アメリカの強さの基本は、多様性の容認にある。アメリカの科学・技術は、外国からの移民が切り開いた面が大きい。とりわけ顕著だったのが、第二次世界大戦時にヨーロッパから来た科学者の貢献だ。IT(情報技術)革命も、中国人とインド人によって実現された。この動きは現在に至るまで続いている。
アメリカと日本の報酬の格差を見ると、一人当たりGDPで見れば、アメリカは日本の2.2倍程度豊かだ。しかし、専門家の報酬を見ると、アメリカは日本の7.5倍程度にもなる。
アメリカ大統領選挙で、もし第二次トランプ政権が成立すれば、第一次政権のときと同様、アメリカの対外コミットメントの縮小、在日米軍の費用負担増加などを求めてくる可能性がある。また、対中強硬策を強化する可能性もある。
アメリカへの移民の急増は、社会的な混乱をもたらしているが、同時に、労働力の供給を増やし、インフレを緩和させる効果を持っている。これは、FRBの利下げタイミングに大きな影響を与える。
半導体事業支援のため、巨額の補助金が支出されている。しかし、これによって日本の半導体産業が復活するのかどうかきわめて疑問だ。必要なのは補助ではない。 経済学の教科書に書いてあるとおり、「人材・投資・技術」だ。
危険で過酷なルートを辿ってアメリカに亡命しようとする中国人が増えている。もし彼らが日本に来て介護人材になってくれれば、介護保険の窮状を救ってくれるだろうに。しかし、日本はそれを求めていない。
米中経済戦争を見ていて、われわれが最も理解しにくいのは、大統領一人の決定だけで、全世界の市場が大混乱に陥るような事態が発生してしまうことだ。
今回の大統領選で、トランプ氏は、インフレを激しく批判する一方で、金利を引き下げるとしている。そして、労働者への大幅な減税を公約している。しかし、金利を引き下げたり大幅な減税をしたりすれば、インフレ圧力は高まるはずだ。
トランプ前大統領は再選されれば、アメリカ国内では、「影の政府」を撲滅して反対意見の排除に乗り出すとしている。
全世界の人々に大きな影響を与える国を「覇権国」(hegemon)と呼ぶことにすれば、現代世界における唯一の覇権国がアメリカ合衆国であることは、間違いない。
アメリカの強さの基盤が多様性の容認であることは間違いない。さまざまな人種的偏見を排除し、他国からの移民を受け入れることが、アメリカの強さの基本的な原因になってきた。 一方で、トランプ氏がこのような多様性を捨て去ろうとしていることも間違いない。
不法移民の問題は、人道上の観点と社会不安の観点から論じられることが多い。もちろんそれらは重要な問題なのだが、それ以外に労働力の供給増加という、きわめて重要な経済的な意味を持っているのだ。
覇権国の条件は「寛容」だ。これは、古代ローマの時代からのことで、アメリカ建国の父たちは、それを意識的に引き継いだ。 アメリカは、移民問題だけでなく、国内での人種問題や男女平等問題でも、大きな変革を実現しつつある。
移民が増えれば、労働の供給が増える。だから、インフレ退治に役立つ。利下げをしても、それがインフレを加速することにはならないということになる。
今回の大統領選でトランプ氏はインフレを激しく批判する一方で金利を引き下げるとしている。そして労働者への大幅な減税を公約している。しかし金利を引き下げたり大幅な減税をしたりすればインフレ圧力は高まるはずだ。ハリス氏はこうした矛盾を含む主張に対して、正統的な反論を展開できるだろうか?
不法移民問題は、いまや大統領選での最大争点となっている。ギャラップ社の調査によれば、この問題が重要との回答は、経済問題などを抜いて、最多となった。
第一次トランプ政権の重要な経済政策は、中国との貿易戦争、とくに、政策的な高関税の賦課(ふか)だった。これは、バイデン政権下でも続いた。仮に第二次トランプ政権が成立した場合、中国に対する貿易上の政策をさらに強める可能性は十分にありうる。
第二次トランプ政権が成立した場合に、いかなる対応をすべきかというシナリオは、いまから考えておく必要がある。 第二次トランプ政権が成立した場合にまず起こりうるのは、アメリカの対外コミットメントの後退だ。
アメリカの文化は、多様性の尊重の中から生まれてきた。そのような文化を否定することは、アメリカの社会の基本を否定することになる。これはアメリカにとって深刻な事態だ。
安全保障の費用分担について、アメリカに対してひたすらお願いするというだけでは能がない。取引しうる何らかの材料があることが望ましい。つまり、日本は守る価値がある国であることを、アメリカに納得させる必要がある。