「晩鐘」 さだまさし
秋の白い花がひらひらと
あなたの髪に舞い落ちる
あなたの顔を伝い落ちてゆく
その刹那
それは唇に引いた紅と重なり
花の白は紅を背景に
その姿を鮮明にした
落ちゆく白のその様は
今まさに訪れんとする別れの象徴
約束の場所は交差点の向こう側
交差点の向こうには
別々の未来がある
握った手の温もりの名残を惜しむかのように
じっと立ち止まる
信号が点滅を始める
無情にもあなたは
信号が変わるのを待ちきれないように
交差点の向こう岸へ駆けていく
黄色い銀杏の葉が舞仕切る中
僕の気持ちは
こちら側に立ち止まったまま
宙ぶらりんとなった
交差点という分岐点に立つ信号
この信号は心変わりを告げるもの
分岐を告げるシグナルだった
あなたはきっと信号が変わって
次の色がやってくることを待ちきれなかった
僕があなたを変えることができなかった
その事実に驚いているのは
きっとあなたの方なのかもしれない
後に残ったのは
たった1枚の
どこからともなく流れに巻かれてきた
行くあても定かではない一枚の葉のような自分
そして、その僕に覆いかぶさる黄色い銀杏の葉
あなたは交差点の向こうへ走り去っていく
心の中で鳴り響く晩鐘が
終わりの時を告げている
僕は立ち止まったまま
すでに想い出となった恋のことを
あなたのことを想うのだ
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