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はなぶさのオススメ作品

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ショートショート:愛してるゲーム

ショートショート:愛してるゲーム

「愛してるゲームしない?」

学校の休み時間、隣の席の男子がゲームに誘ってきた。

ああ、互いに愛してるって言い合って、先ににやけた方が負けってやつか。

そう言えばそんなゲームがあったなと思いながら、暇だった私はいいよと二つ返事で返した。

「じゃあ俺が先攻ね」

「愛してる」

私は眉ひとつ動かさない。

「次は私ね」

「愛してる」

すると彼の口角は徐々に上がり、最後にはにやけた。

強い

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ショートショート:僕と彼女と軽トラック

ショートショート:僕と彼女と軽トラック

大学1年の秋。
遂に手に入れた運転免許証。
遂にと言うのは別に何度も試験に落ちたからと言うわけではない。
僕の住む地域は、福岡の中でも群を抜いた田舎なのだ。
一軒家なのは嬉しい。
ただ、スーパーはおろかコンビニさえない。
あるのは海、山、田んぼ、そのくらいだ。
最寄駅だって、歩いて行こうものなら徒歩で2時間はかかる。
自転車でも30分だ。
そんなパスポートが必要なのかと思うほどの秘境に住む僕にとっ

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ショートショート:残り香

ショートショート:残り香

冬。
30歳になった私は、休日に夫と衣替えをしていた。
着れるものは取っておく、着れないものは燃えるゴミ袋に放り込む。
そんな作業を繰り返してそろそろ2時間が経っただろうか。
「ふぅ、それにしてもすごい数の服だな」
「ごめんね、ほとんど私の服なのに手伝ってもらちゃって」
「いいんだよ。どうせ休みなんだし。はい、これ最後の段ボールね」
うんと言って受け取った段ボールには、どこか懐かしさを感じた。

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ショートショート:相棒との夢

ショートショート:相棒との夢

コンコンコン
「はーい!」
301号室のドアを叩くと、いつも元気のいい返事が返ってくる
「よう、生きてるか?」
「おう、絶好調だぜ」
海斗は白い歯を見せて笑った。
さらさらした春の小川の様な心地良い風が病室のカーテンを優しく揺らし、その隙間から差し込んだ光が海斗の顔を明るく照らす。
「包帯ぐるぐる巻きで何言ってんだか」
僕は荷物を机に置き、鞄から紙を取り出した。
「はいこれ、今日の授業のコピー」

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ショートショート:3人の賢者

ショートショート:3人の賢者

「これでよし!」
クリスマスまで残り1週間を切った。
やっと欲しい物が決まった僕は、サンタさんへ手紙を書いた。

ルンルン気分で玄関に手紙を置くと、同時に父ちゃんが帰ってきた。
「ただいまーっと」
「おかえり父ちゃん!」
「お、なんだこれ?」
「サンタさんへのお手紙だよ!」
「スーパーファミコンとマリオのカセットか。これはちょっと欲張りすぎじゃねぇか?」
「そんな事ないよ!僕、今年いい子にしてたも

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ショートショート:最初で最後のお願い

ショートショート:最初で最後のお願い

とある日曜日。
僕は今、駅前の柱に寄りかかって人を待っている。
今日は同じ陸上部で1つ年上の先輩とデートをする約束をしているのだ。
既に約束の8時を20分過ぎているが、一向に連絡はつかない。
暇を持て余した僕は、しばらく人間観察でもしながら待つことにした。
スーツ姿のサラリーマンに、部活姿の中高生、酎ハイを片手にベンチでくつろぐ中年の男。
周りを見渡すと色んな種類の人間がいる。
と言っても世間はも

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