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『時をとめた少女』レビュー

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『時をとめた少女』

ロバート・F・ヤング (著) / シライシユウコ (イラスト) / 小尾芙佐・他(訳)

『たんぽぽ娘』、『ジョナサンと宇宙クジラ』で有名な抒情SFの第一人者、ロバート・F・ヤングの日本オリジナル編集、ほっこり恋愛と一目惚れと純愛と悲哀のSF短編集です。

この、ヤングさんの評価はこれまた日米で大きな差があるようで、バリイ・N・マルツバーグによると、ヤングはSFにおける ”もっとも知られざる作家のひとり” なのだそう。ようは誰も知らない作家であると、アメリカのSF作家さんからもいわれちゃっているという、、よく言えばマニアックな作家さんなのです。日本では人気なのにねぇ。

ドラマにもなった『ビブリア古書堂の事件簿』でも『たんぽぽ娘』が出てきたから、って理由もありますが、その前から日本ではちゃんと認知されていた作家さんだと思います。

詩情あふれるやさしく甘い作風は、(ちょっとステレオタイプなところもあるけれど)いつだってほっこり・じんわりさせてくれるのです。

アメリカでは、そういうの、やっぱり受けないのでしょうかねぇ。

と、いうわけで、今回もざっと #短編一言感想 をそれぞれまとめたので(140文字で語りきれなかったものは追加コメントしつつ)一遍ずつ紹介していってみます。

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『わが愛はひとつ』   #深町眞理子

ヤングの純愛物には時間旅行ギミックもよく使われています。愛と時間は彼の大きなテーマだったのだとおもいます。
これもそんなモチーフの一篇。初めて読んだときはハインラインの名作『夏への扉』を思い出しましたが、『たんぽぽ娘』とも重なる感じ。良作です。ほっこり♡


『妖精の棲む樹』   #深町眞理子

ケタ違いの巨木に宿る精霊は、そのまま、その樹の化身であって樹自身でもある。エコロジーと商業主義の対比と、異星の精霊と人間の恋物語。
木に登り、征服すること(倒すこと・殺すこと)が女性に対するそれのメタファーとも読めます。
それにしても、血を流す樹のイメージはちょっとコワイですね><


『時をとめた少女』  #小尾芙佐

表題作であり一番軽いタッチのお話。異星から来た美女にモテモテになるパッとしない主人公。もうちょっと女子の数を増やしたら日本のハーレム物になっちゃうようなお話ですw


『花崗岩の女神』   #岡部宏之

これまたケタ違いの大きさの巨大女体(山脈)。それを文字通り登攀して征服しようとする男。『妖精の棲む樹』に近いモチーフですが、あちらほど殺伐としていない印象。山に恋する男の気持ちが描かれている…のかな?w(なんでも、ヤングの好みは背の高い女性だったのだとか。それにしてもこれはいきすぎじゃない?w)


『真鍮の都』  #山田順子

珍しいアラビアンライトSF。スルタンから救いだしてくれた未来からの誘拐犯を「ご主人様」と慕う姿に萌えてしまう男性もおおいかも? 壺の中で眠る魔神がSF的解釈で描かれます。


『赤い小さな学校』  #小尾芙佐

幼少期の精神をテクノロジーでコントロールして、優秀な(普通な)人を作り出そうとする社会。そこでの幼年時代を思い出した少年は、回帰願望を抱くのですが……。未来の文明批判的なお話。先生に恋するのって、べつにアリだとおもうんですけどねえ。。


『約束の惑星』  #山田順子

恋愛系短編集(?)の最後に哀愁をさそう、年老いた元パイロットが人生を振り返るお話です。人生という長い時を凝縮した逸品。

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ふあー。今回、時間をかけてゆっくり読んでみました。やっぱり詩的でファンタジックな作品が多いですね。

かわいらしいお話から、哀愁を誘う大人なお話まで、抒情SF作家らしい、心にしみるお話たちです。血沸き肉躍るようなお話でも、超大作や大傑作とかいうわけでもないですけど、本棚の片隅に置いておいて、ときおり読み返したくなる短編集なのでした☆
(そういうところが本国じゃウケないんでしょうかねえw)

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#らせんの本棚 #SF #ブックレビュー #ロバート・F・ヤング   #シライシユウコ

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