"顧客の解像度"を上げることで、インサイドセールスは実行部隊ではなくインテリジェンス集団になれる
こんにちは。山梨(device0462)です
著書『The Model』の一節にもある内容ですが、インサイドセールス組織が必ずぶつかる壁だと思います。
実際に他社のインサイドセールスの方から、同じことの繰り返しになってマンネリ化している、労働集約型の働き方でキャリアが見えない、といった話を聞くこともあります。
BrazeのBDRは"最大の成果を最小の工数で実現する"ということを常に念頭におき、オペレーション改善やテクノロジーを駆使することで、BDR一人ひとりの時間価値を最大化することに努めてます。
そのなかで、1つの共通言語になっているのは「顧客の解像度」です。
今回は「顧客の解像度」を高めることが、どのようにチームの生産性向上やビジネス成長の加速に影響するかを具体的な社内の取り組み内容をもとに紹介します。
*もしかしたら、マネージャー向けの内容になっているかもしれないですが、インサイドセールスのメンバーが本記事のような視点が持てるとかなり強いBDRチームになると思ってます。
顧客の解像度を上げる意義
まず、顧客の解像度を上げる意義・目的について、大きく以下3つがあるかと思います。
限られた営業リソースのなかで最大の成果を上げる
スタートアップ企業や新規事業では、人的リソースやマーケティング予算などの資源が潤沢にあるケースの方が少ないと思います。実際、Brazeは2021年12月時点でマーケティング2人、BDR(インサイドセールス)1人、営業4人といった小規模なレベニューチームの編成です。
この限られたリソースのなかで、最大限売上に貢献する領域を見つけるため、顧客の解像度を上げるための取り組みを行ってきました。
闇雲にアポイント数や商談件数を追うやり方では営業組織が疲弊する可能性があるため、受注率・受注単価が高い顧客は誰なのか、その顧客はどこにいるのか、といった売上貢献度が大きい領域を明確にしてリソースを集中させています。
売上貢献度の高い領域は、マーケティング・BDR・営業の3部門が共通認識を持ったうえで、マーケティング施策や顧客に向けたメッセージに反映させています。
ピンポイントな1to1メッセージにより顧客の反応率を上げる
社内リソースが限られている場合は、市場シェアを獲得するための戦い方は限定されてきます。
大量にインバウンドリードがある場合は、いかに自社と親和性の高く、即商談や受注に繋がるようなリードを選定、アプローチを実施できるかが重要になります。
コンタクトがない状態からアウトバウンドの場合は、質の良いターゲットリストを作成、事前の情報収集と仮説立てをスピーディに行い、各担当者が顧客課題と自社製品のソリューションを高いレベルで理解した提案ができるかが重要になります。
インバウンド、アウトバウンドのどちらの戦略であっても深いレベルでの顧客理解と無駄撃ちの防止(売上貢献が高い領域へのリソース集中)が求められる状況です。
マーケティング&セールスが共通認識を持って施策実行と効果検証ができる
顧客の解像度が粗い状態だと、来期マーケティング予算の配分先として、どこの媒体に広告出稿しようか、来期はどのイベントに出展しようか、といったようなHow(方法論)に意識が向きがちなることがあります。
また、チーム内で顧客の解像度がバラバラだと、チャネルごとに一貫性のないメッセージを顧客が受け取ることになり、ブランドの信頼力を失う可能性もあります。
いまアプローチするべき「ターゲット」は誰か、その人はどこにいるのか、その人はどんな課題を持っているのか、何に関心があるのか、という「狙い」を明確にすることで施策考案や効果検証がしやすく、PDCAが回りやすい体制をつくることができます。
Braze BDRの"顧客の解像度"の考え方
Braze BDRでは、ターゲット市場、ターゲット市場内のカバレッジ率、企業・人単位での課題、という順番で顧客の解像度を上げてます。
Brazeは全市場、全企業が購入できる製品ではないため、「Brazeが獲得しうる市場規模」となるSAM(Serviceable Available Market)を定義しています。限られたマーケティング予算や営業工数を無駄にせず、活動効率が高い領域を把握してリソースを投下するためです。
また、SAMを把握するだけでなく、SAM内の各業界のカバレッジ率をもとにホワイトスペース(開拓の余地が残っている領域)を明確化し、さらに各業界やリードの所属部署別に課題を整理することで1to1のアプローチに繋げています。
ターゲット市場(SAM)を知る
実際にSAM(Brazeが獲得しうる市場規模)を定義するために行ったことを紹介します。今回はFORCAS(フォーカス)を利用して顧客データを分析を行いました。
FORCASは、ABMの実施状況を可視化する機能があるため、現状を正確に把握しPDCAを加速させることにも役立ちます。
FORCASだと自社で保有している顧客・商談データをインポートすることで、重要度(自社との親和性)が高い領域やその領域における既存の件数(SFA内に保有している件数)を抽出できます。Brazeでは、過去にSalesforce上の*Stage2以上まで進んだ案件をもとにデータ分析を実施しました。
Salesforce上のステージ管理については以下記事を参考にしてください。
FORCASにより売上、従業員数、業界などの様々な切り口で重要度を測定できるため、いまBrazeが狙うべきSAMを明確にして、アプローチの優先順位付けを行ってます。
*FORCASのデータをそのまま信用するわけではなく、営業の感覚や過去の実績をふまえて狙う市場を判断をしています。
また、バブルチャートで四象限にデータをカテゴライズすることで、重要度が高い領域のリード、商談を現状では獲得できているかを整理することもしています。
ホワイトスペースを知る
SAMを定義しターゲット業界が明確になったあとは、カバレッジ分析とホワイトスペースの発掘を行います。
SAMに対してどれくらいの市場をカバーできているかを把握することで、受注率・受注金額から注力するべき領域を明確にするだけではなく、ホワイトスペースを明らかにした、新たなアプローチ先の発掘や打ち手の考案に繋がります。
課題を知る
同じ企業でも部署や役職によって関心がある内容や抱えている課題は全く異なります。例えば、以下のようなケースが考えられます。
人は"自分ごと"とは思えない情報には関心を示さないことが多いため、企業単位での関心ごとや課題だけではなく、役職や部署に応じた人単位での顧客理解が必要です。
「課題を知る」には定量的な情報より実際に、様々なペルソナの顧客にヒアリングするなかで出てくる定性情報が重要になります。営業との打ち合わせとは別枠で顧客から20〜30分程のヒアリング機会を設定させてもらい、顧客のおかれている状況や感じている課題、解決に向けて何を求めているかなどを理解することを推奨します。
インサイドセールスのオペレーションが「日程調整」までの場合は、深くヒアリングする機会は少ない場合もあるかと思いますが、週に1回でも顧客の解像度を高める機会を得ることで、営業活動の幅は格段に広がります。
具体的なヒアリング内容、トークスクリプトは下記にも掲載しています。
企業単位(Account Based)から人単位(People Based)への転換
これまでのAccount Basedの考え方から、どのようにPeople Basedに転換していったかを4つのステップで紹介します。
STEP①:Brazeが提供できる価値と課題をブレイクダウン
「Brazeが顧客に提供できる価値」は何かをまずは徹底的に考え課題までブレイクダウンしていきます。
ツール自体の操作性が良いことや業務が自動化できることもそうなのですが、ビジネス成長にどう貢献するのか、お客様はなぜBrazeに投資判断をするのか、ということを深掘って整理します。
そのように磨き込まれた価値を洗い出すことで、「その価値を創出するための障壁となる課題」が見えてきます。価値の部分が洗練されるほど、それに紐づく課題も洗練されたものになり、Brazeが唯一無二の存在して顧客に価値貢献できるポイントが見えてきます。
STEP②:Brazeが解決できる課題を抱えている可能性が高い業界・部署を整理
各業界、各部署が抱えている課題とのBrazeが解決できる課題の紐付けと優先順位付け(Tier別け)を行います。人(部署)単位で課題や優先順位を整理することで、ピンポイントな提案を実現します。
STEP③:商談を前に進めるために接触すべきキーマン像を明確化
優先してアプローチする部署が決定したあとはキーマン像(最優先して接点を持つべき顧客像)をマーケティングと営業を含めてディスカッションを行いながら整理しました。
よくある大手消費財メーカーに勤める山田さん、32歳、既婚男性みたいな話ではなく、Brazeを購入する方は"どんな人"かといった志向性やバックグラウンド(過去の経験・実績etc)、ビジネスレベルや社内でのポジショニングなど、パーソナル・パブリックの両方の観点から解像度を高めていきました。
STEP④:キーマンに向けたフォローアップ、管理方法を策定
ターゲットリストとハウスリストを統合し、各アカウントごとのキーマンへの接触状況を可視化、管理します。
ハウスリストにキーマンになりえる方がいればアプローチ、ハウスリストにいない場合はアウトバウンド(LinkedInやDM)の活動を実施します。また、社内の人脈やパートナーネットワークがある場合はそちらから接触します。
顧客の解像度を上げることで提案するコンテンツも磨かれる
ここまでは、「誰に(Who)」対して、「何を(What)」、「どうやって(How)」というのなかのWhoに焦点を当てて紹介しました。
顧客の解像度を高めることで、マーケティングやインサイドセールスが実際にアプローチをする際の「コンテンツ」(What)も適切なものに洗練されます。
Brazeが提供できる価値、解決できる課題から「誰に」が明確になり、課題に対する具体的なソリューションや事例、製品機能に落とし込むことで「何を」のコンテンツになり、メールやトークスクリプトなどに活用しています。
また、こうした顧客起点のコンテンツは、メールの返信率を向上させることにかなり役立ちました。
本記事のまとめ
個人的な見解ですが、インサイドセールスで最もインパクトがある施策はリソースの再配分だと思っています。
市場、業界、企業、人の流れで全体の大枠から一点突破する領域を絞り込み、そこにリソースを集中させることで限られたリソースのなかで短期的に大きな成果を生むことができます。
顧客の解像度が粗い状態で闇雲なアプローチをしてしまうと思ったような成果に繋がらず、リカバリーのための活動量を増やす、また成果に繋がらない、といった悪循環に陥り疲弊する結果になることも多くあります。
また、「一点突破=狭い領域に集中」するということになるため、リストを無駄にしないように、丁寧なアプローチが必要となります。顧客の視点を度外視したアプローチにより、顧客の心象を悪くし将来の顧客を失う可能性もあります。
今回は、市場や顧客とどう向き合うかの「考え方」がメインの内容だったので、実際に行ってみての成果や気づきの振り返りについてはあらためて共有します。
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