善也は眼鏡をはずした。踊るのも悪くない。目を閉じ、白い月の光を感じながら善也は踊り始めた。途中でどこかから誰かに見られている気配があった。見たければ見ればいい。神の子どもたちはみな踊るのだ。風が吹き、草の葉を踊らせ、草の歌をことほぎ、そしてやんだ。神様、と口に出して言った。
「ひとつの季節がドアを開けて去り、もうひとつの季節がもうひとつのドアからやってくる。もし言い忘れたことがあるのなら、と彼は言う。いやいいんだ、と人は言う、たいしたことじゃないんだ。風の音だけがあたりを被う。たいしたことじゃない。ひとつの季節が死んだだけだ」