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はじめましてを言うには遅すぎるし、さよならを言うには中途半端な日だ。窓の外はいかにもそ…
わたしの名は愛情という。 姓が愛で名が情、愛・情だ。愛情深い子に育ってほしいという想…
みんながあの子は優しいという。わたしもあの子を優しいと思う。実際それらはほとんど真実だ…
いつがそれになるかわからないけれど、きっとその日が遠くないことはわかるし、ひょっとした…
あれはすばらしい花だと言われ、咲きそうな蕾を誰かがたいせつに育てている時、その花を見る…
運命の輪の軸に選ばれる人間というのはたぶんあらかじめ神様が決めたもので、あなたは最初か…
朝起きて、わたしの頭上に覆い被さるどんよりとした曇り空からふと光がさすのを見あげて、今日もあなたが太陽であることをなにより尊いと思う。 あなたが太陽であること、太陽であらなければいけないこと、それを他でもないあなた自身が一番に咀嚼しながら燃えている、だからあなたの振りまく輝きはこんなにも暖かく世界を包みこむ。 太陽が出ていても雨は降る。あなたがほんとうは泣いていることを知っている。けれども雲は晴れるから、わたしたちはあなたの天気雨で恵まれている。あなたが通るだけですべて
紫陽花が似合うあなたはいつでも冷たい雨に打たれている。濡れそぼった髪が額にはりつくのを…
死後の世界には三途の川があると聞いていたけれど、あの話は嘘だったのだと今しがた思い知っ…
流れ星が願いを叶えてくれそうな気がするのは、きっとあのちいさな炎が燃え尽きて、もう消え…
二人きりが定員の世界の内側で、天気予報が外れた事に密かに感謝していた。きみのこえが反響…
わたしは雨である。 雨というものは表現手法においてまったく便利な代物で、いついかなる…
別れの挨拶は祈りなのだ、と唱えたひとがいる。 もう二度と会わないことを願ってさような…
都会を歩くひとたちはみんな透明だ。情報の洪水でわたしたちの色温度は希釈され、水びたしの街には水面に反射された空と高層ビルだけが取り残された絵画のように映っている。 コンクリートで舗装された歩道の合間で、さみしさを埋めるために咲かされた紫陽花は、すこし汗ばむような初夏の空気に囚われている。あのちいさな花々を囲む川辺の散歩道の上で、子どもたちが川に向かって石を投げているのを見た。 通りすがりの透明人間は、石がぽちゃんと川に落ちる音が聞こえないことに気づいてふり返る。そのと