掘り起こしメールの返信率が平均50%以上になっていたのでメールのテンプレートとAB検証の結果を振り返ってみます
こんにちは。
インサイドセールスの方であれば誰でも気になっている「メールの返信率を上げる」ための考え方や具体的な施策について実績をもとにお話します。
「在宅勤務で電話が繋がらない」という話をよく聞きますが、電話の場合は「在宅勤務で繋げません」「会議中で離席」といった"いまの相手の状況"に左右されやすいことは事実です。
一方、メールであれば一度送信すれば履歴が残るため、相手の業務が落ち着いた時に見てもらえたり、電話では伝えきれない情報を丁寧に分りやすく伝えることができます。
顧客の心に残り、マインドシェアを高めるメールの作成ポイントや工夫について、これまでの実績をもとにお伝えします。
3ヶ月で2倍以上改善したメール返信率
最初に実績をお伝えすると、2021年7月〜9月の3ヶ月で、顧客リストに対する返信率は平均50%以上となっています。2021年6月以前の掘り起こしメールの返信率は23%が平均値だったので、返信率が2倍以上に上がっています。
グラフ)掘り起こし対象となる顧客数、返信した顧客数、返信率の比較
顧客から返信をもらうことで、無駄な電話をすることが減ったり、空いた時間を新しいメール文面を考案したり、気づきや学びを整理したりと有効活用できます。
これは個人的な感覚なのですが、メールに返信をいただいた顧客の場合は、こちらから能動的にアプローチしているにも関わらずインバウンドと近い温度感で会話できることが多いです。現状の課題感や自社製品に関心を持ってもらったポイントなどのヒアリングがしやすく、アポイント取得後の商談が進めやすい傾向にあります。
顧客の解像度とパーソナライズ
前提として、インサイドセールスは「いかに顧客に合ったピンポイントな提案をするか」ということを強く意識しています。そのためには、顧客の解像度を高め、「このひと」というレベルまでイメージを具体化させてます。
例えば「〇〇業界」「売上◯億円以上」「従業員規模◯名以上」といった顧客の解像度では粗く、「顧客の抱えている課題」や「その課題を持つ人」が不明確なので、提案の抽象度が高くなったり、顧客ニーズとメッセージがブレることが多くあります。
Brazeでは、Brazeが解決できる課題とその課題を持つ業界・部署別にTier(優先度)分けした課題マップを作成しています。どの業界のどの部署の方がどういう課題を抱えているのか、課題の中でも優先度が高い課題はなにか、ということが課題マップを見れば分かるようになっています。
ここまで解像度を高めておくと、誰に対して何を訴求すれば良いのかといった組織やチーム内で共通認識を持てますので、最優先のターゲットペルソナを集客するにはどういったメッセージをどのチャネルで誰から発信すれば良いかといったマーケティング戦術を決める土台として活用できます。
インサイドセールスが顧客にアプローチをしていると、「ただの情報収集です」「担当は別にいます」といった断り方をされることがあるかと思います。課題マップをもとに「誰に対して何を」といったメッセージを整理していくと「見当違い」の返答をもらうことはかなり少なくなりました。
返信率の要素分解
「返信率を上げる」とひとことで言っても検証する要素は多岐に渡ります。
「顧客がメールに返信する」という行動を分解すると、「開封する」「読了する」「返信喚起される(返信したいと思う)」「返信を実行する(文章を書いて送信する)」の大きく4つの要素があります。
さらに、「開封する」のなかには「件名」「送信者名」「(メールボックスを見た)時間帯」などの要素が含まれていきます。
*以下の画像は「返信率を上げる」ための要素分解のサンプルです。
「返信率を上げる」というざっくりとした課題ではなく、どの要素が最も優先度が高いか、どの要素に対して改善施策を打つことができるかなど、要素分解することで具体的な課題やアクションに結びつけることができます。
ここから要素分解した各要素について、実際に利用しているサンプル文面を見ながら振り返りをしていきます。
・返信率を高める要素①|開封率(件名)
結論、過去のメールテンプレートを振り返った結果、「顧客名」と「サービス名」を件名に入れることが最も開封率が高い結果になりました。
例えば、顧客が利用しているシステムやクラウドツールをフックにアプローチした件名です。「サービス名」を件名に入れることで開封率63%から94%と約1.5倍程に改善されています。
また、顧客名(ラストネーム)を入れることも効果がありました。顧客名を入れていないケースが70%、入れているケースが開封率83%となっており開封率が1.2倍程に向上しています。
またAB検証はしていませんが過去に未商談、もしくは失注した顧客へのフォローアップメールについては、顧客名を件名に入れることで開封率92%と他の掘り起こしメールと比較して高い開封率を実現できています。
あまり開封率が上がらなかった事例についてもご紹介します。パーソナライズを意識しすぎるあまり、資料ダウンロードいただいた方にサービス名や顧客名を件名に入れるものの「資料ダウンロード」について触れていない件名を作成した結果、開封率は極端に下がりました。
また、同業界の事例だけを出す件名もあまり開封率は高くなかったです。提供サービスや部署単位でパーソナライズするより解像度が荒くなるため、顧客にとって印象に残る件名にはなっていなかったようです。
・返信率を高める要素②|読了率(序章)
読了率を上げるためにはメール本文の書き方や盛り込む情報を工夫しています。文面構成は序章、本章、終章の3部構成にしており、各章で役割を明確にしています。
まず序章では、メールでご連絡したきっかけや目的を示します。導入文に「Webに掲載されている事例記事を拝見して」「〇〇様が登壇したセミナーに参加して」といった文面を入れることで「あなたに送っている」という認識を持っていただけます。
・返信率を高める要素③|読了率(本章)
本章では、関心を持ってもらえるように会社・サービス概要やこれまでの事例・実績、具体的に提供できる情報やトピックの一部を伝えます。
このような文面をテンプレートとして顧客の業界や提供サービス、部署や役割に合わせて部分的にカスタマイズを行います。
例えば、「御社と同業界の主要プレイヤーが弊社のBrazeを利用している」や「実際に○○という評価を受けているので御社にも貢献できる」といった情報を添えることで「他社にはない価値を持って貴社に貢献できる」と文脈を伝えることができます。
また、「記事のコメントを拝見して、お役に立てる情報提供ができるかと思いまして」といった切り口でご連絡する場合も返信率は高い傾向にあります。
その他、なぜ"いま"連絡したのかというシーズナリティを盛り込むこともあります。業界によって異なりますが、Brazeはマーケター向けの製品のため、年末・クリスマス商戦といったショッピングシーズンなどは分かりやすい例です。
その他、市場トレンドや注目トピックをフックに面会を打診することがあります。例えば、デジタルマーケティング界隈の場合は「IDFA(Identifier for Advertisers)、Cookieの利用規制からダイレクトエンゲージメントに注目が集まっている」などのマーケターの大半が関心を持つ内容をディスカッショントピックとして掲示することも返信率を高める施策として有効でした。
・返信率を高める要素④|読了率(終章)
終章ではネクストアクションとして面会を打診します。記載したディスカッショントピックに関心があるかどうかを伺い、アポイントを設定した場合のメリットを再度提示します。
・返信率を高める要素⑤|返信喚起率
文章を読み終えたあとの返信喚起率(返信したいと思ってもらえる率)を高めるために最も重要だと思うことは「マインドシェア」です。
マインドシェアは、接触頻度×接触深度で決まると考えてます。顧客にとって心地よい頻度(接触頻度)、かつ顧客ニーズに合わせて最適化されているメッセージ(接触深度)ほど、返信喚起率は向上します。
Brazeの場合は、アプローチしてもコネクト(電話接続 or 返信)しない顧客には、1営業日以内に最低1回、メールと電話をセットでアプローチすることをルールにしています。
また、接触頻度を高めるだけでなく、きちんと顧客の心に残るように価値訴求することが重要です。例えば、2回目以降のメールは、お客様の役割や部署に合わせた具体的なディスカッショントピックや、類似サービスの詳細な成果事例を掲示したりします。
顧客でも気づいていないようなより深いニーズや課題を言語化することで、「おっしゃる通り、まさに○○が課題となっており…」といった好意的な返信をいただくことに繋がると感じています。
・返信率を高める要素⑥|返信実行率
最後の要素は、返信実行率です。「返信したい気持ちを喚起しても返信をしない」ということは、それ以上に返信をしない理由があることになります。
顧客が返信できない、しない理由の仮説を立てて、それらを回避するような情報をメールに盛り込みます。以下、具体的な例を上げていきます。
例)役割が違うから返信しない
例えば、広告などのプロモーション担当の方にCRM(Customer Relationship Management)のトピックを掲示しても関心が低いと思います。そのため、メールの内容が役割と違うようだったら関連部署の方にご紹介、メールを共有いただくような文面を盛り込みます。
前述したように各業界、各部署で感じている課題が明確になっておりますので、顧客一人ひとりに合わせたディスカッショントピックを掲示できます。ただ、それでも「部署名だけだと役割が判断がつかない」、「同じ部署でも役割が別れている」といったことがよくあるため、相手の役割を確認する一文をメールに盛り込みます。
例)まだ具体的な検討段階ではないから返信しない
「検討に向けた提案をさせてください」だとアポイントのハードルが高いと思いますので「今後の方針や施策を具体化するために取り組み事例やベストプラクティスを紹介します」などの言い回しで心理的負担を軽くします。また「提案」というキーワードを文面に入れないようにしています。
例)そもそも関心がないから返信しない
関心がないのであれば、メールを送ること自体がご迷惑になるため、早めに関心の有無を確認して相手に「しつこい」と思われる前に顧客から返信をもらうようにします。
最もインパクトが大きかった施策
最もインパクトが大きかったのは、「マインドシェア」です。顧客目線で考えられたメッセージをもとに一定の頻度で接触することで、顧客に忘れられることなく返信をもらうことができます。
実際、あるイベントで獲得したリードのフォローアップメールでは、1回目のメールの返信率は27%、2回目は40%、3回目は18%程です。2回目以降のアプローチを怠ることで、いかに多くの返信を逃しているかが分かるかと思います。
今回のフォローアップに限らず、2回目>1回目>3回目という順番でパフォーマンスが高いことが多いです。1回メールを送信して安心せずに、追加でリマインドしていくことで取りこぼしなく、商談の可能性を拾い上げることができました。
この話をする際、「あまり頻度多くご連絡してしまうと逆に相手に嫌われるのではないか」という懸念をお持ちの方もいるかと思います。
過去の実績ベースですがクレーム的な返信をもらったことは一度もなく、お断りの返信であったとしても「ご丁寧な提案ありがとうございます。ただ、現在は忙しくてアポイントを取る時間がないため来月にまたご連絡いただけないでしょうか」「私は部署異動となりましたので、後任の者にメールを共有しておきました」というような前向きな返信であることが多いです。
また、メールだけでなく電話で受付の方に伝言をお願いしたり、留守番電話を残すことをするだけで電話が繋がらない場合でも「お電話までいただいてしまい、返信できずに失礼しました」という返信をいただけることがあります。
本記事のまとめ
これといって特別なことをしているわけではなく、基本的なことを1つ1つ確実に繰り返すことで、今回の結果に繋がったと思います。
また、当たり前のことを当たり前に実施することで誰でも同水準の成果を出す仕組みはできたのですが、注意していたことが1つだけあります。それは、顧客理解が不足した状態でハウツーだけを実施しないことです。
例えば、自動でメールを送れるツールを使えば、いくらでも接触頻度を上げることができます。ただ顧客理解のない状態では「良くわからないメッセージがすごい頻度で届く」というネガティブな印象を顧客に抱かせたり、ブランド毀損を招く可能性もあります。
メールだと相手の反応が見えづらく、一方的なコミュニケーションになりがちですが、あくまで人と人との会話であることを忘れず、徹底した顧客理解が必要だと思います。顧客視点でどのようなアプローチであれば嬉しいか、リアクションしやすいか考えることで、自然と施策が確立されて結果に結びつきます。
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