2種類の謙虚さ - 発言と行動
口では、「なるほど」、「次から気をつけます」と言う。
しかし、行動は一向に変わらない。
そんな部下を持った事はないだろうか。
このように、謙虚な発言が行動に結びつかない理由は大きく二つある。
①心からそう思っているが、やり方がわからない。
②心の底では(意識的・無意識的に)大したことではないと思っている。
もちろん①の方が、扱いは楽である。
多少時間がかかっても、やり方を教えてあげれば良い。
②は少し厄介と言わざるを得ない。
表面上は謙虚なのであまり強く出られない、もしくは強くでても表面上の謙虚さで「次から気を付けます」と流されてしまう。
まさに、暖簾に腕押し状態。
上司としては、どう接するべきか八方塞がりとなってしまう。
今回はこの②に焦点を当ててみる。
謙虚さには2種類ある
ここで改めて、謙虚さには2種類あることを認識しなければならない。
一つは発言の謙虚さ、そして行動の謙虚さである。
この2軸で4つの人物像に分けることができる。
タイプA.発言も行動も謙虚
タイプB.発言は傲慢、行動は謙虚
タイプC.発言は謙虚、行動は傲慢
タイプD.発言も行動も傲慢
タイプAは優等生。当然しっかり指導すれば自然と伸びる。
タイプBは一見問題児だが、こちらも見放さずにしっかり指導を続ければエースに育つ可能性を秘めている。
タイプDは問題外として、最も厄介なのは実はタイプCだ。冒頭の例は、まさにこれである。
発言の謙虚さが気に入られがちな日本
日本の社会では発言の謙虚さが重視され、評価される傾向にある。
そのため、発言が謙虚な人が「かわいい奴」として好意的に受け止められやすい。
しかし、行動の謙虚さが伴っているか(タイプCでないか)注意深く観察する必要がある。
行動が伴わない場合、いくら発言が謙虚でもパフォーマンスは一向に上がらない。
逆に「生意気な奴(B)」を、発言だけで毛嫌いしていないかも注意が必要である。
ビックマウスと言われるスポーツ選手の多くはこのタイプBだ。(サッカーの本田圭佑選手等)
彼らへの評価は謙虚という形容詞から程遠い。
しかし誰よりも自身の課題を理解し、努力を惜しまない。
発言は謙虚ではないが、行動は謙虚そのものである。
この様にハイパフォーマーの多くは、「タイプA.発言も行動も謙虚」、又は「タイプB.発言は傲慢、行動は謙虚」であることが多い。
行動の謙虚さを促す方法
行動が謙虚にならない限り、努力をしないし、改善もしない。
結果、成果もでない。
そのためマネジメントとしては、タイプCをいかにタイプAに誘導するかが腕の見せ所である。(あえてタイプBにする必要はないし、タイプDは採用段階で出来るだけ見極めたい。)
タイプCの特徴は、自ら行動しようと思うほどには、言われた事を意識的、無意識的に重要視していないという点である。
上司からのアドバイスも、どこか忘れてもいいと思っているし、心の底では大した事だと思っていない可能性がある。
ここで避けたいのは、むやみやたらに叱責することである。
なぜかというと、上司のアドバイスをどこか大したことだと思っていない(可能性がある)人に更にアドバイスをしても効果は薄いし、表面上は謙虚なので弱いものイジメ・パワハラになるリスクすらある。
本人の発言を使う
ここで注目したいのは、タイプCは少なくとも表面上は謙虚なので、発言上は反省し自身の課題を認める傾向にあるということである。
なので、その本人の発言を徹底的に使用する。
つまり、内省させ、自身の課題を自分で考えさせ、それでも気付いていない部分があれば補足をする。そして合意をする。
その後のフィードバックは全てその合意事項をベースに基づいて行う。
つまり、「どうして同じことを何回言ってもわからないの?」ではなく、
「この前自分で課題だと言っていたポイントの改善度具合はどう?」
「もしうまくいっていない場合はどんなサポートができるかな?」
という様に、本人が謙虚な姿勢で挙げた自身の課題を改善するサポートをするというアプローチを取る。
多くの人は、他人から「こうしなさい」と言われたことよりも、自分で「こうします」と言ったことに責任を感じる傾向にある。
なので、上司としてのアドバイスを伝えるというアプローチから本人の内省を徹底的に促し、それを実現するサポートをするというアプローチに変えてみると少しずつ変化がみられるかもしれない。