「9月1日 母からのバトン」を読みました
9月1日は、なんの日か。
子どもの自殺がもっとも多くなる日。
本書で紹介されていた「平成27年版自殺対策白書(厚生労働省)」を元に作成された「18歳までの日別自殺者数」のグラフを見て、9月1日の自殺者の数の多さが飛び抜けているのは、もちろん驚きだったけれど、それよりも私が愕然としたのは、
自殺者がゼロの月が、ひとつもないこと。
私がデータの見方を間違えているのではないか。何度も表の数字を見てみるけれど、3月直前に20人を切っている以外は、毎月20人以上が自殺している。
過去40年間を足したデータのグラフらしいから、正確にはゼロの年もあるはず。それでも、40年間、これだけの子ども達が自殺を選択し、亡くなったという事実は、変わらない。
死ぬくらいなら、もう学校に行かないで。
言うのは、簡単かもしれない。
学校を休んで家にいても、心は休まらない。
不安や、焦り、絶望感。親だけでなく、自分自身が自分を監視し、不安を煽る。そんな心情に陥ることもある。
自殺を選ぶ。その前に。
自殺以外の選択肢を、伝えたい。
学校に行かなくても、安心できる。
人生の選択肢を、伝えたい。
子ども自身だけでなく、
親や周りの人達にも、伝えたい。
大人の安心は、子どもにも伝わる。
子どもを変える前に、大人から。
子どもたちに学校外の居場所・学び場を提供するフリースクール東京シューレに通う子たちが作成した動画も紹介されていた。
「学校に行きたくない。そんなふうに思うあなたはおかしくないんだよ。」
たまたまその地域に住み、たまたま同じ学校に通い、たまたま一緒になっただけ。
そんな狭い世界の、偏った価値観だけが、
この世のすべてではないよ。
学校に行かない選択肢もあるよ。
あなたの事を大切にしてくれる人たちと、
出会い、一緒にいよう。
誰か、ひとりでも、別の世界があることを、教えてくれたら、選択肢は増える。知っている選択肢が、もしひとり1つだけだったとしても、まわりに2人いたら、選択肢は2つに増える。
いろんな情報と、いろんな価値観を持った人が、たくさん増えたらいい。
いろんな大人が、増えたらいい。
学校に行かなかったけど、
人生を楽しんでいる大人がいればいい。
学校だけが、人生を決める訳じゃない。
学校以外にも、学びはある。
たくさんの前例が増えれば、
子どもも大人も、ほっとできる。
ほっとしたら、
新たなアイデアが浮かんだり、
じゃあ、あれをしてみようかなって、
試しに行動する余裕も生まれる。
許せないことは、許せない。
許せないことを、許す。
真逆のような選択。
共通しているのは、どんな感情であっても、たとえ世間的には非難されたとしても、自分は自分の感情を認めること。
自分の感情を、許すこと。
今の感情を、否定しなくてもいい。
どんな感情も、感じていいよ。
そこから、はじまる。
まずは、自分とつながろう。
そうは言っても、自分の気持ちを自覚することが、辛いこともある。
どんな状態も、自分を守るために起きている。
だけど、自分が自分を否定していたら、自分ともズレてしまって、苦しい。自分のどろどろとした怨みや怒りのような強い感情も、正当な感情だ。感じていいんだよ。自分の中にあるものを、はっきりさせてしまったら、抑えが効かなくなって暴れ出すかもしれないと、自覚するのが怖い場合もあるかもしれない。そんな時は、誰かに話そう。安心できる人でもいいし、電話相談を利用してもいい。SNS相談もある。
相談すると、自分の頭のなかや、心のなかが、見えてきて、少しずつ整理されていくかもしれない。
自分は何に困っているのか。自分は何が嫌だったのか。これから、何をしたいのか。はっきり言葉にならなくてもいい。それをそのまま、伝えてみよう。分からないこと、言葉にならないこと、それをそのまま伝えてみよう。
そのままの自分を許そう。
自分は、自分の味方でいよう。
それでも、誰にも言えないことは、ある。
大切な人を苦しめたくないからこそ、
ひとりで抱えて、ひとりで答えを出す。
それは、親との信頼関係がないからではなく、
大切だからこそ。
話せないんじゃなくて、話さない。
そんな選択をする子もいる。
それでも、その子に、親以外に、話せる人がいたら、別の選択を選べるかもしれない。生き延びて、もっと別の親孝行ができるよと、伝えたい。
日本では、子どもだけでなく、
大人の自殺者数も多い。
平成10年以降、毎年3万人を超える自殺者が続いていた時期と比べると、減っているけれど、
令和4年の自殺者数は21,881人で、
前年に比べ874人(4.2%)増えている。
毎年2万人、自殺で亡くなっている。
大人だって、誰かに相談してほしい。
大人だって、立ち止まっていい。
死んで、終わりにしたくなる気持ちも、
正直、分かる。
死なないでと言うだけなら、偽善だ。
それでも。
死ななくていい方法も、あるよ。
使える制度も、あるよ。
相談してみてほしい。
まずは、お悩みハンドブックで、検索するだけでもいい。
少しでも、必要な情報とつながれたら、いいな。
不登校経験だけでなく、さまざまな経験をしながら、たとえ挫折をしても、多様な道を選び、人生を謳歌している。そんな大人が増えたら、大人も子どもも視野が広がって、安心できる。そんな豊かな社会に住みたい。
私がいま、ふらふらしているのも、ひとつの人生の選択肢として、そういう時期を過ごす人もいるのかと、誰かに安心を届けられていたらいいな笑
「逃げることが、次の入り口に行くための前段階になっている」という話も書かれていた。出口は、次の入口かもしれない。
自分が気持ちいいと思える時間を持つ。現実の暮らしのなかでも、イメージのなかでも。「いい天気だなあ」「風が心地いいなあ」と、自然の風景や、自分の心地よさに気づくことから。あとは、高い場所から景色を見下ろしたり、海に行くのも良いらしい。
最後に。
本書で紹介されている関川省吾くんの言葉が印象的だった。
・考える力を得ること。
・本当に自分のことを好きだと思ってくれる人と出会うこと。
このふたつが、生きる力を与えてくれる。
このふたつを、ほんの少しでも担える大人でいたい。
「9月1日 母からのバトン(樹木希林・内田也哉子:著/ポプラ社/2022年)」
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