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井坂康志のラジオから考える「根拠のない自信」と「戯れ」の哲学
『70年代生まれ共感型ラジオ』井坂康志先生
敬愛する井坂康志先生のラジオ、『70年代生まれ共感型ラジオ』。待望の第2回を拝聴した。
話題は代々木ゼミナール本校。僕も通った思い出深い場所である。
井坂先生:
「91年、代々木駅前のスクランブル交差点で、携帯電話を外で使っている人を初めて見たんです」
ヤマカ先生:
「なにげないことなのに、ずっと覚えていることってありますよね」
室生犀星の『小景異情』を思い出す。小景(ちょっとした光景)に異情(特別な趣)を見る。生活に深い情感や洞察を思う詩人の目だ。
井坂先生の中には詩人がいて彼はとても優しい。幼子が初めて目にする光景を大人になった先生の言葉が映す。
東洋経済新報社が会社をあげ鍛え上げた哲人。ドラッカーの訳者、上田惇生先生が「畏友」と恐れた。
井坂先生はしかし、幼子の目をしている。
先生には幾つかの顔があり、それぞれの人格が複雑に絡み心地よいリズムを奏でる。沢山の仲間に囲まれている理由も、そこにありそうだ。
井坂(敬称略):
「大学を決めるときだって、就職をするときだって、これといった明確な目標なんて一切ありませんでしたね」
ヤマカ:
「私もです」
「高校生の時分って、経済学も経営学も何がなんだか分かりませんでした」
「就職だって同じでしたよ」
「だから知名度で選びがちなんです」
井坂:
「実体をなにも知らずにね」
ヤマカ:
「ただ、あのとき」
「勘違いだけはありました」
「”絶対何かになれるんだ”っていう」
井坂:
「私も持ってました」
「根拠のない自信を」
ヤマカ:
「思うんですけど、、」
「今の時代、勘違いさせてくれる人が必要なんですよ」
私も勘違いをしてきた。
小さい頃は、親父が本気で走れば世界一早いと思っていたけれど、小五になった時分から私の方が早いと気づいた。
小学校で一番足が早く、本気で走ればカール・ルイスに勝てると思ったけれど、中学で会った一瀬と丸山の方が早かった。
大学ではビル・ゲイツを抜き世界一の金持ちになれると思ったけれど、間もなくニートになった。
今は世界史で圧倒的にナンバーワンの研究者になり、どんな人物も私の足元にすら触れさせないと豪語する。
「五千年続く新世界の基盤を築く書籍を書く」
この大言壮語は現実にするつもりだ。
今の時代、そんな人材がウヨウヨしているから面白い。ワンピースの最悪の世代のようだ。
我らの存在の根拠とは何なのか。そう考えることがある。
「私も持ってました」
「根拠のない自信」
井坂先生はこう話してくれた。
私には勘違いをしていなかった時期もある。灰色だった高校時代や起業する前。この世の終わりかと思うくらい人生がつまらなかった。
果たして井坂康志先生のおかげで、人間の存在基盤が根拠のない自信であることに気づくことができたのである。
(ちなみに、クリスマスイブ発刊の先生の新刊が楽しみだ。イブなのが萌える)
『思考のエンジン』奥出直人先生
「洗練されれば存在基盤を得られる」と近代は考えてきたけれど、野蛮さに存在基盤はないのか。
野蛮の方が美しく洒落ている感もある。
敬愛する奥出直人先生は『思考のエンジン』でこう述べられた。
クラッシックを目指す生き方もあれば、すべてを壊して響くホット・ジャズのような生き方もある。
デューク・エリントンのジャズはどちらでもなかった。相手に取り入ることも否定することもしないのに、皆に響いた。
「あれほどきちんとアレンジされていながら、」
「アレンジされているということを忘れさせるほど音楽がスウィングしていた」
漱石の『草枕』のように、プロットがなく美しい「文章」がある。
『草枕』の冒頭を見られたい。
山路を登りながら、こう考えた。
智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。
住みにくさが高じると、安い所へ引っ越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生れ、画が出来る。
人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。むこう三軒両隣にちらちらするただの人である。
ただの人が作った人の世が住みにくいからとて、引っ越す先の国などあるまい。引っ越せば人でなしの国へ行くばかりだ。人でなしの国は人の世より住みにくかろう。
なるほど、天才の仕業だ。
「AIが作った国は人が作った国よりも住みやすい」。そう感じるのは、漱石からすれば破滅の兆候だろうか。
奥出先生は言う。
デリダは『エクリチュールと差異』のなかで、脱構築的解釈とは、、、
「根源に向かおうとせず、戯れを肯定し、人間と人間主義を越えようとすること」と述べた。
人は究極の真実を求めてしまいがちだけれど、究極の真実でなく「戯れ」を求めろとデリダは言う。
一つ、奥出先生の下の難解な文章を解釈したい。
脱構築における読みとは、テキストが『世界の戯れ』のなかで生成されていると認識し、そのメカニズムを暴くことなのだ。
【解釈】
テキスト(世界)は遊びから生まれる。また、遊びからテキスト(世界)が生成される仕組みを暴くことこそ、「脱構築における読み」、すなわち「次代を作るために必要なこと」である。
遊びから世界が生まれるのだ。
デリダはそれを探れと言う。
"Thinking in Jazz"にこんな言葉があった。
(ジャズの)即興は、瞬間瞬間に拍車をかける。
「即興は準備なしでなされる」とか、「学べるものではない」という認識は明らかに間違っている。人生を捧げた練習や学問が必要なのだ。
この書籍、今ならkindle unlimitedに入っています。
僕がしばらく前に見たときには3万円以上しました!
戯れも即興も、人生を賭け学ぶべきことだ。
逆に言えば、究極の真実(コード)はテキスト(世界)を消費してしまう。
究極の真実は世界を消費し生み出さない。世界を生むためには、戯れて遊び、即興で対話することが求められる。
ヤマカ先生がラジオでこうおっしゃっていた。
「ホモ・サピエンスが他のサピエンスに勝ち得たのは、共同幻想を持っていたからだと言います」
大ベストセラー『サピエンス全史』からの引用である。
近代は合理性を求め、幻想をくだらないと卑下する。神はここに殺され、ニーチェは『ツァラトゥストラはかく語りき』で「神は死んだ」と喝破した。
この書は映画『2001年宇宙の旅』のテーマとして有名な曲にもなっている。
合理主義への傾倒は自殺行為だ。人は邪神を信じてしまった。
真実は確かなものの中にしか存在しないのか。
「3つのうち1つは正しい」
そんな汚れた真実があっていい。
性急に答えを求めたら論争が避けられない。
防御的になり、独占を望むようになる。
曖昧さにとどまれ。
グレーのままに。
自己や仲間を作るために、クリアな真実は邪魔だ。
「世界を生み出すため遊べ」
デリダはそう言う。
時代が求める知識。
一生を賭け学ぶべきは「戯れ」である。
起業家は遊び人と区別がつかない。自己を認識するために仲間を作り、自らの世界を生むため戯れている。
遊びを学べ。
すべてを捨て。
世界は戯れに産まれ落ちる。
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橋爪さんのHPは以下です。
ご覧くださいまして、誠にありがとうございます!
めっちゃ嬉しいです😃
起業家研究所・学習塾omiiko 代表 松井勇人(まつい はやと)
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下のリンクで拙著『人は幽霊を信じられるか、信じられないかで決まる』の前書きを全文公開させていただきました。
あなたの墓標には何を刻みたいですか。
「死」があなたを目覚めさせる。
そんなテーマです。是非ぜひお読みくださいませm(_ _)m
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どん底からの復活を描いた書籍『逆転人生』。
彼は中学の時からの親友で、中二の時に俺が陸上部全員から無視された時「もう松井を無視するのはやめた」と、皆の前で庇ってくれた恩人である。
5名の仲間の分も、下のリンクより少しづつ公開させていただきます。
是非ご覧ください(^○^)
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こちらが処女作です。
トラウマを力に変える起業論。
起業家はトラウマに陥りやすい人種です。トラウマから立ち上がるとき、自らがせねばならない仕事に目覚め、それを種に起業します。
起業論の専門用語でエピファニーと呼ばれるもの。エピファニーの起こし方を、14歳にも分かるよう詳述させて頂きました。
書籍紹介動画ですm(_ _)m
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