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目の前にいるのは、かつての自分だった。

整体指導中にいつになく饒舌な自分を発見した。

理由はすぐに思い当たった。


今、ぼくの目の前にいる彼に

かつて大卒で就職した東京海上で交通事故の示談交渉業務に携わって

心身を病んでしまった自分の面影を見い出していたからだった。


当時の自分を振り返ってみると完全に心身症だった。

出勤時は午後になると体温が38.5℃になり顔は紅潮してしまう。

表情が動かなくなり、心が動かなくなっていた。

好きだったはずの映画や小説でさえ見る意欲も湧かない。

感情の喜怒哀楽を失いつつあった。

というか、失ってしまっていた。

初めて体験した大きな心身の変調。

その時起こっていたのは、カラダが教えてくれていたSOSだった。

当時のぼくはカラダや感情が自分の本音やハイヤーセルフからのメッセージだなんてまだ知らなかった。


タレントの付き人兼運転手をしていたときも

4カ月間、ずっと下痢が止まらず、肛門がただれ、切れ痔になってしまった。

汗がお酢みたいな臭いを発していた。

カラダは最初からSOSを発してくれていたのに

もしかしたら役者として事務所を紹介してもらえるかも

人脈が拡がるかもしれないという下心、淡い期待を捨てられず

すぐに辞めるって決断が下せなかった。

人生のパートナーであるカラダの声を拾ってあげられなかった。


KDDIコールセンターに勤務している時

架けた電話が留守電になってメッセージを吹き込もうとすると

言葉が出なくなってしまった。

朝から電話をかけ始めて1時間ほど経過していて

もう既に何回か言葉が出なくなっていた。

ちょうどパンデミックが始まって自宅のひかり回線の開通申し込みが激増していた。

それなのにソーシャルディスタンスを確保するために出勤人数を半数以下に制限していて異常な忙しさだった。

前々から徐々に声が出にくくなっていることには気づいていた。

だましだまし何とか業務を続けていた。

声が出なくなったその朝、すぐに退勤となり1週間休むことになった。

1週間の療養期間を経て、そのまま退職することに決めた。

こんなにも大きなカラダからのSOSを拾ってあげないなんて。

自分のSOSが拾ってあげられなければ、他者に整体指導なんて出来ない。

カラダと対話していない整体指導者なんて

少なくともぼくが思い描いている整体指導者の姿じゃなかった。





強制終了の体験を幾度も経てきたからこそ

カラダからのメッセージが如何に大切か身に染みている。

声が出なくなる。

朝起きられなくなる。

出社しようとすると胸が苦しくなる。

そんな大きなメッセージはいきなりカラダに現れる訳じゃない。


最初はもっと小さなメッセージがカラダに現れる。

寝つきが悪くなった。

朝起きても疲れている。

好きなものが分からない。

毎日が楽しく無くなっている。


もしかしたら鬱や適応障害、パニック症候群などを心の病だと思っている人がいるかもしれない。

ところが、そういった状態に陥ってしまっている人のカラダに触れれば

観察者にも本人が苦しんでいることがハッキリと確認出来る。

長年に渡って苦しんできた方が薬の服用もなく楽になると驚かれるんだけど

確認できたカラダの異常部位が変化してくれた結果に過ぎない。

カラダが変化したことで、心が変化したわけ。

そもそもカラダが変化したのに、心が変化しないってことは無い。

カラダと心は、そもそも切り離せないし、心身一如なのだから。


整体指導においてぼくが饒舌になったのは

カラダが発しているSOSを観たからだった。

そして、かつての自分のようになって欲しくないために

思わず老婆心でカラダとの対話の大切さを語ってしまった。

目の前にいる彼は、まさしくかつての自分だった。


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