【孫子の兵法・その4】政治理念や国家目標がしっかりしていないと、内部から崩れていく
では、少しずつ解説してまいります。
「道とは何か。それは、国民と君主が同じ意志を持つかどうかという、政治的条件のことだ」という文について
ここで言う「道」は、儒教的な「人の道」とは違います。
「国民と君主が同じ意志を持つための道」であって、「上下が一体となれる理念や方針、組織が一丸となって進んでいける目標」のことです。
それは、戦争以前に求められる国家統一力の軸と言えます。
これら政治理念や国家目標がしっかりしていないと、内部から崩れていくことになります。前戦で戦う兵士たちとしても、方針や方向性が分からなければ、心を重ね合わすことが出来ません。
心が重ならなければ「生死を共にすることが出来ず」、「危険を恐れなくなる」どころか、いつでも逃げ出したいという意識レベルの低い状態に陥ってしまうでしょう。
道家の老子では、「道」を天地自然の原理としています。孫子の兵法の内容にも、老子的な哲学が随分入っておりますから、道は集団を統一させる原理と解釈出来ます。
特に政治に統一の原理が欠けていると、いくら兵器を揃えてあっても、いつの間にか侵略され、とうとう亡国に至ります。
そこで、「まずは、同じ意志を持つことで政治をしっかりさせよ」と教えるわけです。戦略や戦術の話は、それからとなります。
「天とは何か。それは、昼夜や晴雨の明暗、寒暑、季節など、時期的条件のことだ」という教えについて
「昼夜や晴雨の明暗」は、原文では「陰陽」です。昼と晴れは陽、夜と雨は陰です。戦闘は屋外で行われるのですから、この陰陽をしっかり把握しておく必要があります。そういえば、ロシアに攻め込んだナポレオン軍が敗れた理由の一つに「冬将軍」がありました。
61万人のナポレオン軍兵士の内、ニーメン川を渡ってロシア領内に入ったのが47万5千人、何とかモスクワに入城したのが11万人でした。
ロシア側は、モスクワをもぬけの殻にさせておき、しかも大火が起きた(起こした?)ので、占領地から食糧や物資を調達出来ない状況でした。
フランス軍は、退却を余儀なくされ、帰りは冬将軍の寒さと雪に襲われこともあって、ニーメン川を越えられたのは、僅か5,000人だったのです。
孫子が愛読書であったはずのナポレオンも、「陰陽」の把握を忘れて“神通力”が消え、失脚へ向かいました。天に見放されるとは、まさにこういうことを言うのでしょう。(ナポレオン軍兵数の出所は「カラー世界史百科」平凡社→「最新図説世界史」浜島書店105頁)。
戦闘ばかりが戦争ではない。
軍隊の前線への移動、戦地へ送る食糧や物資の調達(兵站)などを考えますと、季節や気候など「天」を常に意識しておかなければなりません。
今日も、経営であれ選挙戦であれ、陰陽・寒暑・季節などに注意が要ります。スポーツの試合も同様です。時期的条件に適った先手準備は、想像以上に現代でも必要なことなのです。(続く)
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