月に願いを
流れ星が願いを叶えてくれそうな気がするのは、きっとあのちいさな炎が燃え尽きて、もう消えてしまう寸前だからだろう。何億光年か先でわたしたちのために光るいのち。その上にほんとうは誰が立っているのかを知れるとき、わたしも跡形もなく消えている。
月はきれいだけれどなにも叶えてくれない気がするな。あそこは竹から生まれたわがままなお姫様が治めていて、兎が住んでいる不思議の国、昔からそういうことになっている。
勝手に満ちたり欠けたりするし、太陽を食べたりするし、月はいつだってわがままなお姫様そのものだ。わたくしと結婚したければ地球を持ってくるのです、なんて言われたら兎たちはどうするのだろう。
すくなくともお餅なんてついていそうもないな。
願いをかけるなんておこがましい。
願うためのものだ、あの朧げで傲慢なうつくしさは。
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