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長谷部浩の俳優論。

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歌舞伎は、その成り立ちからして俳優論に傾きますが、これからは現代演劇でも、演出論や戯曲論にくわえて、俳優についても語ってみようと思っています。
劇作家よりも演出家よりも、俳優に興味のある方へ。
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#松本幸四郎

【劇評365】新春の歌舞伎座。繭玉と鏡餅に彩られためでたき狂言の数々。六枚。

【劇評365】新春の歌舞伎座。繭玉と鏡餅に彩られためでたき狂言の数々。六枚。

 あけまして、おめでとうございます。新年は、歌舞伎座昼の部から。

「対面」は、曽我物というだけではなく、五郎十郎はじめ多くの役柄を網羅している。それだけに、新しい年の歌舞伎座を背負っていく役者の顔見世の要素を兼ねている。新たな気持ちで見る「対面」は、五郎に巳之助、十郎に米吉とまことに清新な顔ぶれで、祝祭感にあふれていた。

 上演年表を辿ってみると、私の記憶にある「対面」は、現在の松緑が二代目辰

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【劇評309】幸四郎、勘九郎の意気地。若手花形の成長を楽しむ『新門辰五郎』。

【劇評309】幸四郎、勘九郎の意気地。若手花形の成長を楽しむ『新門辰五郎』。

若手花形の充実が急がれる課題であるとすれば、真山青果の群像劇『新門辰五郎』を第二部の出し物とするのは、なるほどと膝を打つ、見事な企画である。

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【劇評255】幸四郎、右近の愛情深き『荒川の佐吉』

【劇評255】幸四郎、右近の愛情深き『荒川の佐吉』

四月大歌舞伎、第二部は新作歌舞伎とめずらしい舞踊の狂言立てとなった。

 真山青果が大の苦手な私にとって、唯一、愛着が持てるのが『荒川の佐吉』である。
 この戯曲は、「運命は自らの手で切り開く」といったメッセージ性ばかりが立ってはいない。

 偶然から共に暮らすことになった男ふたりと幼子の愛情の深さが描かれている。血が繋がっているから家族なのではない。ともに、いたわり合う心があってこそ、家族なのだ

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