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なぜ彼は頼りなく見えるのか

昨日職場にとある来客があった。

その人は原材料を購入している商社の人Aさんで
2か月に1度ぐらいの頻度で来社して
打ち合わせをしている。

今回もその定期の打ち合わせだったのだが、
Aさんに会う度にとある印象を感じてしまう。

それは”頼りない”という印象である。

あなたの周りにも一人ぐらいは
なぜだか頼りない印象を与える人がいると思うが、
その場合、見た目の印象が大きいのではないだろうか。

だが、Aさんは一見するとシュッとしたビジネスマンで
別に見た目は頼りない印象があるわけではない。

にもかかわらず、お話をしていると
そこはかとなく頼りない印象が湧いてくるのだ。

私はそれが毎回不思議であったが、
こちらも打ち合わせで時間を無駄にしたくないので
これまでの面談では淡々と打ち合わせ内容を進めて
この疑問には深く向き合わずにいた。

だが、昨日の面談ではこちらから私以外にもう一人
購買担当の人が入ることになったのである。

面談が始まり冒頭に私が担当している話をして
用件を済ませると、
その後、購買担当との話が始まった。

別にここで退席するという選択肢も取れなくないが、
こちらの購買担当は女性の方なので
男性のAさんと二人で密室で面談するというのは
若干抵抗があるかもしれないと思い
そのまま書記担当として残ることにした。

そこでふと思いついた。

もしかするとこれはAさんが頼りない印象を与える
理由を見つけるいいチャンスなのではないか。

思いついた私は止められない。

早速話を聞きながらAさんの様子を
監察してみると、
別に仕草が特別多かったり、妙というわけでもない。

ということは原因は話し方なのだろうか。

そう思い、話し方に注目してみたのだが、
それほど違和感はなさそうである。

一体何が彼を頼りなさそうに見せているのだろうか。

迷宮入りしそうな疑問を前に話を聞いていると
新規で購買する資材についての話題になった。

これは新商品に使用する資材であり、
前回の打ち合わせまで私が開発担当者として
Aさんとはやり取りをしてきたもので、
開発プロセスが終了したことに伴い
今回から購買担当者が引き継いでいた。

こちらの購買担当者がAさんに対し、
その資材の加工先がどの程度在庫しているのか、
仮に在庫が切れた場合のリードタイムは
どの程度なのかという質問を投げかけた。

この点は開発段階でもあらかじめ確認して
供給面では問題ない資材を選定したので
Aさんはこの質問に明確に答えると思っていた。

だが、Aさんの答えは私の予想とは違っており、
「メーカーに確認してご連絡します」
というものであった。

そう言えば、過去からAさんと打ち合わせをした際に
この言葉を聞いた気がする。

だが、今回購買担当者が尋ねた質問は
既に過去に私が確認した内容ではないか。

私はたまらず
「その件は過去に確認頂いて〇〇でしたよね?」と
Aさんに対して問いかけた。

Aさんはそのことを忘れていたのか
それともその上でも改めて確認するつもりなのかは
よくわからないが
「はい、しかし念のため再度確認してご連絡します」
と言った。

このやり取りがあった後、
2つほど異なる案件に話が進んだのだが、
そのやり取りを聞いて
私はAさんが頼りなく感じられる理由が分かった。

Aさんは事前にこちらが何を聞こうとしているか、
こちらが何を求めているのかを
考えていないから頼りない印象を与えていたのである。

仕事で誰かと面談する際には必ずその際に
どのような話題になるか、
その話題になった場合に向けて何かしら
準備をしておくものだと私は思っている。

そうしないと相手の時間を無駄に奪うことになるし、
相手に対して失礼だからである。

Aさんは今回の面談において、
間違いなく今回話題に出た新規資材について
話題に出ることは予想できたはずであるし、
購買担当者が面談に入る時点で
どのような情報を求められるのか
分かっていただろう。

にもかかわらず、Aさんの答えは
メーカーに回答するというものであった。

こちらとしてもこれにより無駄な時間を
使ってしまうことになるし、
面談ではなくメールでもよかったと
正直思ってしまう。

恐らく過去の面談においても
私はこのような肩透かし感を持ったがゆえに
Aさんに対して頼りない印象を受けたのであろう。

モノを人に売るにあたり大切な要素は
色々あると思うが、
自社で商品を作っているわけでもない商社の人にとって
求められるのは商品の知識だけではなく
顧客が求める情報をいかに的確に予想し、
タイムリーに届けられるかではないだろうか。

それができるからこそ我々は余計なコストを払ってでも
商社を経由してモノを購入するのである。

ただ買うだけならばメーカー直で購入するか
できるだけマージンの少ない安い商社から
購入すればいいのだ。

今回客観的にAさんの様子を見てみることで
私は長らく感じていた疑問を解決することができた。

自分もAさんのように感じられないように
慢心することなくしっかり準備をして
人との面談に臨まねばと
心の中で兜のひもを結ぶ私であった。

ちなみにAさんはいつ来ても何だか微妙に
体調が悪い話をしている。

昨日の面談でも1か月前に風邪を引いて以来
咳が止まらず呼吸器内科に行った話をしていた。

見た目は丈夫そうなのに病弱エピソードが多いのも
彼を頼りなさそうに見せている要因なのかもしれない。

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