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お金は失っても取り戻せる。       メンタルだけは最優先で守り切れ。

2008年、今から、約17年前。
私は、当時、香港に出店した日本食レストランを軌道に乗せるために香港に駐在していました。

場所はカオルン駅の最上階。駅の上には高級なブランドショップが入ったショッピングモール、さらにその上には、香港の夜景を担う高級レジデンスがあり、向かいには金融都市として生きる香港を象徴するような金融タワーがあり、レストランはその目の前に立地していました。

レストランのテーマはモダンジャパニーズ。新鮮な食材を、伝統の技法を基礎として新しいエッセンスを加え、魅せ方をモダンにしてお客様を楽しませるという内容で、セレブ層にマッチする内容です。職人も、立地も、料理の内容もサービスも万端にそろいました。

しかし、そこに時代の波が襲い掛かります。リーマンショックです。リーマンショックはアメリカの大手投資銀行であるリーマン・ブラザーズが破綻したことをきっかけに発生した金融危機です。100年に一度の金融危機と言われ、世界株式は最大で約61%下落。その後もの景気停滞は長引き、グレートリセッションと言われました。

リーマンショックは、香港も直撃しました。香港は、土地が狭いため、金融都市として生きる特別行政区です。レストランの目の前にあった金融タワーには、リーマンブラザーズ、モルガンスタンレー、クレディスイスなど名だたる企業が入っていました。通常は、夜遅くまで働くビジネスパーソンたちでオフィスの光は深夜までついていました。そのビルの光こそが香港の生命力を象徴していました。

しかし、金融危機とともに、真っ先に金融企業の大量の人員削減が行われました。つい先日までレストランにお客様として来ていた人が、段ボールを持って追い出されている姿を見た時は現実のものとも思えませんでした。金融タワーのオフィスの光がもろうそくの火を消すように、瞬く間に消えていきました。

消費は冷え込みます。
レストラン街はゴーストタウンのようになりました。


しかし、日本本社の購買部門からは、「売上を上げろ」「食材のコストを見直せ、支払いを遅らせろ、人員削減しろ、キャッシュフローを改善しろ」と現地の状況を分からないままの指示が飛んできます。

ゴーストタウンでレストランを立て直せって、どうしろと言うのか…。


ストレスがたまると、まず、食生活が乱れます。
ファーストフードやコンビニなどのチップスなどを食べるようになり、顔色も悪くなり、たちまち体重が増え、目の下にはクマができるようになりました。免疫が下がり風邪をひくようになり、思考がまとまりません。

ノイローゼになりそうだった私を察し、
当時の上司がかけてくれた言葉が次の言葉でした。


「お金は失っても取り戻せる。
 メンタルだけは最優先で守れ」


続けて、

「メンタルだけはダメージを受けると、
 お金と時間をかけても取り戻すのが難しい。

 メンタルを守るにはまずは、3食、食べること。
 内容も栄養が空っぽのジャンクフードではなく、
 肉、魚、野菜をたっぷり食べること」


当時、食事も乱れ、思考も乱れていた私は、
上司の言葉をきっかけに、落ち着きを取り戻します。

食生活を立て直し、生活リズムを立て直し、思考を立て直しを
することができました。

新規のお客様を増やすために、ホテルのコンシェルジュをレストランに招いて試食会を開催しインバウンドの顧客へのアプローチ。固定顧客を増やすために金融タワーの顧客が来ないのであればこちらから出向いて高級お弁当サービスの展開など、あの手この手で売上を増やすことができました。

結果として、香港初出版されたミシュラン本にも、ピブグルマンまで取得することができました。ピブグルマンの定義は「価格以上の満足感が得られる料理」。これをきっかけに徐々に、新規のお客様も、リピートのお客様も戻ってきてくれるようになりました。


今は、リーマンショックのような金融危機ではありません。

しかし、国と国との関係がさらに密になり、米国の大統領の発言一つが全世界に影響を与える、一波が万波に影響を与える時代になりました。これは否応なく個人の生活にも揺さぶりをかけていきます。さらに、価値観がガラガラと変わり、優先順位を見失いがちな時代です。

人生100年時代、メンタルが健全であれば危機も乗り越えられます。
また挫折しても何度でも立ち直ることが出来ます。

こんな混沌とした時代だからこそ、
17年前に、私を救ってくれた上司の言葉が響くのです。


健康マネジメントスクール
水野雅浩



#心に残る上司の言葉

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