親に許可が必要ですか?
長女が中学一年生のとき、
こんな出来事があった。
入部した吹奏楽部で、
トロンボーンという楽器を担当。
金管楽器の一種で、
「大きなトランペット」とも
呼ばれている楽器。
スライドを伸び縮みさせて音程を変える楽器。
トランペットや、
サックスと同様、
人気のある楽器だった。
入部して、
ゴールデンウイーク、
夏休み、
と、毎日練習を重ね、
ようやく
ちゃんと音も出せるようになったとき、
ようやく、
楽しくなってきたとき、
顧問の先生から
「今日からチューバね」
と、一言。
長女は
「はい」と返事したらしい。
しかし、
強制ではなかったにも関わらず、
毎日欠かさなかった朝練に行かなくなった。
放課後の練習は
参加していたようだったが、
ピアノのレッスンの日は
部活を休むようになった。
今までは、ピアノの先生に無理を言って、
レッスンの時間を
部活終了後に
してもらっていたのに。
トロンボーンから
チューバに
なったことが原因なのでは?
私は顧問の先生に聞いた。
「先生、うちの子は
どうしてこの時期に
楽器変更になったんでしょうか?」
先生:
「○○さん、○○さんの下のお子さんは
確か・・・野球をしていませんでしたか?」
私:
「ソフトボールをしています。」
先生:
「ソフトボールの監督が、
ポジションを変更するときに
親に理由を説明しますか?
親に許可を取りますか?」
私:
「・・・・・・」
先生:
「どうぞ、見守っていて下さい。
○○ちゃんは、
ちゃんと、
そして、
必ず、
今の状況を
乗り越えますから。」
先生の言葉通り、
長女は
いつの間にか
チューバに夢中になっていった。
チューバは金管楽器の中で
もっとも低い音が出る。
低音パートの仲間と
練習を通して、
今でも(大学四年生)
進路は違えど、
付き合える友人も出来た。
顧問の先生が異動で
他の学校に行かれる前、
教えてくれた。
「○○さん、実は、あのタイミングで、
(長女がトロンボーンからチューバに変わったとき)
チューバの三年生が
家庭の事情で
退部したんです。
三年生の、低音の要が抜けては
吹奏楽としては成り立ちません。
だから、
小さい頃から
音楽(ピアノ)に慣れ親しんでいて、
トロンボーンで
吹奏楽(チーム音楽)の楽しみも知り、
身体的にも、肺活量的にも、
(チューバは9~10キロくらいある楽器です。
中学生女子にはとても大きく、重たいです。)
即戦力として、
まかせられるのは、
○○ちゃんだと判断したんです。
正解でしたね。
とてもいい低音パートのチームが出来ました。」
普段の演奏会では
あまり目立つことのない、
低音域のチューバと、
中音域のユーフォニアムの
アンサンブルの機会を
先生が作ってくれたことがあった。
それは野外の音楽堂でのイベント。
いろいろな想いを、
さまざまな環境を、
乗り越え、
響かせた、
あの夏の、
あの音が、
忘れられない。
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