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児童書「レ・ミゼラブル」を読む
完訳版読解チャレンジ中ですが、図書館へ行く機会があったので、児童書の方も読み返してみようと思います。
読んだのはこちら
ポプラ社
ポプラ世界名作童話 23
レ・ミゼラブル
V.ユゴー/作
三田村信行/文 狩野富貴子/絵
作品のボリュームと対象年齢
あとがき2ページを含む全177ページ
ふりがなは数字以外全てにあり
文字の大きさは現在小2の息子の国語の教科書と比較すると下巻の終わりの方くらい
出版社のサイトには6歳〜小2を対象と書いてありますがそれはちょっと難しいんじゃないの?と思いました。内容も文量も今の我が子(小2男子)に読めるとは思えな…いや読書好きな子なら読めるのかな。
挿絵
色鉛筆風の優しいイラストで、デフォルメは強くなくて個人的には好きです。
近年童話系や歴史系もキラキラ漫画アニメ顔で描かれがちで、そういった方が子供ウケは良いのかなぁと思いつつもなんだかしっくりこないなと思っていたので、児童文学らしい絵で違和感なく読めました。
挿絵の数は5ページに一回くらいでそこそこあって、キャラクターの見た目の説明の補完という感じ。新キャラ出てきたらちゃんと挿絵入れてくれる。やさしい。
一点、コゼットをテナルディエの宿屋から連れ出す際のドレスのカラーはピンクではなく黒にしていただきたかった!せっかくカラーの1ページ絵(表紙も)なのに!喪服だからとかいう理由の説明を本編でカットしているからカラー指定なしなのだろうけど、理由の説明しなくてもいいからイラストで着せといてほしかった。
調べたらミュージカルの新演出でも喪服ではなくなってるそう…なんで変えちゃうんだ…?
カットされたと思われるところ
完訳版からは大幅カットはあたりまえなので、私の脳内のレミゼ知識と比較して「あれ入ってないな?」「ここ表現変えてるな」というところの感想です。
まず児童書として一番心配なファンティーヌが娼婦になるくだりはしっかりカットされてました。髪を売って歯を売って、病気になって、歩いてたらいきなり背中に雪を入れられて…という感じ。そうなると雪入れ男のほうが奇行だろと思いますが…ボロボロの女をからかったというような雰囲気で濁しましょう。
エポニーヌの恋もなし。名前も無し。ジョントレッド家(テナルディエ家)の"あねむすめ"として物乞いの手紙をマリウスに渡すだけ。一応「(お金を恵んでくれて)ありがとう、なんでもするわ」「じゃあ(コゼットの)家を探して」のくだりはあるがそこにエポニーヌからマリウスへの恋心を感じるほどではなかった。対象年齢のこどもには敵わぬ恋はちと難しいか。ミュージカルのオン・マイ・オウンのイメージ強すぎるのでちとさみしい。
ちなみに今私が完訳版で一生懸命読んでいるミリエル司教の説明文はあたりまえに全カットでございました。たいていはジャン・バルジャンが街に来たシーンからで、ミリエル司教の家に行ったところで軽く家族構成説明される程度だわね。
意外と書かれてると思ったところ
私の中で一番記憶に新しい2012年の映画(ミュージカルベース)と比べると、この一冊の薄めの児童書のほうがよっぽど詳細に書かれてました。
ひとつはマリウスとテナルディエのつながり、ワーテルローの戦いでのお父さんの命の恩人(とお父さんが思い込んでマリウスに伝えた)ので簡単に警察に通報できない気持ちや、最後もおなさけかけてあげる理由がちゃんとある。マリウスの一人暮らしの部屋の隣がテナルディエ家というシーンもちゃんとある。ここ結構好きなシーン。だれか助けに来て〜いや警察はこないで〜呼ばないで〜からの「逃げた男が一番大物だったのだ…!」すき。
あと裁判で真実を告げた後、映画だとファンティーヌの病室で看取ってからジャベVSジャンのバトルで窓から飛んで消えるけど、こちらでは約束通り一旦捕まり、船での刑務作業中に海に落ちて脱走→コゼットお迎えになってて無理矢理感がない。
まとめ
かなりギュッとまとめてあり、優しい言葉とマイルドな表現にはなっているけれど、大事なところ押さえてあって映画よりは情報が多いので充分だなという印象でした。大人ならサクッと読めるので時間ないけどミュージカルや映画の補完にとりあえず、ならあり。
しかし良い話なんだけどわかりやすい勧善懲悪ではないし、テーマが重くて時代背景もこどもにはピンとこないだろうしで、文章の対象年齢は低くても話が理解できるかは小学校高学年以上じゃないと厳しいかな〜。
図書館の児童書コーナーにはもう一種類、全5巻セットもあったのでそちらも気になるところ。児童書とはいえ5巻はけっこう長くない?小学生でも読書好きなタイプじゃないと読もうと思わなそう。どのあたりの情報が増えるのか気になるので比較してみたいです。
完訳版読解チャレンジのほうも頑張りたいと思います!下記マガジンに記事をまとめました。