副業禁止による「茹でガエル現象」と副業サラリーマンの「税金の落とし穴」
お題「#天職だと感じた瞬間」で、税金問題をイラスト記事化する執筆業をご紹介します。その瞬間とは「イラストイメージが固まった時」です。
税金の内容は難解でイメージがつきにくいもの。税金のイラスト記事にする際、より「広く読者の皆さんに関心」を持ってもらい、しかも「情報の鮮度が高い」のであれば、ベターですね。税理士の使命である「納税義務者の信頼にこたえ、適正な実現を図ること」につながると信じています。
以下、記事をご覧頂き「趣味だけど本気でイラスト」によって税金問題を読者に伝えようとする熱意を感じて頂ければ嬉しいです。
今回記事のキーワードは「サラリーマンの副業」。副業収入を得てるサラリーマンの皆さんが今後、見直さなければならない論点をご紹介します。具体的には、先月8月のパブリック・コメントの募集で所得税の通達が改正され、サラリーマンの副業収入で300万円以下の収入だと、原則として、事業所得はダメで、雑所得として扱い、場合により「節税」できなくなる可能性が出てきました。
つまり、今までサラリーマンが赤字の事業を始めて「節税」を図る事例が多かったので、国税がメスを入れ始めたという訳です。
では、じっくりイラスト解説していきます。一緒に学びましょう!なお、今回は「法学部の授業でも使える教材風」に仕上げてみました。
1.サラリーマンで確定申告する場合とは?
サラリーマンには「源泉徴収制度」があって、税金計算は全て会社がやってくれて、通常、自ら確定申告の手続きをしなくて済みます。もし、この辺の知識をもっと知りたい場合は、ぜひ次の記事”サラリーマンの確定申告「はじめの一歩」・・・そして脱サラへ”を覗いて見てください。「所得税の基礎知識&申告書の書き方」もマスターできるように記事を描いています。
サラリーマンでも、確定申告しなければいけない例外があります。下図①の「③給与・退職所得以外で20万円超」のケースが「副業収入を得ているサラリーマン」が確定申告しなければいけないケースに当てはまってきます。
所得税には「10種類の所得区分」がありますが、詳しくは前掲記事”サラリーマンの確定申告「はじめの一歩」・・・そして脱サラへ”に割愛するとしまして、サラリーマンが副業収入(所得20万円超)を得たとき、「事業所得」か「雑所得」にするか迷われた方も多いのではないでしょうか。今後の実務の方向として、副業サラリーマンに国税のメスが入り、300万円以下の収入の場合は「雑所得」として扱うという訳です。
2.今までのサラリーマンの「節税」テクニック
上図②で「事業所得」と「雑所得」の計算の仕組みは基本同じと説明しましたが、どうやって、今までサラリーマンが赤字の事業を始めて「節税」を図っていたのでしょうか?ポイントは「計算の仕組み」にあります。
収入金額 - 必要経費 = 所得金額
もし「必要経費」が「収入金額」を上回ると「所得金額」はマイナス、つまり赤字になります。赤字の所得がある場合、一定の順序により、他の各種所得の金額を控除することができることを「損益通算」といいます。
赤字の所得がある場合、「事業所得」は他の所得と損益通算できますが、「雑所得」では損益通算できないという違いがあります。副業で赤字の「事業所得」がある場合、本業の「給与所得」から、赤字分を控除(損益通算)して「節税」できる仕組みです。
よって今後の実務の方向として、副業サラリーマンに国税のメスが入り、300万円以下の収入の場合は「雑所得」として扱うという訳です。ここで実務に影響を与える「通達」の制定について、見ていきましょう。
3.そもそも通達は法律ではない?!
ところでパブリック・コメントの意義について、次の説明があります。ちょっとマニアックな内容になりますが、何卒お付き合いください。
冒頭で掲げた問題のパブリック・コメント募集時の改正案を見ましょう。なお、このパブリック・コメントの募集は先月8月31日に意見募集は終了していますので、ご了承ください。
上図④の赤枠部分は私の方で括りましたが、その詳細です。
読みにくいですよね~。いかにも「ザ・法律」って感じがします。でも、そもそも通達は法律ではありません。会社内で発行されている「通達」が同社内のサラリーマンのみを拘束する規定同様に、税務署職員等、国税側を拘束する規定なんですね。
ところで勘の良い方は、当通達の末尾「・・・業務に係る雑所得と取り扱って差し支えない」とあるので、我々納税者として「強制されない」印象を持たれるかもしれません。しかも、通達は法律ではありません。はたして納税者には関係ないのでしょうか?
実は、大いに関係あります。主語を税務調査をする立場に置き換えて読んでみてください。「実務は通達に則る」との立場のもと、副業サラリーマンを相手に、この通達を根拠に否認、つまり「事業所得はダメで雑所得にしろ!」と言う実務がまかり通ってしまう訳です。
納税者として不服なら、極端な話、国を被告に裁判で戦わざるを得ない、という「厳しい現実」があります。もし個別事案のご相談がある場合は、契約されている税務顧問を利用されるのも一つの方法です。
4.副業禁止の「茹でガエル化」を避けよう!
以上、如何だったでしょうか。今後、副業サラリーマンにも国税のメスが入る可能性を、パブリック・コメント募集で示された通達の改正案を通してじっくり解説してきました。最後に「副業に関する個人の想い」をご紹介します。
おそらく「副業解禁」で、事業等されている副業サラリーマンの方は、ご自身の確定申告書の見直しに入られると思います。他方で会社の「副業禁止」規定で副業していないサラリーマンにとって、税制改正などは特に関係ないかもしれません。・・・本当にそうでしょうか?
今は「副業解禁」が世の中の流れ。他方、自社の「副業禁止」を名目に「情報感度」を下げるのは勿体ないと考えます。言葉が悪いかもしれませんが、ひょっとしたら「井の中の蛙」状態になり、最悪の場合「茹でガエル」現象にならないか心配です。「副業禁止」を掲げる企業にも各々事情がありますが、自身のキャリアに責任を持つのは「自分」。間違っても「会社」ではありませんから。
さすがに「副業禁止」規定に違反してまで副業しよう・・・は絶対に言えません。当然、会社の規則は守るべきです。ただ「副業禁止」の制約条件の中、「情報感度」を高めてベストの活動ができる・・・このようなサラリーマンの皆さんも応援しつつ、当記事の締めとさせて頂きます。
表紙の写真は「O-DANフリー・フォト:Pixabay」からお借りしました。
<以上となります。最後まで読んで頂き、ありがとうございました。>
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