行規則 第一号表」によって統一されたのが嚆矢です。その後多少の変更があったものの、仮名は一つに統一されました。
統一されたということは、もとは複数あったということです。
平仮名は漢字を崩して書いたものであると、聞いたことがあるかもしれません。
現在我々が使用している仮名も「安」→「あ」、「以」→「い」という関係にあります。
漢字の意味ではなく音を使って、日本語を表記しようとしたのが始まりです。
用例が集めやすかったので、「き」を例に説明しますが、例えば日本語で「き」の音を表記しようとしたとき、漢字で「き」と発音されるものは複数ありました。幾、支、起などです。日本人の聞き取った音なので中国発音では若干の違いがあったとしても、日本ではどれも同じ「き」を表記するものとして使用されました。「き」を表記する際には、幾、支、起のどの漢字を用いてもOKなのです。
どれを使ってもいいし、さっき「幾」を使ったのに、次には「支」が使われていても良いのです。そして、ここに示したように、仮名と言いつつ、元になっているのは漢字です。この元の漢字のことを「字母」と呼びます。くずし字を読むことは、字母を読むこととイコールです。字母が読めなければ、くずし字を読めているとは言えません。
よって、現在の仮名に、どのような字母が存在したかを知ること、覚えることが必要です。
ただし、くずし字一覧を見て、端から順に覚える必要はありません。むしろ無駄です。なぜなら、よく使われる字母、めったに使われない字母があるからです。
変体仮名集やくずし字辞典を見ても、出会ったことのない字母がいくつも存在します。
これは余談ですが、和菓子のパッケージなどに、くずし字を用いているものを見かけます。読もうとしても、読めない字があることが多いです。よくよく調べてみると、今まで出会ったことのない、珍しい字母を用いていることがあります。辞典を見て、見た目の良いものを選んだのだろうと思います。こんな字普通は使わないぞと悪態をつく嫌な客です。
勿論勉強の仕方は人それぞれですので、一番自分に合った方法で進めてもらえば良いのですが、私のお勧めは、読んで把握し、読んで覚える方法です。
前提知識はこれだけです。
字母は実際にくずし字を読みながら覚えてゆけば良いと私は考えていますので、さっそく読んでみましょう。
②読み進める手順(動画04:26~)
最初に何を読むか、ですが、長いものではなく短いものを選んだ方が良いです。
読み切ったという達成感を積み重ねて行きましょう。
最初は有名な作品の方が、行き詰まった際のヒントや答えとなる資料が豊富にあるため、取り組みやすいです。
おすすめは伊勢物語か竹取物語です。源氏物語が好きだからと言って最初に選ぶと、あまりの長さに心が折れて中途半端なところでやめてしまうかもしれません。
当然、いきなりやっても読めません。
最初は活字本と並べて見比べながら読む方法をお勧めします。
何を漢字とし、何を平仮名で書いているか、字母は何か。これに注意しながら読みます。
中身を読むために崩し字を読んでいるわけですが、中身がわからないと正しくくずし字が読めているかわかりません。
未知の資料ではなく既知の資料を読むことで確かな力を身に着けていきましょう
(動画05:31~)
『竹取物語』の冒頭を例に実際に読んでみたいと思います。
現在の活字資料には「今は昔、竹取の翁といふものありけり」とありますので、最初の字は「今は昔」と書いてあるはずです。仮名文学ですから、現在は読みやすいように漢字を当てていますが、基本的に平仮名だろうと思って読めば良いです。
現在と仮名が同じ部分もあるので、一行当ててみましょう。
恐らくこう書かれているのだろうという方向性が見えてきます。
幸い現在と同じ仮名があるので、最初の「い」、それから「むかし」、最後の「といふもの」が同じであろうことが分かります。
読めるところから読むことが大事ですね~
文字の判別を敢て表記すると、次の様になるかと思います。最初の「い」は良いとして、二文字目、三文字目の「まは」が、本当にそう書かれているか、わかりません。
変体仮名集や辞典を使って引いてみましょう。
「ま」を引いて、似た形の字母を探すと、「満」が見つかります。
「は」を引いてみると、「盤」があるを確認できます。
ここで良くやってしまう横着ですが、現在の平仮名と形が同じで調べなくとも読めてしまうからと、字母の確認を怠る人がいます。はじめの内だけでも、飛ばさずきちんと確認しましょう。
「い」を引くと、「以」であることがわかります。
この様にして一文字づつ確認してゆくと、字母は次の様になります。
問題はこの字ですね。流れ的には「を」か「お」ぐらいが来そうですが、辞典を引いてみましょう。似たような字は見当たりません。前後がわかっていると、文字数的に漢字だろうということが予測できます。また、他の文字よりも複雑な場合、漢字の可能性が高いです。ここは「翁」という漢字であろうと予測できます。漢字を調べる方法は幾つかあります。後で紹介しますので、ここでは省略しますが、これは「翁」という漢字で問題ありません。
よって、この一行の翻刻はこの様になります。
折角ですので「ありけり」までは読んでしまいましょう。
ちなみに続きの文は、「野山にまじりて竹をとりつつ、よろづのことにつかひけり」です。
二行目の四・五文字目に注目すると、漢字がありそうです。山がわかりやすいので、「野山」だろうという予測が立ちます。すると「ありけり」の四文字が、二行目最初の三文字に記されていることになります。どこかが漢字なのでしょう。
まぁ十中八九「あり」が漢字なのだろうということで調べると、まさしく「有」という漢字であることが分かります。「け」は「介」、「り」は「利」です。
ここで気づくことは、同じ仮名でも、字母が異なるものがあるということです。
人によって好みや癖がありますが、いずれかに統一されているのではなく、ごちゃまぜになっています。しかも、全ての字母が満遍なく混ざっているのではなく、大きな偏りがあります。だから、字母を端から順に覚える必要はなく、くずし字を読んでいく中で把握すれば良いのです。版本になると、使用される字母も絞られてくるので、近世文学だと、出会う字母の種類は少ないかもしれません。
また、同じ語でも、仮名の場合と、漢字で書かれる場合とがあります。これも規則性はありません(たぶん)。しかし、手書きの文字とはこのようなものであるということを知っているだけで、見え方が随分違ってきます。
さらに、句読点や濁点も基本的にありません。文の切れ目がどこなのか、会話の範囲はどこからどこまでなのか、清音か濁音かの判断は、読み手にゆだねられています。校訂本文は読みやすくて便利ですが、校訂者の解釈によって成り立っているということも、覚えておきましょう。
すこし脱線しましたが、
一文字づつ引きながら字母を確認する作業を繰り返してゆきます。
頻繁に出てくる変体仮名は、段々調べ直さなくても字母が覚えられるようになるかと思います。
結構めんどくさい作業ですが、活字テキストがあるので基本的に読めないということもなく、進められるかと思います。
重要なことは、分からなければ飛ばす、ということです。つまったら悩まず後回しにしてください。まずは読めるところから、パズルと同じで埋められるところから埋めてしまえば良いのです。
二、三頁も読めば案外読めるようになります。
ところが悲しいことに、こうしてある程度読めるようになった人に、壁が現れます。
①つめは「異文の登場」です
手書きで書き写されてきた写本には誤写や衍字や改変が存在し、現在一般に読まれる校訂本文にはない異文を持っています。
これはくずし字を読む醍醐味の一つでもありますが、初心者には苦悩の種です。先ほど紹介した方法では、なんと読むのか答が分からないからです。そもそも、異文であるということに気付けるか、という問題もあるでしょう。
(動画11:02~)
土左日記の有名な異文を紹介します。
現在の校訂本文は「男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり。」です。国語の授業で覚えたという人も多いでしょう。
この有名な冒頭が、定家本では次の様に記述されています。
一行目から「をとこもすといふ」になっています。
二行目「おんなもしてみんとてするなり」なら良いのですが、何でしょうね。この字。
一見仮名っぽくもありますが、実は「心」という漢字です。
「女もしてこころみん」なんですね。
この様な異文に出合ってしまったら、何時までも悩まずにさっさと飛ばしてしまいましょう。読めるところから、最初はとにかくたくさん読むことが大切です。考えて解ける問題ならしっかり取り組むべきですが、知らないものは悩んでも答えがでませんので、今後の課題にすればよいのです。
壁その②は「書き癖」です。
崩し字が手書きであるという事実によって、その人特有の文字があり、癖があります。くずし字は実は書き手の癖を読み取る作業でもあります。
これは私の実体験ですが、私は授業で竹取物語の一本を読んで崩し字の基礎を学びました。その写本に対しては、かなり読めるようになっていたんです。それを崩し字が読めるようになったと錯覚して、意気込んで他の写本を読んでみたところ、全く読めなかった、ということがありました。それはまだくずし字に馴れていないと共に、その人の書き癖を理解していないからです。
まず一つのテキストでくずし字を読む目を獲得し、さらに別のテキストで養うという第二段階が必要です。後は永遠に目を養い続けることになるのですが、AIと同じで、沢山読めば、さまざまなパターンを知って、初めてでもある程度読めるようになるものです。
では、読めずに後回しにした文字は、どうやって解決するのでしょうか。
③解決方法(動画13:11~)
です。活字本があればそれと比較することで或程度推測することができますが、写本には現在にはない本文も存在しますし、翻刻資料のないテキストを読むときに困ります。
●同じ形の字を探す
一つの方法は、同じ形の文字を探すことです。既に読んでいないか、後に出て来はしないか、探してみてください。後で出て来たときには難なく読める場合もあります。若干の字形の違いや、前後の文脈から推測して、合点が行く時もあります。字形が同じであることが、確定の担保にもなります。
●古典文法
似た字形の判別も苦労するところです。
「か(可)」「り(利)」「る(留)」など、見分けがつかない場合があります。文字だけを見ているのでは区別がつかないものでも、文脈を考えればわかる場合があります。「けり」か「ける」か、古典文法の知識があればわかるはずです。また、古語辞典を引いてみると判明する場合もあります。知らない古文単語もあるもんです。
これも人によって書き癖の出る所です。わからなければどんどん飛ばし、情報を蓄積させ、後で一気に解決させるという手があります。
文脈判断は有効な方法ですが、頼りすぎもよくありません。はじめから文脈に頼って、文字を読まないでいると、いつまでたってもくずし字が読めないどころか、誤読しやすくなります。活字本と比較する際にも、活字本では漢字で書かれているからと、平仮名の部分を無理に漢字であると決めつけたり、逆に平仮名で書かれているからと、くずし字では漢字で書かれているのに無理に平仮名で読もうとする人がたまにいます。固定概念を外して、柔軟に読むことが重要です。
「え」「へ」「ゑ」、「い」「ひ」「ゐ」などの仮名遣いにも注意しましょう。
●別の諸本と比較する
他の方法としては、別の写本で確認するという方法があります。
例えば『伊勢物語』の写本はいくつもありますので、読めない部分が他の写本ではどう書かれているのか確認することで、方向性を得ることができます。まぁ伊勢物語ぐらい有名な作品であれば、わざわざこんなことしなくてもいいんですけど、校本どころか翻刻資料もないようなものを読む場合には、写本を二三本集めておくと心強いです。別の写本の方が読みやすい場合もありますし、判断の参考になります。
近世の草双紙を読む際にも、探すと版本の写しとか、別刻版があったりします。なかったら残念。がんばってください。
●コンピューターを利用する
世の中はどんどん便利になっていますから、便利なツールを上手く使うのも必要な技術です。といっても、私も使いこなせていないので、誰か初心者にもわかるように教えてください(泣)。
○『電子くずし字字典データベース』『木簡庫』連携検索
は東京大学史料編纂所と奈良文化財研究所が作成した文字のデータベースです。一文字入力して検索すると、さまざまな資料にあるその文字が一覧で表示されます。木簡に平仮名はないので仮名を検索する場合は専ら電子くずし字字典を利用しますが、漢字を調べる場合にも有用です。
この字かな?と推測はできても、手持ちのくずし字辞典に合致するものが見当たらず決め手に欠ける場合に、より多くの用例を得ることができます。
問題は或程度的を絞れないと検索すらできないことです。
そこで同じく東京大学史料編纂所と奈良文化財研究所が作成した
○木簡・くずし字解読システム―MOJIZO―
があります。読めない文字を一文字切り抜いて解析させると、似た形の文字を表示してくれます。正直精度はイマイチですが、皆目見当がつかない文字には何かしらのヒントをくれるかもしれません。
○KuroNetくずし字認識サービス(多文字)
は人文学オープンデータ共同利用センター(Center for Open Data in the Humanities / CODH)が作成したAIによるくずし字OCRサービスです。
画像を読み込ませると、1頁丸ごと読んでくれるので、かなり便利です。
利用にはログインが必要なのと、踏むべき段階が多いので、最初は少し大変かもしれませんが、慣れてしまえばありがたいサービスです。
ただし、これはInternational Image Interoperability Framework 通称IIIFという国際的なコミュニティ活動で定められた形式に対応している画像を対象としており、影印本やIIIF非対応の画像には使用できないという制限があります。
同じくCODHが公開しているものに、
○KogumaNetくずし字認識サービス(一文字)
があります。これはKuroNetと同様の手順で一文字認識を行うものです。ログインが不要なのでIIIF対応画像を読み込ませて遊んでみるといいでしょう。
AIが読めるなら人間が読まなくても良いのでは?と思う人もいるかもしれませんが、AIの解析が正しいかどうかを判断するのは人間ですので、くずし字が読めないと意味がありません。AIは読解を助けてくれるツールであって、人間に代わるものではない、ということを覚えておいてください。
●読める人に聞く・みんなで読む
ここまでは一人で取り組めるものばかりでしたが、周りにくずし字を読める人がいるなら、聞いてみるのも一つの手です。
皆で読むことで、自分では気づかなかった間違いを訂正したり、他人のミスを見つけたりするなど、様々な知見が混ざり合ってよりよくなっていきます。
これをオンラインで実現したものが「みんなで翻刻」です。
初心者には難しいと思いますが、読むのに慣れてきたら参加してみるといいでしょう。ニコニコ生放送で配信もしているので、チェックしてみてください。
【紹介】
紹介したサービスについてはyoutubeチャンネル「ROIS-DS CODH」に
2019年11月11日に開催された「日本文化とAIシンポジウム2019 AIがくずし字を読む時代がやってきた」のライブ配信のアーカイブがあります。
紹介したサービスについての説明もありますし、くずし字に留まらない様々な取り組みを見ることができます。
またyoutubeチャンネル「文学通信」に
2020年2月8日に開催されたシンポジウム「マシンと読むくずし字―デジタル翻刻の未来像」のライブ配信のアーカイブがあります。
「みんなで翻刻」の活動の他、翻刻をする、くずし字を読むことについてのこれからが議題となっているので、是非チェックしてみてください。
因みに人に聞く場合のワンポイントアドバイスですが、一文字だけを切り出して、何と読めるか聞くのはやめてください。字形的にこれだろうということは言えても、確定できないからです。絶対「前後はどうなってるの?」って聞かれます。文字は文の中にあるので、文の中で解釈しなければなりません。SNSで友達に聞く時にも、一文字だけ写真に撮って聞くことのないように。最低でも一行、できれば一ページ、欲を言えばその資料の全てを持って聞きに行ってください。
これは絶対ではありませんが、だいたいこんな流れで判断するのではないかというイメージ図です。
まず字形で判断します。これで読めても読めなくても、前後の文脈を当然見ます。文が通らなければおかしいですからね。解決しなければ周辺に同じ字形がないか探します。書き癖かもしれませんからね。もし同じ字形が見つかり、それで読めるのであれば、問題ありません。これでダメなら古語辞典を引いてみます。知らない古文単語を知るきっかけになるかもしれません。字形的に読めているが、文脈が合わないと思っていたものが、特におかしくなかった、なんて場合もあるかもしれません。これでも解決しない場合は、他の資料を探してみます。
これでも解決しない場合は、保留にします。誤写や衍字の可能性もあります。
実際はAIを使ったり、もっと他の方法を試したりするでしょうし、判断の順番は自由です。
少なくとも、一文字で判断できる範囲、一文で判断できる範囲、より多くの資料で判断できる範囲は明確に異なります。当然多い方がいいですよね。
たまに、読めていると思っていた前後が間違っていた、なんてこともありますので、兎に角柔軟に、しかし堅実に読むことが大切です。
最後になりますが
④様々な資料(動画22:20~)
を紹介します。
●テキストを探す
いざ、くずし字を勉強しようと思っても、どうやってテキストを用意すれば良いのか、どこで手に入るのか、最初はそこから悩むと思います。
基本的には影印本や複製資料などの印刷媒体と、インターネットに公開されているデジタル資料のどちらかになります。
影印本はさまざまな機関がそれぞれ刊行して多岐にわたっているので、読みたい作品名と影印で検索をかけるのが良いでしょう。
大学図書館のOPACならまずヒットするはずです。市立図書館だと専門資料なのでないかもしれません。
国文関係なら「笠間影印叢刊」「和泉書院影印叢刊」「冷泉家時雨亭叢書」などが、いろいろな作品を揃えているので便利かなと思います。
また、『古筆学大成』や『日本名跡叢刊』など、書道関係資料で名筆を読むことができます。これは翻刻がついているので正解付問題集としても使えます。
デジタル資料もそれぞれの機関が公開しているため、多岐に渡ります。
国立国会図書館デジタルコレクション で公開されている「古典籍資料」
新日本古典籍総合データベース で画像公開されている資料
(人文学オープンデータ共同利用センター「日本古典籍データセット」)
が王道でしょうか。この外、各大学が公開している資料もあるので探して見てください。
●活字か翻刻を探す
日本古典文学を専攻すると、
日本古典文学大系(旧大)岩波書店
日本古典文学全集(旧全)小学館
新潮日本古典集成(集成)新潮社
新日本古典文学大系(新大)岩波書店
新編日本古典文学全集(新全)小学館
の五つは基本の書になるのでいずれかを参考にするとよいでしょう。
レベルとしては、小学館の全集が現代語訳付きで初心者向きです。新潮集成は部分訳なので、古文に馴れているなら便利です。岩波の大系は注釈しかありませんので難しいかもしれません。ただ、くずし字を読むだけならどれを使っても変わりません。
殆どの図書館にどれかは置いてあると思います。近所の図書館で探して見てください。
「国文学論文目録データベース」で検索してみると、翻刻された資料が赤字で表示されます。マイナーな資料で翻刻ないかなぁと思った時に検索すると、雑誌に翻刻が公開されている、なんて場合もあります。
奥書などは活字化されていない場合があります。その写本にしかないものだとなおさらです。これの翻刻を探すなら、影印本の解題、もしくはその資料の論文を探して見ると良いでしょう。影印の解題には書誌情報や伝来として翻刻してくれている場合があります。論文中に引用して部分的に活字になっている場合もあるので、ねちねち探すと見つかったりします。
部分的に読めたなら、そのままネットに入力して検索してみるという手もあります。Googleブックスでヒットするかもしれませんし、個人ブログに書かれている場合もあります。ブログは信用に値しませんが、参考にはなります。何もないよりはましです。
「やたがらすナビ」の「古典文学電子テキスト検索β」では
電子テキストや画像を公開しているサイトを検索することができるので、影印や翻刻を探すのに便利です。
●辞書辞典 は
色々あるので好みでも良いと思うのですが、仮名を読むのに私は次のものを使っています。
・伊地知鐵男『増補改訂 仮名変体集』(影印本シリーズ)新典社
安いし小さいし薄いのにすごく便利で基本的にこれだけでかなり読めるようになります。
・児玉幸多『くずし字用例辞典』東京堂出版
漢字も読む人は必須。『仮名変体集』と合せて判断します。
●インターネット資料 は
既に要所要所で紹介したので、ここで改めて取り上げることはしませんが、
日本文学 Internet Guide
が、文学研究に関するサイトをまとめているので、便利です。
他にもいろいろあったと思うのですが、失念してしまいました。
こんなサイトもある。こんな資料もあるよという情報があれば、コメント下さると助かります!
●おわりに(動画26:45~)
以上、くずし字の勉強方法について説明しました。
要点をまとめると、
くずし字は字母と書き癖を読み取る作業です。
この二点さへ押さえていれば、きっと読めるようになるはずです。
ちなみに、大学教育では実物の古典籍に触れることも重視しているのですが、個人で学習すると、その機会を得るのが難しいです。そこで是非とも博物館に足を運んでみてください。博物館に行けば触れずとも見ることができます。多くの人はくずし字が読めないので、素通りするかチラ見で終わることが多い展示物です。読めるか腕試しするとよいでしょう。ただし、人の流れを止めないように気を付けてくださいね。
こうして見ると、くずし字の学習は最悪スマホさへあれば始められてしまう程開かれた環境にあります。「くずし字学習支援アプリKuLA」もありますし、オープンデータやデジタル公開資料が増えているのは本当にありがたいことです。
誰でも今すぐ始められるので、ぜひ取り組んでみてください。
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