心理療法という仕事に専念することになってわかってきたことは、人間の生き方、人間の心を対象とする限り、常に不可知なXとても言うべき存在に、心を開いていなければならない、ということであった~私の知識や考えや、すべてのものを動員するにしても、「わかった」と思うときが最も危険であった。
ユング心理学を通じて、物語の重要さを知り、自分の日々の臨床経験を基にしてわかってきたことは、物語こそ「人間のたましい」に深くかかわるものだ、ということであった。「たましい」という言葉を用いることによって、物語に対する自分の強い関心の謎がとけたように思った。