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「ムゲンのI」:知念実希人が贈る、傑作ファンタジーミステリーを読み終えて

ムゲンのI   知念実希人

知念実希人さんの「ムゲンのI」、読みましたか?上下巻の大作で、最初は少し手に取るのをためらってしまうかもしれません。医療ミステリーを得意とする知念さんですが、本作はファンタジー要素も強く、不思議な生き物が描かれた表紙に、「あれ?いつもの知念作品と違う…? 」と少し戸惑う方もいるのではないでしょうか。

主人公は、東京で働く医師、識名愛衣。彼女は、原因不明の昏睡状態に陥る奇病「イレス」の患者たちと向き合っています。愛衣は、患者たちの夢の中に入り込み、不思議なうさぎ猫「ククル」と共に、彼らの深層心理を巡る冒険へと旅立ちます。

美しい風景、奇妙な生き物たち、そして患者たちの心の奥底に隠された記憶。夢の世界は、現実と見紛うほど鮮やかで、時に恐ろしく、そして感動的です。まるで、映画「インセプション」の世界を彷彿とさせませんか?

愛衣は、沖縄のユタの血筋を受け継いでいます。ユタとは、神や霊と交信する、沖縄の民間霊媒師のこと。作中では、愛衣の祖母がユタとして登場し、重要な役割を担います。

愛衣は、祖母から教わった「マブイグミ」という方法で、患者たちを救おうとします。しかし、それは容易なことではありません。彼女は、イレスという病の謎、23年前の猟奇殺人事件との繋がり、そして自身の出生にまつわる衝撃の真実へと、深く深く関わっていくことになるのです。

「ムゲンのI」は、ミステリーとしての面白さはもちろんのこと、ファンタジー要素、そして沖縄の文化や精神世界に触れることができる点も魅力です。壮大なスケールで描かれる物語は、読者に深い感動と興奮を与えてくれるでしょう。

そして、私が特に素晴らしいと感じたのは、物語の中で感じる「違和感」です。最初のうちは、「これは本当に医療ミステリーなのだろうか?」「ファンタジー要素が強すぎるのでは?」といった疑問が浮かぶかもしれません。しかし、読み進めていくうちに、それらの違和感は、すべて伏線として回収され、見事なまでに物語に組み込まれていくのです。終盤、すべての謎が繋がった時の衝撃は、鳥肌モノです。知念さんの巧みなストーリーテリングに、改めて感嘆させられました。

この壮大な物語と個性豊かなキャラクターたちは、映画化に最適なのではないでしょうか。テレビドラマのスペシャル枠などではなく、ぜひ映画の大作として、あの幻想的な世界観を表現してほしいと願ってやみません。映像化によって、さらに深く物語の世界に没入できるのではないかと期待が高まります。「日本版インセプション」とでも呼ぶべき、斬新な映像体験になるのではないでしょうか。

また、知念さんの人気シリーズ「死神シリーズ」のように、この「ムゲンのI」の世界観で、ぜひ続編も書いてほしい!そう願わずにはいられません。愛衣とククルの新たな冒険、そして、まだ明かされていない謎の解明…、想像するだけでワクワクしませんか?

一点だけ、少し残念だったのは、私が文章から想像していたククルと、表紙に描かれているククルのイメージが少し違っていたことです。もっと、こう…ふわふわで愛らしい感じというか…。でも、まあ、これは好みの問題かもしれませんね。表紙のククルも、それはそれで、神秘的で魅力的だと思います。

知念実希人さんの新たな境地を切り開いた「ムゲンのI」。ぜひ、あなた自身の目で、その魅力を確かめてみてください。

評価:★★★★☆ (8/10) (ククルの表紙イラストでマイナス0.5!)


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