『何のために「学ぶ」のか』(2/2)
7人の先生方がご自身の専門分野から見た「学問」を紹介する本書。今回は後半です。
先生方が口をそろえて言う「大事なのは知識じゃない」。
それはどういうことか?
一緒に学びましょう!
茂木健一郎 脳🧠の上手な使い方
脳には「取扱説明書」がない。
「頭がいい」とは「努力の仕方を知っている」ということ。
脳を知って「脳をうまく使いこなす」ことが大事です。脳をうまく使うには、ドーパミンをよく出してあげます。
このドーパミンは、少し自分には無理かな、と思うくらいのレベルのことに挑戦しクリアできたときに、一番よく出ます。ドーパミンが出ると、問題を解く神経回路のネットワークが強化される。この強化学習のサイクルを日々続けることが、脳をうまく使うコツなんです。
このときに設定する挑戦課題ですが、押しつけられたものだと自分の今の実力に合った難易度かどうかわかりません。だから、自分で自分の課題を設定します。
ドーパミンに関して大切なことがあります。
それは絶対に「他人と比較しない」ことです。
ドーパミンが出るのは「自分にとって進歩」があったときです。「誰かと比べて優れていた」ときではないのです。だから、自分がコントロールできることだけ見る必要があります。
先生おすすめ 自分で自分に課題を設定する方法
①「タイムプレッシャー法」
自分で制限時間を設定して、達成できたら徐々に時間を短くする。
②「タイガージェットシン式勉強法」
何時になったらやろう、ではなく「すぐやる」。
理想と情熱さえあれば、政治家・起業家・科学者・小説家、なんだって素晴らしい人物に絶対なれる。理想も情熱もなくしてしまった、だらしない大人たちに任せておくことはない。
情熱は苦労から生まれる。「苦労は買ってでもせよ」と昔からことわざにいうのは、ゆくゆくは自分のためになるからだ。
大人も学んで、子ども達から「だらしない大人」だなんて思われないようにしたいものです。
本川達雄 生物学を学ぶ意味
まともな生き物として生きていくためには生物学を学ばなければならない。
生物学を学んだことがなかったので、新しく知れることが楽しかったです。例えばこんなこと。
・動物の心臓一拍の時間は、体重が10倍になると2倍になる関係がある。
ハツカネズミ0.1秒、ネコ0.3秒、ヒト1秒、ウマ2秒、ゾウ3秒、クジラ9秒
・ゾウの寿命は70年くらいだが、ハツカネズミは3年未満である。
生き方も世界も違う。
しかし、一呼吸する間に心臓が四回打つというのは変わらない。
・70年生きるゾウも2年で死ぬハツカネズミも、心臓の打つ回数は15億回で、呼吸が3億回なのは同じ。
今の日本人には永遠という発想がない、と言います。いろんな生物について知ることで、時間の概念や永遠についてこんな考えをもたれたそうです。
時間はまっすぐ進むもの、と考えれば私たちの一生は一回きりだ。
しかし、子どもというかたち、孫というかたちで私が残る。
生物はずっと続いていくのだ。
生物学はこういう見方を提供してくれる。だから生物学を学ぶと永遠が得られる。心が落ち着くのだ。
古代の日本人は、仏教であの世の永遠を保障し、神道でこの世の永遠を保障し、両方の永遠で安心して生きてきた。
先生から見た、学問の楽しさとは、
知る楽しさをもとに、世界を知り、自分自身を知り、それによって世界の中で自分の位置を知る。ということです。
精一杯生きて安心して死んでいけるような人生を送りたいのであれば、ものの見方を身につけなければならない。だから学問が必要なのだ。
小林康夫 学ぶことの根拠
学ぶことは、自分をつくり替えること。
①世界を変える。
世界を変えうる力とは何でしょうか?
・「知らない」力
大事なのは「知っている」(知識)ではない
・自分の世界を自分でつくり直していく力
全体の中の特異点をつかみ、そして全体をもう一回つくり直す
・もう一度やり直す力
できあがったものを学びながら、それを超える新しい世界をつくる
・学ぶ力
自分をつくり替え、世界をつくり替える感覚が一生の力となる
②「間違えてはならない」は間違いだ。
学校での「間違えてはならない」という雰囲気は、世界を変える力を失わせます。「間違い」から世界を変えよう!
③自分の感覚をつきつめる。
「好き嫌い」や「自分にしかわからない小さな違和感」の感覚は大切にしましょう。
「どうして好きか」「どうして嫌いか」「この違和感はなぜなのか」を一歩踏み込んでよく考えることが学びや新しい発見の第一歩になるからです。
④学びは完成しない。
学びは決して完成しない。その意味で人間とは「途上の存在」にほかならず、常に道半ばなのです。
そう聞いたときに、「じゃあ学ぶのをやめる」か「それでも学びつづける」かの選択肢が現れます。もちろん私は後者ですが、世界の中でも後者を選ぶ人が多くなって欲しいですね。
鷲田清一 「賢くある」ということ
わかっていないことをきちんと知る。
①無能になってしまった現代
便利な世の中です。生活のあらゆる面でプロがいて、その人たちに任せてしまえばよいのです。楽ですね。
一方でこんな見方もできます。その分、何かを「失った」。それはわれわれ自身の能力です。「一人では何もできない無能の状態になってしまった」「自分が持つ技や能力を磨くことを忘れてしまった」のです。
②自分で決める
自分で物事を決めて担う「市民」ではなく、ただのサービスの「顧客」に成り下り不満と文句ばかりになった。たしかにそうかもしれません。
まわりの情報に振り回されず、しっかりと自分の考えで決めていきたいですね。
③答えのない問い
「なぜ生きているのか」「自分の存在とは何なのか」
だれもが、この問いに向き合って生きています。答えはありません。大切なのは、問い続けることです。
人生でほんとうに必要とされるのは、一つの正解を求めることではなく、あるいは正解などそもそも存在しないとろこで最善の方法で対処する、という思考法や判断力なのです。
④「よく生きる」
これを、ものを考えるときの軸にする。すごくシンプルなのに忘れてしまっていますね。常に心に留めておきたい言葉です。
まとめ
先生方が口をそろえて言う「大事なのは知識じゃない」。では、大事なのは何だったのでしょうか?私が選んだのは以下の言葉です。
外山滋比古 自分の責任で、自分の力でものを考えて行動する。
前田英樹 自分の力で学問をし、何かを得、生み出す。
今福龍太 わくわくする未知の世界を冒険する。
茂木健一郎 自分で自分の課題を設定し、成長しつづける。
本川達雄 世界を知り、自分の位置を知る。
小林康夫 学ぶことで、自分をつくり替え、世界をつくり替える。
鷲田清一 「よく生きる」ために問い続ける。
本日の学びはここまで。また来てください。👋
読書期間 2021/03/03-2021/03/18
初版発行 2015/01/10
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