MBA Essentials 2021<総合コース>春 第2回 経営戦略
「全然戦略的じゃないのに<戦略的>って言っちゃってない?」「流行り言葉を並べているだけになってない?」
そんな企業に対する問いから本講義がはじまりました。
一緒に学びましょう!
第2回 概要
経営戦略 ~戦略的とは何か?~
講師:山田 英夫 先生
「戦略」という言葉は、企業内で多用され過ぎています。「戦略」は、書類を重厚に見せる枕詞ではありません。本講義では「戦略的」である条件を列挙し、戦略のもつ特徴を理解していきます。日本企業の豊富な事例で説明していきます。
結論
全体を見て、重点を絞って、顧客を見ながら、競争を考えて、事実をベースに、利益を上げる。6つ全部そろって、はじめて戦略的であると言える。これが結論です。本講義における戦略の定義と言ってもよいでしょう。
❶全体志向 ❷重点志向 ❸顧客志向
❹競合志向 ❺事実志向 ❻利益志向
今回の講義は「戦略の立案手順」は置いといて、「戦略的な考え方」が焦点です。
では、6つのポイントをそれぞれ見てみましょう。
その前に
戦略と混合してしまうものとして以下があります。違いを確認しましょう。
質疑応答で「戦術を積み重ねたら戦略になるのか?」という問いがありましたが、これはNOです。
❶全体志向
✅MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)
ミーシー/ミッシーと呼ばれる日本語だと「モレなくダブりなく」という考え方です。基本ですね。(と言いつつ、私は仕事上では使わない言葉です)
とはいえ、「100%モレなく」するのは現実的ではなく時間も要します。90%~95%をおさえておくのがよいと先生は言います。
✅MECEなフレームワーク
PEST/SWOT/3C/4P/5フォース/7S・・・
いろいろフレームワークがありますが、「フレームワークを暗記することが戦略ではない」です。
先生は「フォークとナイフ」に例えていました。
どんなときに何を使うか、使い方を知ることが大事です。
例えば、SWOT。
一番よく使われているイメージですが、SWOTだけをやっても戦略はできません。SONYが「プレステをつくるとき」と「VAIOをつくるとき」で同じSWOT分析になるか?というわかりやすい問いがありました。
フレームワークを適切に使って「全体」を見ましょう。
✅戦略のツボ
戦略の整合性を見たときに、「資源」「プロセス」「顧客価値」が特定の「ツボ」に集まってくるそうです。
事例として、サウスウエスト航空があげられて、ここの場合は「15分ターン」がツボです。このツボに以下が集まります。
(顧客価値)安い料金、顧客サービスの限定、・・・
(プロセス)従業員が複数業務、航空機の稼働率、・・・
(資源)ボーイング737のみ、マルチタスク従業員、・・・
❷重点志向
✅優先順位をつける
「なんでもかんでも全部やる」というのは無理です。
加えて、やりたいことにはトレードオフが存在するのが常です。
なので、優先順位をつけます。
この優先順位ですが、トップが変わるたびに変えるものではありません。
✅ヤマト運輸の事例 (トレードオフ → トレードオン)
ヤマト運輸は「サービス第一、利益第二」でやってきました。
再配達をやっていると、顧客はうれしいですが2回行く必要があるのでコストがかかります。つまり、トレードオフがありました。
しかし、あるサービスをはじめてから「サービス第一、利益第二」を言わなくなったそうです。
その、あるサービスとは何でしょうか?
正解は「時間指定」です。顧客のサービスのためなのに、何度も届ける必要がなくなったのです。トレードオフがトレードオンになりました。
ただし、これは「まれ」な例です。基本は優先順位です。
✅機能分野の選択と集中
研究開発>購買>製造>物流>販売>アフターサービス
というバリューチェーンがあったとして、無理やりにでも全部を自社でもつことがよいというわけではありません。
自分の会社は何で競争するか?(コアコンピタンス)
これを考えて「社内でもつもの」を考えます。他は外(安くて得意としている会社)から買ってきます。
❸顧客志向
✅顧客は誰か?
例えば、とある認知症病院では、患者に加えて介護者を顧客と考えるそうです。病院内で「見舞いに来た人が泊まれる設備をつくる」なんて発想は、そういう考えでないと生まれなかったかもしれません。
✅顧客価値
ある倉庫業者では、保管をするのではなく「保存(ワイン、美術品等を適正管理)」をするという真のニーズに応えています。
また、ある工具メーカーはコモディティ化した工具製造販売からリースへと事業を切り替え、必要なときに整備済みの工具を貸し出すことにしました。
これにより、ユーザーは古くなった工具をだましだまし使うことがなくなり、事故が減ったそうです。これは顧客の経済性の例です。
✅Customer's Customerのニーズ
直接の顧客だけを考えるのではなく、1つ先、2つ先のユーザーのニーズを考えることもときには重要です。
✅顧客の経済性の例
顧客価値のところで出た工具メーカーとは別の事例で、「地下鉄の蛍光灯は何故NECまたは東芝か?」という話がありました。
これは「寿命の信頼性(絶対○年もつ)」だそうです。
寿命が長い製品であっても、100個に1個はハズレがあるような製品では困るお客さんもいます。
❹競合志向
✅競合は同業他社だけではない
例えば、金型業者の新しい競合として3Dプリンタという存在が出てきました。いわゆるディスラプターと呼ばれる存在です。
似たような話で、破壊的イノベーションの講義を受けました。
✅横の競合と縦の競合
1世代前
↓ 代替
現世代 ← 世代内競合
↓ 代替
1世代後
事例としては、テレビ(モニタ)がわかりやすいです。
液晶が出てきたころは、ブラウン管がまだいて、次世代の有機ELが潜在的にはいたわけです。
横だけじゃなくて縦も見ないといけないのです。
❺事実志向
✅固定観念は捨てる
何ごとも「思い込み」はよくありません。
銀行では「総合口座の客は良い客だ(利益を生む)」と思われていた時代がありました。測定(調査)したわけでもないのにそう思い込んでいたのです。
✅測定する
測定できる、ということは大事です。
測定して事実がわからなければ改善できません。
CS(Customer Satisfaction、顧客満足度)が流行したのは1992年、30年近く前ですが未だに使われるのは「測定できる」からです。
※個人的にはCSは微妙で、NPS(ネットプロモータースコア)に置き換わると思ってますが。
✅事実をどう判断するか?
事実がわかったとして、それを「どう判断するか」は非常に重要です。
有名な事例で「アフリカ人は裸足」というものがあります。
Aさんは「ここでは靴は売れない」と判断し、
Bさんは「無限の市場だ!」と判断しました。
先生は「いいメガネをかけよう」をおっしゃっていました。
中からは見えないけど、外からだと見えてくるものもあります。
視野を広げることは大事ですね。
❻利益志向
✅低下しつづける日本企業の利益率
参考グラフのリンク
非製造業と比較したら製造業の落ち込みがすごいですね。
昔は「高シェア→高利益」は、正しかったのですが今は違います。
また、「生き残れば儲かる」というのも今は通じません。
✅ビジネスモデルの見直し
「儲けのしくみ」であるビジネスモデルは常に見直しをする必要があります。
ビジネスモデルは過去にも学びました。
その他(質疑応答にて)
①戦略は現状の枠内で考えるべきか?
→枠内だと横並びです。
・オーバーエクステンション(ちょっと背伸び、ちょっと枠をこえる)
・オープンイノベーション(外部の資源をつかって時間を越える)
がキーワードとして出てきました。
②リーダー企業から逆転するには?
→リーダー企業のやっていないこと/ペイしないことをやる。
③B2B2CのときにBを考えるかCを考えるか?
→リーダー企業はBから入ってCを考えるところが多いので、差別化するにはCから考えるといいかも。
最後にもう一度
全体を見て、重点を絞って、顧客を見ながら、競争を考えて、事実をベースに、利益を上げる。6つ全部そろって、はじめて戦略的であると言える。
本日の学びはここまで。また来てください。
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この記事を書いている「高橋ひろあき」とは?