ジョージ・ハリスンの自伝的な映画 〜 「Living in a Material World」
ビートルズのジョージ•ハリソンの自伝的映画です。ジョージに興味がなくとも、ビートルズ、ポールやジョンが好きなら見るべき作品です。
ジョージについては、ビートルズ時代よりも、解散後の半生のほうに興味があったので、映画は後半のほうがたのしめました。
やはり彼は、インドに深くかかわるようになってから、精神世界と物質世界の葛藤の中にいたような気がしますね。自分自身のことを霊的存在になりたいとまで言ってます。
ちなみに映画タイトルの意味は、物質世界に生きるです。
ビートルズ時代は、おそらく孤独だったんでしょう。
ポールとジョンは曲作りに火花を散らしていたし、リンゴはおそらくあるがままに生きていた。でもジョージはあるがままに生きるのではなく自ら創作者であろうとした。
が、さすがにジョンレノン、ポールマッカートニーという歴史的な偉人にはかなうべくも無く。
人間、孤独を感じるときは、より内省的になっていくものだと思いますが、彼の場合、向かったのは精神世界の探求がひとつのテーマでもあるインドであり古来の音楽であり、宗教であり文化であったんでしょう。
そこで、彼は、自分の立ち居地を再認識して、自分の道を歩む決心をして。後期ビートルズでやっと、名曲を生み出すことができたのもこの経験が大きいんでしょう。
このドキュメントでもビートルズ時代からインドのことにかなりの時間が割かれていていかにジョージがインドと親密であったかがわかります。彼はマントラを唱え、毎朝瞑想をするような生活をしていたようです。
ビートルズ解散後、彼は呪縛から解き放たれたかのように、好奇心の赴くままに歩んでいきます。
F1レーサーのジャッキースチュワート、コメディ集団モンティパイソンなどは終生の友であったようです。
音楽面ではマイペースな活動を続けてます。全て聞きましたが、たぶん、音楽自体はすぐに枯れてしまったような気がします。
ですが、彼は、仲間たちと立ち上がることで音楽面でも復帰。ボブ•ディランやトム•ペティと組んだトラベリング•ウィルベリーズや、エリック•クラプトンとの来日は、復活を印象付けます。
そのあとは、ビートルズアンソロジーの編纂があったり話題が多かったですが、90年代中番以降は、表舞台からは隠れて庭仕事などに精を出す家庭人であったようです。
そんな彼が亡くなったときの、彼の奥様の話が素敵でした。死んだ瞬間、彼の体から何かが抜け出てあたりを照らしたんだそうです。亡くなったのは夜らしいんですけど、部屋はその光に満たされたんだそう。
彼は、死んだとき、霊的存在になれたんでしょうね。きっとそうなのでしょう。物質世界から離れて。
一人のアーチストを追ったドキュメントとしては秀逸です。じんわりとあったかくなるような、そんな映画でした。DVDなどでぜひご覧ください。