マネジメントのミクロ視点 肝はコミュニケーション
以前こちらの記事でマネジメントのマクロ視点、ミクロ視点について考察しました。
ミクロ視点とはチームの各プレイヤー一人一人とどのようなコミュニケーションをはかっていくかということです。
今回はこのマネジメントにおけるミクロなコミュニケーションについて考えます。
言うべきことはない。言いたいことを言う。
「私は言いたくないけど立場上言わざるを得ない」という話をよく耳にします。
みなさんも一度ぐらいはこういうセリフを上司から聞いたことがあるんじゃないでしょうか。
ただ、立場上言わざるを得ないことって何なんでしょか?
本当にそんなもの存在するのでしょうか?
実は多くのマネジャーは不本意ながら仕方なく、という体をとりながら実際は自分が言いたいことを言っています。
そして私はそれが悪いことだとは思いません。
マネジャーであれプレイヤーであれ思うところがあるのならそれを表現するのはなんら問題ないのです。
アサーション
ただし、表現の仕方には注意が必要です。
私はあなたが嫌いです、なんて真正面から言われたら相手がどんな気持ちになるか、想像するまでもないでしょう。
会社にはいろんな人たちがいます。
個人間で合う合わないが発生するのは自然なことです。
それを受け入れた上で、目の前の相手に自分の意見をどう表現するのか?
ここで使えるテクニックがアサーションです。
参考文献として上記二つを挙げておきます。
著者の平木典子さんは日本におけるアサーションの第一人者です。
個人的には漫画版を読んでから活字に入るとなお一層理解が深まると思います。
アサーションは奥が深く、最終的には生き方のお話にまで至りますので、ここではあくまで概要、テクニックを記しておこうと思います。
アサーションは自分が言いたいことを相手に伝えるための技術です。
とはいえ何でもかんでも浮かんだ言葉を言えばいいというものではありません。
それは赤ん坊が泣いているのと同じです。
そうではなく自分が何を考えているのか、どうしてほしいのか、どう感じているのかを相手に伝わる形に整えて、すなわち論理的に伝えます。
まずはお互いが置かれている状況について事実だけを述べます。
例えば、就業間際に上司から急ぎで作ってほしい資料があるといわれた場合、まずはその事実をそのまま、もしくは要約して伝えます。
「そうなんですか。急な仕事が入ったんですね」
次に自分の感情を伝えます。ここは口調は丁寧に、しかしきっぱりと伝えましょう。
ここをあやふやにすると結局どっちなの? と相手をいら立たせてしまいます。
「ただ私もこの後予定があって残業はできないんです」
ただこれだけでは問題は何も解決していません。
そこで、こちらから代替案を提示します。
「ちなみにその資料はいつまでにできていればいいですか? もし明日の朝一ということであれば家に持ち帰ってもいいですか? あるいは早めに出てきて資料作成をしようと思いますがどうですか?」
ここまでの提案すれば上司から何らかのリアクションがあるはずです。
もしかしたら提案を受け入れてくれるかもしれませんし、ほかの人に頼むという選択をするかもしれません。
ここで重要なことは上司も自分も資料作成という問題から逃げようとしているわけではない、ということです。
残業はしたくないという意思はしっかり表現しつつ、相手の困っていることにも手伝う姿勢を見せることが重要です。
それでも残業を無理強いしてくるようであれば・・・いろいろ対応はあるんじゃないでしょうか(笑)
アサーションとしかたなくの違い
立場上しょうがないから言っているというスタンスは確かに相手に対して一定の配慮があります。
相手を傷つけまいという気配りです。
ただアサーションとは大きな違いが一つあります。
それは発言の責任が発言者にあるのか別の第三者にあるのかです。
アサーションでは自分の気持ちを自分の責任の下、表現しています。
しかし、仕方なく云々のほうは責任を他に転嫁しています。
この姿勢は必ず相手に見抜かれます。
そして相手は見抜いた瞬間、この人は責任を転嫁する人なんだなと無意識の内に考えてしまいます。
そうすると本当の意味での信頼関係を築くことができなくなります。
マネジャーという立場になれば言いづらいことが増えるのもまた事実です。
しかしだからこそ、そこから逃げず自分の責任の下で発言することで少しでもプレイヤーからの信頼を得る、そんなマネジャーを私自身も目指していきたいなーと思う次第であります。