『猫は宇宙で丸くなる』レビュー
『猫は宇宙で丸くなる 猫SF傑作選』
シオドア・スタージョン (著), フリッツ・ライバー (著) , 他(著)/ 中村 融 (編集, 翻訳)
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猫さんとSFってめちゃくちゃ相性良いのですよねー。(ФωФ)
日本人が大好きな猫SFと言ったらやっぱりハインラインの『夏への扉』でしょうか。個人的には神林長平さんの『敵は海賊』シリーズのアプロなんかもすてがたいし、A・E・ヴァン・ボークトの『宇宙船ビーグル号の冒険』に出てくる狂暴な猫型生物クァールなんてもう最高!☆ (『ダーティ・ペア』のムギちゃんの元ネタですね)
なんてかんじでいくらでも語れてしまうこの分野。
やっぱり猫SFだけでも短編集が出ていました。それがこれ。
一冊の本ですが、中は〈地上編〉と〈宇宙編〉に分かれ、それぞれ五編づつ、全10編の短編が収録されています。
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〈地上編〉
『パフ』ジェフリー・D・コイストラ
山岸真:訳
「子猫の何が困るかと言えば、成長して猫になることだ」という名言からはじまります。猫SF短編集の冒頭にぴったりw
子猫の可愛さと賢さが詰まりまくった傑作!
『ピネロピへの贈り物』ロバート・F・ヤング
中村融:訳
『たんぽぽ娘』や『ジョナサンと宇宙クジラ』で有名なロバート・F・ヤング。でも本国じゃあんまり知られていないマイナー作家さんなのだそう。もったいないですねえ。
ヤング特有のライトで叙情的な雰囲気は、確かにアメリカとかでは受けないのかも? ↑にも書きましたが、今の日本のWebマンガの日常ファンタジーに似ている気がします。このお話もそのまま短編マンガになりそう♪
『ベンジャミンの治癒』デニス・ダンヴァーズ
山岸真:訳
「猫は九生」とか、九つの魂を持つとかいう逸話、どこが元なんでしょうね。100万回はいきすぎにしても9回は蘇るそう。そして、このお話も。愛猫との別れに耐えきれず「死なないで!」って心から祈った結果、本当に死ななくなってしまったお話です。
でもやっぱり、「命」と「死」にかかわるお話はやっぱりちょっと物悲しいですね><
『化身』ナンシー・スプリンガー
山田順子:訳
《アイルの書》五部作で有名なナンシー・スプリンガーさん、最近はシャーロックホームズの妹が活躍する《エノーラ・ホームズの事件簿》なども書かれています。これは、現代を舞台にしたダークファンタジー。大人な感じがとてもよいです。女豹のようなつややかな猫。かっこいい!☆
『ヘリックス・ザ・キャット』シオドア・スタージョン
大森望:訳
大御所きました! スタージョンらしいちょっぴり苦みのある短編。ファンタジーとSFの境界すぎて、どちらの雑誌にも載せられず長い間うずもれていた傑作とのことです。展開とオチがさすがに上手い!!
〈宇宙編〉
『宇宙に猫パンチ』ジョディ・リン・ナイ
山田順子:訳
ジョディ・リン・ナイさんは大の猫好き。本業は「猫を甘やかすこと」で、その激務の間に執筆活動をするのだとかw
デビュー作はアン・マキャフリィの《パーンの竜騎士》シリーズのゲームブック版で、その後マキャフリィの《歌う船》シリーズの後期、共著『魔法の船』を経て単著『伝説の船』も出しています。
そういえばこのお話も《歌う船》シリーズっぽい世界観がちょっぴり顔を出している感じがありますね。
『共謀者たち』ジェイムズ・ホワイト
中村融:訳
猫だけでなく、宇宙船に連れ込まれた実験動物たちすべてが知性化。ともに共謀して、宇宙船から脱出を図ります。
ネズミやカナリアと、本能では彼らを狩りたい、でもそんなことできないっていう主人公猫の葛藤と共同作戦がよいかんじです♪
『チックタックとわたし』ジェイムズ・H・シュミッツ
中村融:訳
ジェイムズ・H・シュミッツといえば、宮崎駿さんが表紙書かれている『惑星カレスの魔女』が(日本ではw)有名。この『チックタックとわたし』も実は『テルジーの冒険』という本の冒頭の一篇としてすでに本になっています。超天才少女と、本来人に慣れない狂暴なクァールのような大型宇宙猫のペアってほんとよいですよね~☆
『猫の世界は灰色』アンドレ・ノートン
山田順子:訳
アンドレ・ノートンは男性名ですが女性の作家。このお話も女性的な視点で読むとよいかんじ♪
同じく男性名ペンネームのC・L・ムーアの《ノースウェスト・スミス》シリーズと雰囲気が似ている気がします。このお話の主人公、スティーナが、なんだか松本零士描くところのクイーン・エメラルダスのように見えちゃうのは(ムーアの表紙絵はいつも松本零士さんだったので)そのせいかも?w
宇宙航路の場末の酒場でうだつの上がらない飲んだくれ男に最期のチャンスを与えるところとかそっくりですw
『影の船』フリッツ・ライバー
浅倉久志:訳
ラストはこれまた超猫好きで知られる作家のライバーさんの傑作。浅倉久志さんの名調子(猫のしゃべり方とかかわいいw)が光ります。
目の不自由な主人公の視点から語られるので、最初世界はぜんぶぼやけていて、夢とうつつの区別もあいまいで幻想的な酩酊状態。
そこで唯一はっきりとしているのは彼の元にもぐりこんだ黒猫の言葉。という冒頭から、読者は異様な世界に引き込まれます。
バーで働く主人公の待遇の悪さに読みながらちょっとバッドトリップしそうになりますが、彼と猫とが一緒に光を目指していく姿は手に汗を握って応援したくなるのです。
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とまあ、このように、猫、猫、猫のオンパレード。猫SF傑作選というのは伊達じゃないですねw
他にもたーくさん猫SFはあるのですが、この編者さんも他で紹介されていたりするのはあえて避けて、埋もれた名作を掘り起こすのに重点をおいたとのこと。
私もジェイムズ・H・シュミッツの『チックタックとわたし』以外は初めて読んだ作品ばかりでしたので、結構お得感ありました☆
世の猫好きなSFファン(私の周りのSFファンはみな猫好き♪ 猫嫌いは見たことがありませんので実は同一集合なのかも?w)にはもちろん、そうでない人にも(いるのかな?w)おすすめの猫々アンソロジーでした♪
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