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幸せな「犬生」のために:無秩序な繁殖と遺伝性疾患

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大切な家族の一員である愛犬たちには、できるだけ健康で幸せに過ごして欲しいと願うのが愛犬家でしょう。モラルに欠ける繁殖業者の無秩序な繁殖によって、その願いが打ち砕かれることが少なく…
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繁殖を禁じられたブリーダー⑦:今、私たちが見ている生体販売の問題

そんな姿勢から、私たちが参考にしたいことを考えてみました。特に“生体販売”の是非や“保護犬”のお迎えについては、論理的で理性的に、丁寧な議論が大切だと思う今日このごろ…。 現在、日本で行われている生体販売には問題が少なくないことは以前もご紹介しました。ただ、よく聞く「生体販売禁止!」という主張には疑問を感じるケースがあります。そこにいく前に、まず今回はペットショップや繁殖業(≒生体販売)の課題を改めて整理しました。 問題が多い生体販売 犬を中心に、愛玩動物(ペット)の販

繁殖を禁じられたブリーダー⑤画期的な判決から10か月。犬の福祉が後退?

ブルドッグとキャバリアのブリーディングに関する裁判がノルウェーで行われています。第一審では、この2犬種の繁殖が違法であると言い渡されました。画期的な判決でしたが、先ごろ開かれた第二審ではその一部が覆える結果になりました。   今後、裁判は最高裁に持ち込まれるのか?その場合、結論はどうなるのか?愛玩動物の福祉に関する国レベルでの裁判に、引き続き注目したいと思います。今回は、これまでの経緯と、そこから改めて学びたいと感じることについて何回かに分けてご紹介します。 これまでの経緯

繁殖を禁止されたブリーダー④:声を上げ続ける大切さ

ノルウェーで、2犬種の繁殖が違法とされた判決から約半年。来月にはオスロの高等裁判所で第2審が開かれます。原告のノルウェー動物保護協会 (NSPA)とお話をして改めて感じたのは、声を上げ続ける大切さでした。 と同時に、"This is not an attack."(意訳:私たちは闘いを挑んでいるわけではありません)と言う、代表のエアシャイルド・ロールドセット獣医師の穏やかな口調が心に残りました。 目的は、犬たちが無秩序な繁殖による遺伝性疾患で苦しむのを無くすこと。声を上げ

繁殖を禁止されたブリーダー③:遺伝子検査は何のため?

前回は、ノルウェーでイングリッシュ・ブルドッグ(ブルドッグ)とキャバリア・キングチャールズ・スパニエル(キャバリア)の繁殖が違法とされた裁判の続報をご紹介しました。9月に行われる第2審の結果に注目です。 今回は、ノルウェーの件をきっかけに、日本における犬の繁殖を改めて考えます。これまで何度も色々な角度からご紹介していますが、このnoteを始めたきっかけでもあるので、ねちっこく…^_^; 遺伝子検査はごく一部 日本でも、ワンコの健全な繁殖に意識が高まっているかのように見え

繁殖を禁止されたブリーダー②:裁判は第2審へ

今年1月、犬の福祉に関する画期的な判決が北欧のノルウェーで出たことを以前ご紹介しました。 首都オスロの地方裁判所は、この国で行われているイングリッシュ・ブルドッグ(ブルドッグ)とキャバリア・キングチャールズ・スパニエル(キャバリア)の繁殖を違法と判断。ブリーダーには繁殖の禁止が言い渡されました。   先日、この判決を不服とするノルウェー・ケネルクラブ(NKC)などが、高等裁判所に控訴しました。第2審は9月に行われ、早ければ数週間後には判決が出る見込みのようです。まず、ここま

繁殖を禁止されたブリーダー

遺伝性疾患と繁殖に関して、ちょっとだけ、本当にチョットだけですが、明かりが見えた気がするニュースがありました。遠いヨーロッパの出来事ですが、こんな流れが「どんどん広がってくれるといいな!」と思います。 ブリーダーに繁殖を禁じる判決ノルウェーで行われた裁判で、遺伝性疾患をもたらすような犬の繁殖が明確に違法とされました。ある特定のブリーダー(個人名は非開示)に対しては、 繁殖を行うことを禁止する判決 が下されました。私権を制限するもので、ものすごく画期的な出来事だと思います

最終章:飼い主の責任

前回まで、犬の繁殖(業界)が抱えるたくさんの問題点の1つを、10回にわたってご紹介しました。長~い話にお付き合いくださった方(もしいらっしゃったら)、本当にありがとうございました。 4年前、平蔵の首に「時限爆弾」が見つかりました。それが生まれつきであること、きょうだい犬たちに同じ/似た疾患が多いことから疑問を感じ、遺伝についての勉強を始めました。論文や医学書を読んだり、時には学者の先生にお話を聞いたり…。 基礎的な知識を得た上で、改めて何人かのブリーダーさん( <= こだ

第10章:「受け入れがたい状況にNOと言おう」

第2章から第4章では、イギリスで様々な犬種が無秩序な繁殖で遺伝性疾患に苦しんでいる例をご紹介しました。日本では、トイプードルを中心に(超)小型犬の「標準仕様」になってしまう程に「膝蓋骨脱臼(俗に言うパテラ)」がまん延しています。それも同様に、繁殖による遺伝性疾患であることをお知らせしました。平蔵の「ガラス細工の首」も(おそらく)お父さんから引き継いでしまったものです。 平蔵と同じ病気に悩んだおねえちゃん平蔵には、たくさんの異母きょうだいがいます。SNSを通して、一部の飼い主

第9章:「秩序ある繁殖」

前回ご紹介したように、「単一遺伝子疾患」については検査による診断ができるようになってきました。犬種ごとに発症しやすい病気の傾向も、ある程度は分かっています。検査を行って遺伝子変異のない犬を繁殖に使えば、そうした遺伝性疾患をもった子犬が生まれることは避けることができます。 一方、「多因子疾患」の場合は原因が一つに限定されないので複雑です。 大型犬に多い関節の遺伝性疾患ラブラドール・レトリーバー(ラブラドール)など大型犬に多い病気に、「股関節形成不全」があります。太ももの骨「

第8章:遺伝性疾患は無くせるのに

前回は、繁殖業者やペットショップが徐々に始めた遺伝子検査についてご紹介しました。その一方で、分かっていながら放置され、まん延している遺伝性疾患の代表として膝蓋骨脱臼、俗に言うパテラを例として挙げました。 念のため、少し「遺伝性疾患」について調べてみました。誤解も多いようなので… パテラなどの骨格の形成不全も 遺伝による病気 で良いんですよね? ↑平蔵は首やひざだけでなく、肩にも問題があり「肩関節不安定症」の治療のため、子犬時代の半年間、装具(ブレース)を着けて過ごしまし

第7章:防げる遺伝性疾患がまん延

前回は、徐々に改善されている遺伝性疾患があることをご紹介しました。一方で、放置され、あり得ないレベルでまん延に向かっている病気もあるのが実情です。今回は、犬たちを苦しめている、そうした遺伝性疾患について触れます。 小型犬は膝が悪いのが「普通」?特に小型犬で、「膝がゆるい」と言われる「膝蓋骨脱臼」が増えています。俗に「パテラ」と呼ばれ、膝の「お皿」がずれてしまうこの病気については、ペット保険の多くが補償の対象から外しています。明らかに頻発しているのが分かります。 ある大手ペ

第6章:愛犬たちにもリスクのある遺伝性疾患

前回まで、人間が手を加えたことで、犬が「種」として例外的に多様化してきたことをご紹介しました。いわゆる「品種改良」には良い面もありますが、健康を損なう負の側面も多いことが分かっています。これまでは、イギリスのエピソードが中心でした。今回からは、私たちが経験することもあり得る(というか、すでに経験している)遺伝性疾患についてご紹介します。 犬種ごとの傾向第4章で触れたダルメシアンの尿路結石(リンク参照)以外にも、犬種によって発症しやすい遺伝性疾患があります。埼玉県獣医師会のウ

第5章:犬の繁殖の歴史

前回までは、「純血種」のブリーディングがもたらしている遺伝性疾患についてご紹介しました。でも、当然ですが品種を創ることは悪い面だけはありません。今回は、色々な犬種がいることの興味深さというか、「こんな面もあるんですね」という少し楽しい話を。 様々な魅力をもつ犬たち現在、純血種だけでも400種類近くが存在します。それぞれの犬種には、それぞれの魅力があります。小型犬が好きな人もいれば、大きくて堂々とした犬に魅力を感じる人もいますよね。フレブルのような「鼻ぺちゃ」犬も人気ですが、

第4章:健康でも殺処分、不健康でもOKな「犬種標準」

前回は、ドッグショーで「ベスト」に選ばれたジャーマン・シェパードが、身体障害を負っていると批判を浴びたエピソードをご紹介しました。鼻ぺちゃ犬たちが呼吸にトラブルを抱える「短頭種気道症候群(BOAS)」も含め、個性的な見た目を「売り物」にするために行われるブリーディングが引き起こしている問題です。意図的な繫殖が、病気をまん延させてしまった例はほかにもたくさんあります。 人間が生み出した遺伝性疾患犬の多様化を生み出した品種「改良 (?)」では、人間にとって好ましい特徴を残し、強