『真鍮の都』 千夜一夜物語で国王スルタンに毎夜物語を語って聞かせる美女シェヘラザード。彼女のコピー人形を未来の博物館に収めるため、一時的に誘拐しようと22世紀からやってきた男が、あろうことか彼女に恋をしてしまい……。というお話。
『約束の惑星』 迫害されていた少数民族に約束の地として未開拓の惑星をあてがう植民計画。計画上のニュー・ポーランドへ向かっていた開拓船は事故により目的惑星にたどりつけなかった。幸い居住可能な惑星に不時着し、そこを開拓しはじめる農民たちと、その星へ彼らを導いたパイロットの物語。
『赤い小さな学校』 コウノトリ電車で町に出荷された少年は、幸せだった村の生活、幼少期の記憶を遡り線路を逆に辿っていく。育ての親と初恋の先生の面影を目指して。
『花崗岩の女神』 衛星軌道から見ないと視界に収まらないという巨大女神の姿をした山脈。すでに滅んだ文明の芸術作品なのか、自然の造形なのかは誰にもわからない。そんな女神の岩山へ、(上空から)彼女に一目惚れしてしまった地球人が登攀するお話。 例によってまるで恋の詩のような描写がすてき♡
『時をとめた少女』 表題作。 え? タイムパラドックス? なにそれ? というかんじで矛盾なんてどうでもよくなっちゃうお話。考えたら負けな半分ギャグな気もしますが、ヤングの描く「一目惚れ」=「永遠の愛」の黄金パターンがなんともかわいらしいですw
『妖精の棲む樹』 木を切るプロフェッショナルが、異星に最期に残された巨木に上りながら枝を落としていく。そして、その樹を守護している妖精に出合い「なぜ木を殺すの?」と問いかけられる。人間中心の商業主義と異星の植物の精神が出会い、殺し殺される間柄で生まれる摩訶不思議な交流の物語
『わが愛はひとつ』 新婚ほやほやの政治学者が執筆した、たいしたことのない薄っぺらな本が、時の議会制国家を転覆させる悪書として断罪され冷凍冬眠刑に。解凍後、妻の墓を目指して旅をする彼。傷心の未来シーンと、幸せな過去の思い出のシーンが交互に書かれ、読者も自分の幸せな思い出を思い出す筈
短編一言感想 猫は宇宙で丸くなる 『ピネロピへの贈り物』ロバート・F・ヤング 叙情SFの第一人者。でも本国じゃほぼ知られていないマイナー作家なのだそう。もったいない。日本のWebマンガや小説のノリに近い方なので、時代を先取りし過ぎていたのかもと思えるライト感ある叙情。そして猫!