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【劇評365】新春の歌舞伎座。繭玉と鏡餅に彩られためでたき狂言の数々。六枚。

 あけまして、おめでとうございます。新年は、歌舞伎座昼の部から。

「対面」は、曽我物というだけではなく、五郎十郎はじめ多くの役柄を網羅している。それだけに、新しい年の歌舞伎座を背負っていく役者の顔見世の要素を兼ねている。新たな気持ちで見る「対面」は、五郎に巳之助、十郎に米吉とまことに清新な顔ぶれで、祝祭感にあふれていた。

 上演年表を辿ってみると、私の記憶にある「対面」は、現在の松緑が二代目辰之助を襲名した舞台だった。平成三年五月歌舞伎座。五郎を辰之助が、十郎を菊五郎が勤めている。
 このときの大磯の虎は六代目歌右衛門で、立女方の風格を知るに充分な舞台だった。化粧坂の少将は、五代目松江、現・魁春で可憐な若女方の風情を楽しんだ。

 あれからずいぶん時間が過ぎた。
 巳之助は荒事を演じても父三津五郎の面影が見えるようになった。身体の軸が安定しているからだろう。米吉は丁寧に十郎を演じている。指先まで神経を届かせている。本来、女方だけに身体の柔らかさに不足はない。ただ、兄として、いきりたつ弟十郎を諫める位取りがむずかしく、これからの課題となる。
 巳之助、米吉で、また五郎十郎を観たいと思わせるのは、ふたりがはっきり未来の自分の姿を思い描いているからだろう。

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年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。