シブくないガキの周りに、シブがき隊が流れていた日
小学2年生ともなると、もはや自我の塊ともいえる。決められた通学路を守らない(と言っても田舎すぎるくらいの田舎町だったので、通学路以外の道も広く見通しが良く、単に遠回りになるだけだったので、危険性は皆無)、帰りに友達の家に寄ってマンガ読む、お小遣いでジュースを買うなんてことをし始めていた。
ファミコンが世を席捲する前の、ほのかな、のんびりとした時期。
少年たちは有り余る時間をそんな風に、帰宅の時間を使うことに費やしていた。
この時期は、まだスポーツ少年団に加入するタイミングでもなく(ちらほらいたが)、習い事をするタイミングでもなく(お受験とは程遠い田舎町故)、時間は無限大にあふれていた。
ある日、自転車という手段を駆使することを思いついた少年たちは放課後、広場の公園に集結した。ちょっと、遠くまで行ってみよう。隣町まで行ってみよう。他愛もないことだが、あの時期の僕たちには冒険心が芽生え、何か大きなことに挑戦するかのような高揚感が漂っていた。
そして出発、、、、してみたのだが、田舎町の特色として、小さくて短い繁華街を抜けるとそこはすぐに自然が支配する地帯となる。歩道も整備されているわけでもなく、雑草が伸び放題。車もまばら。当時、まだ廃線にならず電車が走っていて、その音が遠くから聞こえてくる。鳥がさえずり、林が風にやわらかに揺れる。人の気配は全くない。いざ向かわん!と意気込んだものの、眼前の道のりははるか遠く地平線の彼方まで続き、いつその先にたどり着けるのかも判然としない。
とたんに、面倒くささが沸き起こってきた。無理して地平線の彼方の隣町に行くよりも、寝転がってマンガを読んでいた方が楽しいではないか。
冒険談はあっけなく終了し、その日はキン肉マンと午後の有り余る時間を過ごしたのだった。
全然シブくないガキである。
その時、友人宅のラジオからシブがき隊の「スシ食いねえ」が流れていた。シブくないガキの周辺に流れる、シブがき隊の歌。
平和な1日の思い出である。