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テニスな日々【3rd season】

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【2023.11〜】主に競技へのリスペクト、男女間問題。野郎にまじってテニスをする大人女子(笑)の思いを綴るエッセイ。
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2023年11月の記事一覧

必要な痛み(後編)

必要な痛み(後編)

【ケース3】

 恐怖の正体は得体の知れなさ。一歩先の未来を予測できないから身体が強張る。けれど痛みを受けたとて、それが想定の範囲内だと思えれば、強張りはいくらかマシになる。大事なのはその輪郭を知ること。

 思い出したのは「速水さんとはいいわ」とテニスコートを開けられた時のこと。腑抜けが、と舌打ちせんばかりだった私側の非。
 自信がなかった。これだけ打てると誇示しなければいられなかった。ふと力を

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価値などない(前編)【テニス】

価値などない(前編)【テニス】

【11月3日記】

 それはまるで沼に札束を投げ入れるかのよう。
 今私は、「長く短い祭り」を世に出した時の椎名林檎さんと同い年に当たる。世間一般の旬を過ぎ、明るい場所からフェードアウトしていく立場であるにも関わらず、体内を沸々と巡るは万能感。そう。万能感である。類義語は「根拠なき自信」
 若ければ勝手に手に入っていたもの。けれど自ら手を伸ばしたものの方が、自分にとっては何倍も価値を持つ。そうして

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価値などない(後編)【テニス】

価値などない(後編)【テニス】

 今思い返してみれば、あれは大きなヒントだった。
 あの高さには覚えがある。ナオトと、玉ちゃんと、鬼と、白黒と、そして今回遭遇した男性が持っているもの。共通するのはスピン系。軽く殺しにかかってくる輩衆で、だから体力ゲージを最も要する。その価値は「ネットにかけない、続く前提のやりとり」それに「ベースライン付近に落ちる放物線の美しさ」

 じゃあと「体力を補うため、ただランニングする」のは短慮であった

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