マガジンのカバー画像

テニスな日々【3rd season】

36
【2023.11〜】主に競技へのリスペクト、男女間問題。野郎にまじってテニスをする大人女子(笑)の思いを綴るエッセイ。
運営しているクリエイター

記事一覧

全ては夢の中【テニス】

 通常真ん中に線を引く。真ん中とはどこか。それを決めるのは第三者。外から見て力量差を測る。  例えば一視点にとっての「楽しい」が夢中になれるだけの出力を要するものだとして、けれどもこの時外から見た真ん中はおそらくは手前側に寄っている。スプラトゥーンの勝敗を決める時のグラフを想像してもらえればいい。    基本どちらかが出力する時どちらかが受ける。そうして安定して返球できる前提で、基本受ける側が主導権を握る。言ってみれば受け手が7割以下の出力で対応している状態であり、だから通

流れていく景色【テニス】

 ありがてえと思った。半身を委ねるような、そのストロークにおける信頼。  目が変わった事を自覚する。容器ではない。ただその中心、腹に据えた覚悟にまっすぐ敬意を表する。    必ずしも目が合うばかりではない。「それ」は察するもの。コートに向かう時、以前いた男子中学生がパッと二度見するのが分かった。ショートストロークに入る時、女子中学生が小走りに対面に入るのが分かった。ストロークでかち合った時、男子高校生が腰を落とすのが分かった。  名を知らずとも「あの人だ」と認識すること。そこ

ほうれん草が食べたくて【テニス】

 二束もりっと消えたことがある。食べるという感覚すらなく、本当に気づいたら無くなってて。アレ怖いね。え、知りませんけどって目の前に空の皿があって言うからね。口の端に食べカスつけて必死で首振ってるちびっこの成れの果てだよ。  そんな風に、人は身体に不足しがちな栄養素を含むものを無意識に欲する模様。取り込むことでバランスを補う。    自分を信じることがいちばん難しい。そこには信じるに値するだけの根拠が必要となる。  思い出したのはさつきちゃん。踏み込んでフルスイングでフォアバッ

勝手に伸びろ【テニス】

 自分の荷物の所に向かう途中、コート外に設置された椅子に腰掛けている夫婦が、さっと足を引き、背筋を伸ばした。「ありがとうございました」と女性が頭を下げると、すぐさま男性もそれに倣う。汗まみれ、低酸素状態の一般人Aは、はあ、と頭を下げると、ラケットをしまって帰路に着く。    1ヶ月空いたのか。  久しぶりに現在在籍しているクラスに顔を出すと、いつもの相方の他、見慣れない人たちがいた。計6人、内2人はおそらく中学生。  振り抜きの角度を修正することで、力ある男性相手にある程度打

正当化を覚えた害【テニス】

 何が害かって、それはコーチの存在理由を否定しかねないから以外にない。  サークルではなくスクール。学び、向上し、結果を残すための施設としたとき、授業そっちのけでサッカーしてる連中いたら迷惑なのだ。だからか。  だから会員というシステムがある。漠然と好きなことをやりたい人たちがコート借りてやるもんだと思ってたけど、目的を勝利としない遊び場としての場所提供という見方もできる。始めから窮屈ではなく、のびのび打っている間に知らずベースが出来上がって、いいイメージがついて、少しだけ退

害の一存【テニス】

 どうやら自分を過信していたようだ。  散々愛だの恋だの言っておきながら、いやだからこそたぶん私の思いはこの競技のためにならない。害というやつだ。   〈金メダルを取ることも重要なんですけど、好きな気持ちを忘れないで競技をやっていくことが今のスポーツ界に求められているんじゃないかなって〉  水泳の北島康介選手が前線を退く時に言ったことを思い出す。分母を、こと水泳に限らず、スポーツ界とするところに彼の懐の深さを思う。  結果を残して、役割は果たした。いつしか追われるように、誰

最敬礼【テニス】

 声をかけられたから覚えていた。  このクラスのレギュラーは誰かと聞かれて答えると「ですよね」と返ってきた。 「ありがとうございました」  10も20も年上に思える人がする最敬礼。その人は別の日、初級にいた。もう一人、何度か今いるクラスに来ていた人もやっぱり別の時間帯の初級で見かけた。  自分に何が足りなくて何が必要か。それを補えるところに向かう。目的があることで同じ環境でも見えるものが変わり、得るものが変わる。誰にでも平等に与えられるものから、個人が渇望したものに。本来

憧れのソウ失派生、「お元気で」【テニス】

 ソウさんに会いたい気持ちと同じくらいの大きさの会いたくない気持ちがある。重さも質量もぴったり同じ。ウソだ。後者が少しだけ大きいからこそ、今の今まで「会わない」事実がある訳で。    超えるなんて烏滸がましいことを言うつもりはない。けれど「バックハンドは打たない」と言っていたソウさん、私はバックハンドの練習をずっとしてきて。ずっと同じ所にいたソウさん、私はマジで死にかける経験を何度かしてきて。いつも30分遅れて現れたソウさん、私も毎度5分くらい遅刻していて。例えば一回につき2

最後まで残るもの(後編)【テニス】

・全員が全員フルスイングとて、人によってガシャりも少なくない。  ただチューニングの仕方は決して一つではなく、始めからその速さ基準で合わせてくパターンもある。リズムから入る、感性でテニスをする人というイメージ。波こそあれ、ハマると強い。  ・馴染む必要はないと思ったが、過去の経験上、合わせることに時間をかけ過ぎるとチューニングが間に合わないケースが想定されたため、早い段階で出力を解放した。結果生まれた主体性がラリーに活きた。そもそも球出しが最も苦手な球種だった分、いくらスピ

最後まで残るもの(前編)【テニス】

【導入】  一つ、心理テストをしよう。  猫、たぬき、牛、馬、狼。一緒に旅をしているとして、一人ずつお別れをしていかなければならない場合、あなたはどの順番でお別れをし、最後に誰を残すか。   【事象1】  SLAMDUNKにて、赤木晴子は桜木に対して『バスケットは好きですか?』と聞いた。返答は確か二つあったはずだ。 【事象2】 『井の中の蛙大海を知らず』というのは「視野が狭くて見識がない人」ただ実はこれ「されど空の深さ(青さ)を知る」と続く。意味は「狭い世界を突き詰めたからこ

池の中のかわざない(後編)【テニス】

 同い年の整体師は私の足先に触れると「こんなに冷えちゃって」と、「かわいそうに」のニュアンスで口にした。辛い思いをしている人に寄り添う、それはまるでヴァッファリンのような 「……ッたたたたたたたたたたァァァァァッ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」  まさか「お大事に」な鎮痛剤じゃない。つま先をやさしく包むようにして持ち上げられると、続けて訪れたのは全身が痙攣するような激痛。一昔前、芸能人が足ツボで転げ回っているのをよく見たが、あれは決してテレビ用の大袈裟なリアクションではない。 「こ

池の中のかわざない(前編)【テニス】

『やるからには勝つって一見もっともらしいですが、目先に勝負がなくても常に備えていられる者が真の勝者じゃありませんこと?』というのは何の名言だったか。  最近姐さんや白石くん、(清水)悠太くんがトレーニング動画をあげていたのが無意識に作用したのか、久しぶりに走りたい気分だった。普段気が向いた時になかやまきんに君の「動的ストレッチ」や「世界で一番楽な筋トレ&有酸素運動」をやるレベルのthe weekend player(週末じゃなく週一基準)は、そんな気まぐれに助けられてそれなり

劣等生の言い分【テニス】

   ねえ、どう思う? 「中上級」    視線をずらす。前回の終わりくらいからだろうか。打ってくるようになった男は、辿ってみれば私の中でずっと「?」で表示されていた。個人として確立するようでしていない。それはずっと確信を持てぬまま。ただ、この度そのスマッシュを見た時、やっぱり頭の中で何かが引っかかった。    ずっとついて回る「?」  何度も記されている。「うさぎ?」と。    似た背格好。でも明らかに打球の質が違って。メガネ君と打っていたうさぎは、もっと何か全然違って。ただ

頭が高い【テニス】

 テニスにはNTPRやITNといった指標がある。何となく続けているけど、実際今どれくらいの実力なのか知りたい時参考にするものだ。ただ、自己評価と他者評価が一致するとは限らなくて、そういう意味ではハナっからコーチに「自分今どの辺ですか?」と聞いてしまった方が早いのかもしれない。 打てども打てども結局自分は何も変わってないんじゃないか問題。今の自分は本来望むその場所に見合っているのかという観点。例えば    こんな感じで評価されたら、凹みながらもちゃんとそこに行くようになると思